海外事例 運営中

The Kavalier、年収$120,000を捨てて月商$6,000。登録者を半年ごとに倍にした型

メンズ服YouTube「The Kavalier」は2015年開始、初年度末の登録者は800人。投稿を月2本から平日毎日に上げ3年で500本超を積み、2018年9月に年収$120,000の職を辞して専業化。取材時は登録5.7万人・月商$6,000〜7,000。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

The Kavalier、年収$120,000を捨てて月商$6,000。登録者を半年ごとに倍にした型

月商90万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から37%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

最初の1,000再生に8ヶ月かかった

The Kavalierは、メンズ服の「知られていない良いブランド」をカテゴリ別に掘り下げて紹介するYouTubeチャンネルとブログである。運営者はピッツバーグ在住のJon Shanahan。チャンネル名は「紳士」を意味する14世紀ドイツ語から取っている。

開始は2015年1月。最初の動画はFrank and Oakというブランドのレビューで、撮影機材はiPhoneのカメラ、編集はFinal Cut Pro、サムネイルはAdobe Illustrator。撮影場所は自宅の空き部屋だった。1,000回再生に届くまで8ヶ月、その年の末の登録者は800人。取材時点(2019年2月)の登録者57,000人という数字と並べると、初年度がいかに静かだったかが分かる。

積み上げの記録

時期出来事・数字
2015年1月開始。iPhone撮影、投稿は月2本
2015年8月頃初めて1,000再生に到達(開始から8ヶ月)
2015年末登録者800人
2015〜2017年自宅の空き部屋で撮影
2017〜2018年未完成の地下室へ移動、その後は改装した独立ガレージを撮影スタジオ化
2018年投稿頻度を平日毎日へ。この時点で開始3年間の投稿は500本超
2018年初ブログを開設
2018年5月専業化できると判断
2018年9月7日年収**$120,000**の職を退職、最終出社
2019年2月登録者57,000人、月商**$6,000〜7,000(約90〜105万円)**
2020年登録者10万人到達

収益の柱はアフィリエイト報酬とブランドとのタイアップである。使っているネットワークはRefersion、Rakuten、ShareASale、Amazonアソシエイト、rewardStyle、Commission Junction、Impact Radiusと多岐にわたる。

何が軌道を変えたのか

この事例には分かりやすい一発のバズがない。軌道を変えたのは、投稿の設計を二つ変えた点にある。

一つ目は、投稿頻度を月2本から平日毎日へ引き上げたこと。 2015年の月2本ペースから、2018年には平日1本の体制になった。結果として最初の3年で500本超が積み上がる。登録者は「半年ごとに倍」というペースで増え続けた。800人 → 1,600人 → 3,200人という等比の増え方は、当たった動画が引っ張ったのではなく、在庫が増え続けた結果として起きる伸び方である。

二つ目は、狙いをThe Wirecutter型に定めたこと。 すなわち、人がブランド名で検索する行為そのものを対象にし、できるだけ多くのブランドを網羅する。開封動画のような一過性の企画から離れ、調べ込んだレビューへ重心を移していった。何を作るかの基準が「面白い企画」から「検索されている問い」に変わった瞬間が、この事業の実質的な転機である。

効いた理由をメカニズムで見る

なぜこの二つが効いたのか。分解すると三段になる。

一段目は、YouTubeは検索の場でもあるという前提を利用している点だ。「このブランドは買いか」という問いは、購入の意思決定の直前に発生する。そこに具体的な検証動画を置けば、視聴者は既に財布を開く姿勢で来ている。アフィリエイトの転換率が高くなるのは当然で、収益はチャンネル登録者数ではなく購入意図の量に比例する。

二段目は、在庫が資産として積み上がる構造だ。ブランド名レビューは公開後も検索され続ける。500本という本数は、500本分の検索入口を常時開けているということで、新作を1本出すたびに全体の露出面積が増える。だから登録者が等比で伸びる。話題性に頼る発信ではこの積み上がりが起きない。

三段目は、扱う領域が服という買い替え商材であること。読者は一度買って終わりではなく、季節ごとに戻ってくる。同じ人が何度も購入意図を持つ市場だから、リピートが効く。

補助線としてコラボレーションもある。冬用ブーツを検証する企画では11のYouTubeチャンネルが素材を持ち寄った。時計系チャンネルなどとの共同企画も行っている。テック系で定番の「watch check(所持品紹介)」フォーマットをスタイル領域に持ち込んだのも、他ジャンルの型の移植である。

効かなかったこと、代償

うまくいかなかった動きもはっきり語られている。動画のリンクを個々の相手に直接ツイートして回るやり方は「スパムじみている」と感じて続かなかった。また、開始当初は他のクリエイターへの働きかけをほとんどしていない。理由は自信のなさと時間不足だと本人が認めており、後年になって「外に出れば助けてくれる人はいる」と述懐している。

代償も小さくない。専業化前の彼は本業で週50時間以上働きながら、朝5時から7時を動画制作に充てていた。これを3年以上続けている。500本という数字の実体はその早朝の積算である。

退職の判断も感情ではなく数字で行われている。家計の支出を削り、月商$6,000超という水準を先に作ってから辞める。 2018年5月に判断し、実際の最終出社は9月7日。年収$120,000という条件を手放す以上、代替収入の確認が先だった。

何が真似でき、何ができないか

真似できるのは方法論である。購入意図の強いキーワード(この場合はブランド名)を軸に据えること、投稿頻度を上げて在庫を積むこと、開封のような一過性の企画から検証型へ重心を移すこと、そして退職前に代替収入の水準を作ること。撮影機材はiPhoneから始まっており、参入コストは実質ゼロだった。

真似しにくい条件も三つある。まず時間だ。本業50時間+早朝2時間を3年続けられるかは体力と生活環境の関数で、家庭や体調の事情でこれが不可能な人は多い。次に前職の蓄積。Jon Shanahanは法律事務所で動画制作とSNS運用を担当していた経験があり、撮影・編集・サムネイル設計を最初から自前でこなせた。ここは独学の期間が別途必要になる人がほとんどだろう。そして時期。2015年から2018年のYouTubeは、いまより検索起点の露出が取りやすかった可能性が高く、同じ投稿量が同じ結果を生む保証はない。

最後に規模の認識を揃えておく。月商$6,000〜7,000は年商にして$72,000〜84,000。手放した給与が$120,000だったことを踏まえれば、専業化は収入の増加ではなく減少を伴う選択だった。それでも辞めた、という点がこの事例の性格をよく表している。

あわせて読みたい

  • ヒトデ氏 — 検索起点の個人メディアを長期で積み上げた国内の記録
  • Kindle出版 — 一本の当たりではなく本数で押す発想の別形態

出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →

近い規模・近い業種の事例

この記事が参考になったら、シェアで応援
Xでシェア