13坪のケーキ屋、開業3年目の年商27,073,172円。夫婦2人・家賃6万円の店が月別売上を24か月分すべて公開した
ブログ「おかし屋開業ラボ」を書く個人ケーキ屋の年商は、開業2年目が21,730,380円、3年目が27,073,172円。13坪・夫婦2人・家賃6万円の店が公開した月別売上24か月分から、原価率45%でも残る構造を読む。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商225.6万円は、月商を公開している掲載259件のうち上位48%。掲載全体の月商中央値は225万円です(データ集計)。
個人ケーキ屋の売上が、24か月分、1円単位で公開されている。ブログ「おかし屋開業ラボ」に載っている開業2年目の年商は21,730,380円、3年目は27,073,172円。月平均にすると2,256,098円で、当サイトが月商を公開している実店舗8件の中央値32万円の7倍、国内事例88件の中央値25万円の9倍にあたる。もっとも、掲載事例251件全体の中央値225万円とは、ほとんど同じ高さに並ぶ。
書いているのはマロン氏。製菓専門学校を出て4店舗で修業し、32歳で13坪の店を開いた。妻と2人で製造と接客を分け、テイクアウト中心で今年9年目になる。
この規模で続いている理由を、原価管理の巧さに求めたくなる。ところが本人が別の記事で出している原価率は、材料35%に包材10%を足して実質45%。「ケーキ屋の原価率は30%」という業界の一般論より15ポイント重い。数字を並べ直すと、この店の損益を決めているのは厨房ではなく、賃貸借契約書のほうだった。
24か月、1円単位の記録
本人が公開している2年分の月別売上を、前年同月と並べ直すと次のようになる。
| 月 | 開業2年目 | 開業3年目 | 前年差 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 1,306,600円 | 1,684,700円 | +378,100円 |
| 2月 | 1,598,340円 | 1,644,870円 | +46,530円 |
| 3月 | 2,094,600円 | 2,539,340円 | +444,740円 |
| 4月 | 1,460,740円 | 1,976,570円 | +515,830円 |
| 5月 | 1,611,400円 | 2,300,820円 | +689,420円 |
| 6月 | 1,546,110円 | 2,154,850円 | +608,740円 |
| 7月 | 1,509,980円 | 2,145,590円 | +635,610円 |
| 8月 | 1,675,890円 | 1,589,392円 | -86,498円 |
| 9月 | 1,877,580円 | 2,166,530円 | +288,950円 |
| 10月 | 1,923,800円 | 2,699,440円 | +775,640円 |
| 11月 | 2,291,100円 | 2,602,500円 | +311,400円 |
| 12月 | 2,834,240円 | 3,568,570円 | +734,330円 |
| 年計 | 21,730,380円 | 27,073,172円 | +5,342,792円 |
12か月のうち前年を割ったのは8月だけで、その1か月も客数が955人から825人へ13.6%落ちている。客単価は1,754円から1,926円へ上がっているので、売上の目減りは86,498円で済んだ。夏に生菓子が動かない店で、客単価だけが年間2位の水準に跳ねるという形は、来店の理由がギフトに寄っていることを示している。
伸びの中身も分解できる。年商は24.6%増えたが、客数は12,358人から14,540人へ17.7%増、客単価の年平均は1,758円から1,862円へ5.9%上がっただけだ。本人は「客単価は年々上がる」を5つの法則の3番目に挙げているが、3年目の伸びの大半を作ったのは客単価ではなく、単純に来た人の数である。常連が増えたという自己評価は、数字の上では客数のほうに出ている。
「12月がすべて」は、実際には1.67倍だった
本人は12月を「年間売上の天王山」と書き、平月の約2倍近いと説明している。ここは編集部の読みが違う。3年目の12月は3,568,570円で、1〜11月の平均2,136,782円に対して1.67倍。2年目も1.65倍で、2年続けて同じ比率に収まっている。年商に占める割合も13.2%で、残りの87%は普通の月が積み上げている。
倍率よりも重いのは、12月が利益の山ではないという本人の指摘のほうだ。クリスマスは生クリーム・いちご・飾り・専用箱と原価が重なり、短期アルバイトの人件費と廃棄のリスクも乗る。対して3月は卒業や送別で焼き菓子が出るので、日持ちする分だけ廃棄が出にくく原価も軽い。売上1位は12月、利益が残るのは3月、と本人は書いている。表の上では最大の山が、損益計算書では2番手に落ちる。
400台作って、200台余った1年目
この店でいちばん記憶に残る数字は、年商ではなく廃棄の台数だと思う。開業1年目のクリスマス、マロン氏はクリスマスケーキを400台ほど用意して、売れたのは200台だった。足りなくて断るのが怖かったから作った、と書いている。売れなかった理由は明快で、開業したての店は地域に知られておらず、当日ふらりと来る客がいなかった。
