ハナ、フリーランスデザイナー3年目で年商750万円。受注ゼロの月を支えたのは月20万円のテンプレ販売
note「ハナ|デザイナーとお金の話」が3年分の実数を公開している。1年目は個人事業200万円で最低月ほぼ0円、2年目600万円、3年目750万円・経費約70万円。受注の売上が0だった月も、月20万円のストック収入が家計を支えた。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
フリーランス3年目にあたる2025年、ハナ氏の年商は750万円だった。経費は約70万円、ならすと月60万円ほど。独立1年目の個人事業の売上は200万円で最低月はほぼ0円だったから、3年で3.75倍まで来たことになる。ここまでなら「取引先が増えた」で説明がついてしまう。ところが本人の振り返りは、その説明をまるごと否定する。3年目は営業活動をほとんどせず、受注は既存の取引先から声のかかった分だけ。しかも2年目に自分で「安定した売上のひとつ」と書いた講師の仕事を、3年目の途中で辞めている。それでも売上は600万円から750万円へ動いた。
3年分を並べてみる
| 年 | 売上 | 月の振れ幅 | 中身 |
|---|---|---|---|
| 2023(1年目) | 個人事業200万円(別に会社員給与100万円) | 最高100万円超 / 最低ほぼ0円 | 受注が中心。12月にストックが10万円超に |
| 2024(2年目) | 約600万円(経費差引後 約500万円) | 売上0円の月が消えた | 受注が売上の約半分。講師業とテンプレート販売(月数万円〜10万円超)が残り |
| 2025(3年目) | 750万円(経費 約70万円) | 最高130万円超 / 最低20万円強 | 受注6割・ストックなど4割。平均 月約60万円 |
1年目の300万円という数字には、年の途中まで受け取っていた会社員の給与100万円が含まれている。個人として稼いだのは200万円で、本人は「積極的に営業もしておらず、体感としてもそれほど働いていません」と書き添えている。長期の旅行と自主制作に時間を使う前提での1年目だった。
経費70万円の内訳が、ストックの規模を裏側から示す
3年目の経費は約70万円。項目はこう公開されている。
アプリ・通信費が約15万円(Adobe CC 43,000円、モリサワ 64,240円、Microsoft Office 19,170円、サーバー代 13,200円、会計ソフト 13,046円)。パソコンが約20万円で、不調になったマシンの代替としてMac miniとモニターを購入し、キーボードとマウスは前のMacのものを使い回している。手数料などが約25万円。個人事業税が約10万円。
このうち手数料の25万円は、本文が明かしていない数字を推し量る材料になる。本人はストック販売サイトの手数料を「10%くらい取られています」と書いている。25万円は「手数料など」とあるので全額が販売手数料ではないが、桁としては販売サイト経由の売上が200万円台に乗っていないと出てこない金額だ。売上の4割がストックなどで300万円、という内訳とも整合する。年初に立てた「ストックで300万円」の目標には「ちょっとだけ届かず」だったとあるので、実績はその少し手前に着地したと読める。
数十社に応募して、継続案件は1本も作れなかった
伸びた話より先に、外れたほうを見ておきたい。2年目、氏は取引先を増やそうとしてビジネスマッチングサービスに登録している。使ったのはWantedly、YOU TRUST、Workship、Conemaなど。数十社と話す機会を得たが、実際に仕事になったのは「片手で足りるくらい」で、それも大半が1、2回の単発で終わった。狙っていた毎月の継続案件は「できずじまい」と書かれている。
本人が挙げる敗因は単価だ。「おそらく敗因は、単価設定や時給をかなり強気に設定していたことかなと思います。安く働くくらいなら働きたくないという怠け者でして」。数字も出ている。普段の単発案件を時給に直すと平均6,000円。時給契約で働くなら3,000〜4,000円を希望していたが、エージェントからは「グラフィックのデザイナーでこの時給はかなり厳しい」と言われている。
ここは編集部の読みが本人と分かれる。3年分の数字を通して見ると、この不成立は売上を押し下げていない。既存の取引先から時給換算6,000円の単発を受け、空いた時間をテンプレートに回した結果が750万円だ。ここからは推測だが、継続案件を時給3,000〜4,000円の稼働で埋めていたら、同じ労働時間あたりの年商はむしろ下がっていた。取れなかった案件は、時間の貸し出し先としては単価の低いほうだった。
安定していたのは講師業ではなく、月20万円のテンプレート販売だった
