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透明書店、開業1年目の4月に売上2,655,682円・営業利益348,904円。freee子会社が「本屋の数字」を全部出した3年

東京・蔵前の透明書店は開業1周年の月に売上2,655,682円・営業利益348,904円で初の単月黒字。3年目は年商23,094,480円で通年黒字に届いた。運営はfreeeの子会社である。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

透明書店、開業1年目の4月に売上2,655,682円・営業利益348,904円。freee子会社が「本屋の数字」を全部出した3年

小さな本屋は、月にいくら売れば黒字になるのか。この問いに、東京・蔵前の透明書店は円単位で答えている。開業1周年にあたる月の売上高は2,655,682円、営業利益は348,904円。売上原価1,243,877円、販売管理費1,062,901円まで、損益計算書の主要項目が公開されている。

最初に断っておくべきことがある。この店は個人のスモールビジネスではない。日経BOOKプラスの報道によれば、透明書店はクラウド会計のfreeeの子会社として2023年4月に開業した店で、代表取締役はfreeeの社員が務めている。初期投資は1,500万円。内訳は不動産取得約234万円、設備約545万円、仕入れ約386万円、会社設立費用約28万円、その他約67万円、運転資金約239万円である。

つまりこれは、資本のある会社が「小さな商売の数字を全部出したらどう見えるか」を実験として引き受けた事例だ。1人で始めた個人店の記録ではない。ただし数字の粒度は、この規模の実店舗としてはほとんど例がない。

1周年月(開業13ヶ月目)の損益

項目金額
売上高¥2,655,682
売上原価¥1,243,877
売上総利益¥1,411,805
販売管理費¥1,062,901
営業利益¥348,904
経常利益¥353,293

ジャンル別の売上と、店が置いていた月次目標は次の通りだった。

ジャンル実績目標
書籍¥946,504¥700,000
グッズ¥1,070,655¥150,000
イベント¥361,689¥250,000
レンタル¥175,000¥550,000
飲食¥103,600¥100,000

販管費の中身も出ている。給与手当321,739円、地代家賃280,000円、支払手数料200,296円、支払報酬料90,273円、通信費56,387円、水道光熱費17,029円、消耗品費6,607円、諸会費4,400円。

黒字を作ったのは本ではなかった

目標比で見ると、この月の異常値はグッズだ。目標15万円に対して107万円、7倍を超えている。理由は明快で、レンタルスペースでネオン看板メーカーの展示販売を2週間受け入れたことによる。スペース使用料10万円に加え、ネオンアート4点(1点8万〜15万円)と関連グッズで物販が約80万円立った。

書籍側でも、この展示の関係者を取り上げたガイドブックが単価2,700円で52冊売れ、それだけで14万円になっている。展示が本を売り、本が展示を売るという往復が起きた。

もうひとつの押し上げ要因が、小さい出版社9社を招いた2日間のフェスで、期間中の売上は計30万円。出版社側のブースで92冊、透明書店として103冊が売れ、前週の土日と比べて販売冊数は2倍以上になった。

そして3つ目がイベント本数だ。この月は11本を実施している。1周年記念の対談イベントには37名が参加した。

書籍単体の売上は946,504円で、目標の70万円は超えている。だが営業利益35万円を作ったのは、書籍以外の売上が積み上がった結果だった。日経BOOKプラスの報道でも、粗利ベースでは書籍が2〜3割、イベント・グッズ・棚貸しが7〜8割を占めると整理されている。新刊書籍の粗利は約2割しかない。3年目を振り返る記事で、担当者自身が「衝撃を受けた」と語っている数字だ。

数字を公開しながら実店舗を回す構えは、月次決算を4年間公開した神保町の定食屋・未来食堂と近い。違うのは、あちらが1人の店主の判断の記録であるのに対し、こちらは会社が意思決定と失敗をそのまま出している点にある。

「効かなかった」ことも同じ精度で出ている

この連載が実務的なのは、うまくいかなかった側も同じ粒度で書かれているからだ。

1周年月のレンタルは、目標55万円に対して実績17.5万円。達成率3割強で、5つのジャンルの中で唯一大きく未達だった。グッズの上振れが目立つ月の裏で、期待していた収入源が届いていない。

イベント11本という本数についても、店側は続けられないと明言している。月の営業日は20日前後で、その半分がイベント日になると選書や仕入れに手が回らなくなる。理想は新刊イベント月4本、合計6〜8本という結論に落ち着いた。

3年目には在庫の判断ミスも記録されている。夏は蔵前エリアの人通りが落ち、店長の体感で来客が20〜30%減った。そこで仕入れを抑えたところ、棚がスカスカになって店全体の魅力が落ちたという。夏の終わりに仕入れ量を戻している。コストを削ったら売る力そのものが削れた、という順序が残っている。

3年目の姿

3年目(通年)の数字はこうなっている。売上高23,094,480円、売上原価10,268,637円、売上総利益12,825,843円、販売管理費12,404,620円、営業利益421,223円。2年目は単月黒字が散発する状態だったのが、3年目は連続黒字となり通年黒字に届いた。

ジャンル別では新刊11,568,715円、棚貸し3,269,100円、古本2,375,522円、イベント1,122,059円、貸し棚商品1,045,344円、スペースレンタル805,500円、飲食747,310円、受託販売商品217,690円、選書205,000円、その他61,167円が公開されている。

伸びた柱は3つある。ひとつは棚貸しで、54棚から7棚を増設して61棚に。追加した7棚が埋まると固定収入は月10万円ほどになるという。既存54棚は年明けから満枠だった。2つ目は古本で、売上の3割ほどを占めるまでになった。書籍在庫に占める古本の理想比率は35〜40%と置いている。3つ目が無人営業で、開始当初は売上の2〜3割だったものが、いまは5割近くになっている。

新規事業として2月に始めた選書サービスは、価格を限定的に下げた開始初日に30人ほどが申し込み、一度受付を止めるほどの反響になった。6月10日時点で累計65名。選書料はそのまま利益になる設計だ。

棚貸しが固定収入とコミュニティの両方を担う構造は、レンタルスペース2店舗を29か月運営して約220万円の赤字で撤退した事例と比べると対照的である。場所を時間で貸すだけでは埋まらないが、棚を貸して売れた通知をSlackで飛ばし、2か月に1度くじ引きで場所を入れ替えて棚主同士が顔を合わせる、という運用がセットになると継続率が変わる。

年商2,300万円に営業利益1.8%、という観測記録

1年目の黒字化を受けて店側が出した月次の目安は、書籍で約70万円、物販で約15万円、イベントを月6〜8本で約30万円だった。粗利2割の商材を主役に置きながら、粗利の高い枠(棚貸し・スペース・イベント)で利益を作る構造で、小さな書店の損益分岐がどのあたりにあるかを示す数字として読める。

ただ、この数字を作った前提は個人の店とは違う。初期投資1,500万円を先に積める個人は多くない。加えてこの店は、親会社の公式noteという媒体を最初から持っていた。連載そのものが集客装置であり、取材が取材を呼ぶ。個人が町の本屋を承継した事例のように、既存の顧客と設備を引き継ぐ形とは、立ち上がりの条件がまったく違う。

それでもこの記録が価値を持つのは、公開の徹底ぶりのためだ。1年目の到達点は、営業日数264日、販売冊数5,381冊、イベント52本で参加者1,152名。3年目の営業利益は421,223円。年商2,300万円に対して1.8%である。書店という業態の収益性を保証する記録ではなく、書店の数字はこういう形をしている、という観測記録として読むべきものだろう。

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