2年目に作った数は250台。1年目から150台減らし、やり方は「予約分に少しだけ上乗せする」の一点だけ変えた。予約受付を10月末から始めているのは、この確実な数字を製造計画の土台に置くためだ。仕上げに入る12月23日からの数日は、1年目と2年目は睡眠1時間だったという。
失敗の処理としては地味だが、ここで起きたのは在庫リスクを予測から予約へ移す設計変更である。当日売りは認知が育つまで機能しない、という前提を1年目の廃棄で買ったと読める。
残っているのは厨房ではなく、賃貸借契約書のほうだ
原価率45%で利益率35%前後が残る理由を、本人は2つ挙げている。家賃が売上の約2.5%であること、広告宣伝費がゼロであること。
物件は田舎の駅近で13坪、家賃は月6万円、取得費36万円のスケルトン(元事務所)。月平均売上2,256,098円に対する家賃比率は2.66%で、業界の目安とされる10〜15%の3分の1以下になる。開業時の事業計画は1日3万円×25日=月75万円で、その計画に対しても家賃比率は8%だった。検討していたコンビニ跡は立地が最高な代わりに家賃20万円・取得費100万円超で、想定売上に対する比率が26%になるため見送っている。
この店の損益を決めたのは原価率ではなく、家賃6万円の契約書だ。材料をケチらずに済んでいるのも、インフレで原価率が31%から35%へ押し上げられても持ちこたえているのも、固定費が先に潰してあるからである。ある年に既存商品を一律30%値上げしたときは、その年の客数は減ったが利益は増え、翌年からは客数も戻ったという。値上げに踏み切れる耐性そのものが、低い固定費から出ている。
開業費1,016万円という初期投資も、この設計と揃っている。物件取得費が36万円で済んだ分は、設備と運転資金に回っている。
広告費ゼロ、毎日やるのはストーリーズ1回
集客はInstagramだけで、フォロワーは1万人を超えた。運用は投稿量を増やす方向とは逆を向いている。毎日やるのはストーリーズ1回で、中身はその日のショーケースに並んでいる商品。フィード投稿は新商品が出たときだけで2週間に1回程度、休みの告知が月1回。1日に何度も投稿しないのは「うざいから」と本人は書いている。
ストーリーズが効いているのは、扱っている商品が日替わりだからだ。今日行けば何があるかを毎朝見せる行為は、宣伝ではなく在庫の開示に近い。24時間で消える仕様と、その日のうちに売り切る生菓子の賞味期限が噛み合っている。
周辺は激戦区で、個人のケーキ屋2件、和菓子屋1件、大手チェーンが並ぶ。それでも9年続いている理由として本人が挙げるのは、開店準備中からSNSを回していたこと(当時のフォロワーは100人未満)、商品を客の声で入れ替えたこと、接客を妻に任せて自分は厨房に入ったことの3つだ。
どこまで持ち帰れるか
同じ国内の実店舗では、月商38万円で4か月目に止まったキッチンカー、5坪で月商100万円を超えながら店主が「失敗だった」と書いたクレープ店、約50万円で開業したテイクアウト焼き鳥店を掲載している。この店の月商2,256,098円は、その並びのいちばん上に来る。
- 原価率45%で利益が残るのは、家賃が売上の3%前後まで下がっていて、広告費を払わずに来店動機を作れているときだけ
- 予約分+αという製造計画が効くのは、商品の大半が予約で動く年中行事で、当日売りを捨てても台数が読める場合だけ
- ストーリーズ1日1回の運用が集客になるのは、売っているものが日替わりで、見た人がその日のうちに来られる距離にいるときだけ
限界も書いておく。家賃6万円は田舎の駅近という立地と、礼金免除・保証金免除という大家との個別の条件の上に乗っている。同じ比率を都市部で作るのは難しい。朝4時起き・14時間労働・睡眠4時間という前提も、利益率35%の裏側にそのまま置かれている。公開されているのは売上・客数・客単価と原価率・利益率の概算までで、人件費や光熱費の実額、開業1年目の売上は出ていない。年収1,000万円台という記述も本人の自己申告で、第三者の検証は無い。
出典
- 本人公開「おかし屋開業ラボ」店主マロン氏の記事(2026年6月2日公開・7月18日更新)。開業2年目と3年目の月別売上・客数・客単価を1円単位の表で掲載。年商約2,173万円→約2,707万円、利益率35%前後、年収1,000万円台、キャッシュレス比率6割
- 本人公開同ブログの全記事まとめ(2026年8月9日公開)。開業費1,016万円、原価率実質45%、13坪・夫婦2人・開業9年目、朝4時起き14時間労働、Instagramフォロワー1万人超という前提条件の一覧
- 本人公開同ブログ「お菓子屋のクリスマス商戦」(2026年8月9日公開)。1年目に400台作って200台しか売れず廃棄した経緯、2年目は250台に絞った判断、12月は売上1位でも利益1位ではないという内訳
- 本人公開同ブログ「お菓子屋の原価率は本当に35%?」(2026年6月14日公開・7月18日更新)。材料35%+包材10%=実質45%、家賃は売上の約2.5%、広告宣伝費ゼロ、原価率31%→35%への上昇、既存商品を30%値上げした結果
- 本人公開同ブログの物件選びガイド(2026年5月20日公開・7月18日更新)。家賃6万円・13坪・物件取得費36万円・スケルトン(元事務所)・田舎の駅近・駐車場3台、事業計画は1日3万円×25日=月75万円、周辺の競合構成
- 本人公開同ブログのSNS集客記事(2026年6月20日公開・7月18日更新)。ストーリーズは毎日、フィード投稿は2週間に1回、お知らせは月1回という運用頻度と、投稿を増やさない理由
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