コラム

年商493億円の内訳で、配信は18%しかなかった。YouTubeの棚は上に行くほど棚から降りる

YouTubeを収益源にする掲載事例8件の月商中央値は22万4,686円で、登録者110万人のチャンネルより登録者1万人のチャンネルのほうが多い。同じ棚の最上段にいる上場企業の2026年3月期は売上493.3億円、うち配信・コンテンツは18.5%だった。

執筆: Small Start 編集部
年商493億円の内訳で、配信は18%しかなかった。YouTubeの棚は上に行くほど棚から降りる

登録者110万人の料理チャンネルの月間収益は11万5,397円だった。登録者1万人のガジェットチャンネルは16万5,945円。登録者数は110倍離れていて、月に入る額は後者のほうが多い。

最初はこの並びを疑った。前者は売りに出された時点の収益で、後者は運営者本人が公開した額だから、物差しが揃っていない可能性がある。それでも桁は動かなかった。登録者数は、その月いくら入るかをほとんど説明していない。

ここでは、同じ棚の下の段と最上段を同じ表に入れてみる。最上段には上場企業が1社いて、売上の内訳まで四半期ごとに公開されている。

立つ条件は公開されている。立ったあとの条件は公開されていない

YouTubeで広告の分配を受ける入口は数字で決まっている。チャンネル登録者1,000人かつ直近12か月の総再生4,000時間、または登録者1,000人かつ直近90日のショート視聴1,000万回。どちらかを満たすと申し込みの通知が来て、チャンネル全体の審査を経て分配が始まる。審査の結果は通常1か月ほどで出る。

入口までは誰でも数えられる。分かれ目はその先にあって、分配が始まったあとに1再生あたりいくら入るのかは、単価も計算式も公開されていない。実額は、受け取った本人が書くまで外からは見えない。だから並べられるのは、本人が書いた8件だけになる。

8件を並べると、真ん中は月22万4,686円だった

チャンネル登録者月の収益
Web制作系1万人3万円(9か月の月別平均)
料理系110万人11万5,397円
ガジェット系1万人16万5,945円
スピリチュアル系非公開17万2,686円
まとめ系非公開27万6,686円
心理学・雑学系非公開55万9,786円
メンズ服系5.7万人$6,000〜7,000
生産性・学習法系数百万人規模年商$5.5M超(2023年)

8件の中央値は22万4,686円。下の2件は海外の事例で、桁がそのまま上に突き抜けている。登録者数が分かる5件を見ると、1万人・1万人・5.7万人・110万人・数百万人の順序と、金額の順序が一致しない。

AI解説チャンネルの数字がいちばん硬い。2年で登録者3.65万人、その2年間の総収益は数十万円台後半。動画112本を1本30時間で換算すると時給416円になる。本人は伸び悩んで止めたのではなく、立てた目標を全部達成したうえで広告収益の頭打ちを認めている。

最上段は、売上の81.5%を棚の外で作っている

ホロライブを運営するカバー株式会社の2026年3月期は、売上493億3,000万円だった。内訳はこうなっている。

セグメント売上構成比前期比
マーチャンダイジング237億4,700万円48.1%15.6%増
ライブ・イベント92億4,700万円18.8%18.7%増
配信・コンテンツ91億3,700万円18.5%2.0%減
ライセンス・タイアップ71億9,800万円14.6%25.3%増

配信そのものは18.5%で、4区分のうち唯一の減収だった。増えているのはライセンスの25.3%、ライブの18.7%、グッズの15.6%で、どれも配信の外にある。

この構成は断定してよい。この会社が493億円に届いたのは、配信で入る額を増やしたからではない。配信で集めた人を、配信の外で課金できる形に移したからである。最上段は、棚の上では稼いでいない。

月3万円の人と、年商$5.5Mの人と、493億円の会社が同じ内訳を言っている

しょーご氏の内訳が、それをいちばん小さい規模で示している。登録1万人時点の広告収益は月平均約3万円で、9か月分の月別実額が公開されている。本人の結論は「広告だけでは生活不可」。実際の主力は動画1本10万円の企業案件と、広告の数十倍を稼ぐ自社商品だった。

表のいちばん下にいるAli Abdaal氏は、同じことを比率で書いている。2023年の事業売上は$5.5M超、うち$3.5Mがコース由来。割ると約64%で、動画の広告でもスポンサー案件でもない。本人はそのコースを載せているプラットフォームを「重要な打ち手ではない」と思って4年間まともに見ていなかった、間違っていた、とも書いている。

月3万円の人、年商$5.5M超の人、年商493億円の会社。規模は3段に離れているのに、内訳の形が揃っている。編集部はここを、規模の話ではなく順番の話として読む。売上の主役はどの段でも配信の外にあり、段が上がるほどその比率が上がる。配信の比率が上がった例は、この表に1件も無い。

棚に立たないまま、棚の住人に売った人もいる

VMagicMirrorは、VRMアバターを特別な機材なしでPC画面に動かすWindowsソフトだ。ほぼ全機能を無償版に入れたまま、公開4年でBOOTHの累計売上が1,000万円を超えた。2,500円の有料版は機能解除というより寄付に近い。広告もSNS運用もアナリティクスも持たず、開発者は会社員を続けている。

この人の売上は、自分の再生回数と関係がない。配信する人が増えるほど道具が売れる構造になっている。棚の外に出る方法は、棚を降りることだけではなかった。

棚から降りた先が安全なわけではない

反証のほうを先に出す。カバーの2027年3月期第1四半期は売上88.25億円で8.3%減、営業利益6.51億円で33.0%減。マーチャンダイジングは22.1%減だった。前期はメタバース関連のソフトウェア資産の減損で純利益が45.7%減になっている。同じ四半期にライブ・イベントは109.6%増で、振れ幅がそのまま出ている。棚の外は単価が高い代わりに、在庫と設備と企画の当たり外れを抱え込む。

数字の性格も揃っていない。493億円は会社の売上であって、配信しているタレント個人の取り分ではない。その配分は公開されていない。表のうち3件はラッコM&Aに掲載された時点の数字で、希望売却価格ベースの案件なので成約額は非公開である。そして8件という母数は、同じ棚に並ぶ数千万のチャンネルのうちの8件にすぎない。

チャネルごとの月商を集計した集客チャネル別の中央値と、一人の天井を扱ったソロ・副業121件が隣にある。月商と中央値の定義はデータ集計に置いた。

数えるなら、登録者数ではなく「再生と無関係な売上の比率」を数える

一人の天井は、市場の大きさではなく、売上を自分の労働から切り離せたかで決まる。編集部は、YouTubeがその切り離しをいちばん起こしにくい棚だと見ている。再生は時間と一緒にしか増えず、単価は外から決まり、計算式は公開されない。

登録者110万人が月11万5,397円で、1万人が月16万5,945円になるのはそのためだ。どちらも運営を間違えていない。登録者数という数字が、売上の予測子として最初から設計されていないだけである。

次に数えるときは、登録者数の順に並べるのをやめる。売上のうち何%が再生回数と無関係かで並べ替えたい。この表の8件で、その比率を金額で公開しているのは1件だけだった。その1件は64%だと書いている。

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本コラムは、Small Startに掲載している事例(すべて出典付きの公開情報)の集計と、公開情報の分析にもとづく編集部の見解です。特定の事業・投資・副業を推奨するものではありません。

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出典

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