2年目に始めた講師の仕事について、氏は当時「受注制作の仕事は波があるので、安定した売上のひとつになりました」と書いている。週1回程度、デザインスクールでIllustratorとPhotoshopを教える仕事だった。それを3年目の途中で辞めている。理由は時間単価の低さと、休日でも質問対応が必要なことのストレス。「心が休まらない時間が増えてしまった」。
入れ替わりに下支えになったのがテンプレート販売だ。3年目、クライアントワークの売上が0だった月が実際にあった。案件は動いていても、その月の請求にならなければ売上は立たない。それでも家計が赤字にならずに済んだのは、月20万円ほどのストック収入があったからだと本人が書いている。2年目に「安定」とラベルを貼った収入源と、実際に下限を支えた収入源が、1年で入れ替わっている。
なぜテンプレートのほうが効いたのか。氏の書き方の中に理由が揃っている。在庫を持たないデータ販売であること。締め切りが無く「時間ができた時にコツコツ進められる」こと。そして販売開始後は「ほとんど手間なく売上になる」こと。つまりこの事業では、受注の谷がそのまま在庫の生産時間になっている。受注が詰まっている月は作れないが、詰まっている月は売上が足りているので作る必要がない。谷を在庫に変える構造がひとつ噛んでいるだけで、月次のグラフの底が上がる。1年目に12月だけ10万円だったものが、3年で月20万円の常設になった。
同じ「自分の商品を売る」の幅
Notionテンプレート副業の6ヶ月は累計10万765円、月あたり8,820円。会社員デザイナーのBOOTH素材販売は半年で108万円、月あたり19万5,360円。ハナ氏のストックはこれとほぼ同じ月20万円で、違うのは受注業の谷埋めとして機能している点にある。
受注側だけを厚くする道もある。ココナラで美容分野に特化したデザイナーは、3,000円から2万円への値上げを経て月収100万円に届いた。ハナ氏はその逆で、受注の単価を強気に据え置いたまま本数を増やさず、増分を販売側に置いた。どちらも一人で回している。
公開されていない数字
テンプレートの商品数、1点あたりの価格、販売サイトの名前は出ていない。クライアントワーク1件あたりの単価も、実際の稼働時間も公開されていない(「あんまり働いていません。笑」という記述があるだけだ)。経費70万円は事業の経費なので、所得税・住民税・国民健康保険料はここに含まれていない。手取りはこの数字から更に落ちる。
規模の上限についても本人の判断が入っている。氏は免税事業者で、「売上1000万円を超えると消費税の納付義務もありますしね」と書き、外注を使ってまで売上を伸ばすことを選んでいない。750万円は到達点ではなく、意図的に選ばれた水準である。
この形が成り立つ条件
- 受注の谷を制作時間に回せるのは、受注が既存取引先からの単発で、納期を自分の側で動かせる範囲に収まっているときだけ。
- ストック収入が家計の下限として働くのは、月の固定費がその金額を下回っているときだけ。ここでは一人暮らしの生活費に対して月20万円だった。
- 強気の単価設定が保てるのは、既存取引先からの指名が切れないときだけ。新規の窓口では数十社のうち案件化が片手以下だった。
限界も書いておく。3年分すべてが本人のnoteによる自己申告で、第三者が検証できる資料は出ていない。1年目の受注は「以前に働いていた会社から、その会社の先輩の家族が働く会社、さらに前の会社を退職した人の転職先」という経路で来ており、これは独立前に作られた人脈がほぼそのまま効いている。氏自身が「印刷物の仕事は、この先減っていくことは目に見えています」と書いているとおり、受注側の土台は縮む前提に置かれている。ストックを増やす動きは選択ではなく、その縮みに対する備えでもある。
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出典
- 本人公開ハナ氏「フリーランスデザイナー1年目のリアル。一年間の売上&やってよかったこと」(note、2023年12月28日)。年収約300万円の内訳(会社員給与100万円+個人事業200万円)、最高月100万円超・最低ほぼ0円、12月のストック収入10万円超、失業手当の受給期間特例、STUDIO製サイトの1日約50アクセス、Wantedly経由のスカウト
- 本人公開ハナ氏「フリーランスデザイナー2年目の気づき。売上&やってよかったこと」(note、2025年1月24日)。2年目売上600万円近く・経費差引後約500万円、クライアントワークは売上の約半分、マッチングサービス数十社で案件化は片手以下、単発案件の時給換算平均6,000円、講師業の開始、テンプレート販売が月数万円〜10万円超
- 本人公開ハナ氏「フリーランスデザイナー3年目。売上、経費、振り返り。」(note、2026年1月19日)。売上750万円、最高月130万円超・最低20万円強・平均月約60万円、受注6割とストックなど4割、経費約70万円の項目別内訳、講師業を辞めた理由、ストック目標300万円と月20万円の実績、免税事業者である旨



