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6.2坪・平日夜だけのカフェバー、開店4か月目の売上は27.9万円。客数は70→82人に増えたのに、客単価は4,219円から3,404円へ落ちた

6.2坪・平日17時〜22時半だけ開けるカフェバーの実数。開店4か月目の2025年10月は売上279,130円、来店82名、営業21日。2か月目より客数は増えたのに売上は減り、客単価は4,219円から3,404円へ下がっていた。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

6.2坪・平日夜だけのカフェバー、開店4か月目の売上は27.9万円。客数は70→82人に増えたのに、客単価は4,219円から3,404円へ落ちた

飲食店の開業記で公開される数字は、たいてい「軌道に乗った後」のものだ。月商数百万円の内訳は出てきても、開店直後の月に何人が来て何円落としたかまで書かれることは少ない。「みならい店長」を名乗る運営者がnoteで続けている連載「カフェバー開業よもやま話」は、そこを毎月出している。

店は6.2坪。都心の、視認性が良い1階の路面店だ。営業は平日の17時から22時半までで、土日祝は休む。この条件で、開店4か月目にあたる2025年10月の売上は279,130円だった。来店は82名、営業日数は21日である。目標は30万円だったので、届いていない。

小さい数字だ。だが、この事例が読む価値を持つのは金額の大きさではなく、2か月目と4か月目を並べたときに見える動きのほうにある。

2か月目と4か月目を並べる

項目2025年8月(開店2か月目)2025年10月(開店4か月目)
売上295,300円279,130円
来店客数70名82名
営業日数20日(うちノーゲスト1日)21日
客単価(売上÷客数)約4,219円約3,404円
1営業日あたり売上約14,765円約13,292円
1営業日あたり客数3.5名3.9名

客数は70名から82名へ17%増えた。にもかかわらず売上は16,170円減っている。理由は客単価で、約4,219円から約3,404円へ、19%落ちた。

運営者自身が2か月目の回で書いている一文が、この動きを説明している。当時は知り合いの客が多く、「チート」状態だという自覚があった、という趣旨だ。開店直後は友人・知人が祝儀的に来店し、しかも財布の紐が緩む。単価はそこで一時的に持ち上がる。その層が一巡すると、単価は本来の水準へ戻る。

つまり4か月目の3,404円のほうが、この店の実力に近い数字ということになる。開業直後の売上を「順調な滑り出し」と読むと、3か月後に落ちる理由が分からなくなる。客数と単価を分けて記録していれば、落ちたのが集客なのか単価なのかを取り違えずに済む。この店の場合、集客はむしろ改善している。

「開けない」という設計

この店の特徴は、営業しない時間の多さにある。平日のみ、17時から22時半まで、土日祝は休み。飲食店の常識では週末が最大の稼ぎ時だが、それを丸ごと捨てている。

都心の路面店で平日夜だけを狙うということは、客層を「会社帰りの人」にほぼ限定するということだ。土日に人が減るエリアであれば、開けても人件費と光熱費が出ていくだけになる。営業日を増やせば売上は増えるが、利益が増えるとは限らない。この判断を開業前に織り込んでいる点が、この事例の設計上の要になっている。

一方で、この設計は上限も決めてしまう。6.2坪、1日5.5時間、月21日。1営業日あたりの客数は3.9名で、席が埋まらないから売上が伸びないというより、そもそもこの営業条件で入れられる人数の枠が小さい。同じ小型店でも、5坪で月商100万円に届きながら継続できなかったクレープ店の事例は昼の回転で売上を作っていた。回転数で稼ぐか単価で稼ぐかは坪数ではなく営業設計で決まる。

机上の原価率は現場でずれる

運営者は2か月目の時点で、原価率が試算より高くなっていることを書いている。具体例として挙げているのがワインだ。1本から6杯取れる想定で原価を組んでいたが、実際には5杯になることが多い。

これは1杯分、率にして約17%の歩留まり差にあたる。グラス提供の飲食では、注ぎ方や泡、ロスの積み重ねが原価率に直接乗る。開業前の試算はカタログ値で組むしかないため、この種のずれは避けにくい。逆に言えば、開業から数か月は「試算の答え合わせ」の期間であり、そこを記録しておかないと値付けの修正ができない。

なお、光熱費については予想の範囲内に収まったと書かれている。原価は外れて固定費は当たった、という結果になる。

仕入れ側の条件は開業前に整えている。酒屋との取引は前日発注で翌日納品、価格は店頭価格より安く仕入れられる条件だ。契約には本籍地入りの住民票、印鑑証明書、登記簿謄本、法人の印鑑証明書、保証人の住民票と印鑑証明書、営業許可証の写しという7点の書類が要る。6.2坪の店で在庫を置ける量はたかが知れているため、翌日納品が効くかどうかは在庫の持ち方そのものを左右する。売上279,130円を6.2坪で割れば坪あたり約45,000円で、この規模では「置ける量」が売れる量の上限になりやすい。仕入れの回転条件を先に押さえておくことは、小型店では在庫リスクを持たない選択と同義になる。

撤退リスクを先に買っておく

資金の作り方も特徴的だ。個人事業ではなく株式会社を設立しており、登記費用は「22万円とちょっと」、資本金は200万円。開業前にはクラウドファンディングも実施している。プレオープンは6月29日から週3程度で始め、そこから本営業へ移した。

月商27.9万円という水準で見れば、資本金200万円は決して厚くない。だが、初年度に赤字が出ても即撤退にならない緩衝材を先に用意しているという点で、これは「小さく始める」の実装のひとつだ。運営者自身も別に8年続けている事業を持っており、この店の売上だけで生活を支える設計にはなっていない。

固定費を賄えなかった小型店の例は多い。2店舗のレンタルスペースを29か月運営して赤字だった事例のように、固定費と売上の差がじわじわ効くのが実店舗の怖さで、そこに耐える現金と、耐えている間の生活費をどう別建てにするかが最初の関門になる。

売上・客数・営業日数の3列と、6.2坪の上限

この連載で一番情報量が多いのは、金額そのものではなく記録の粒度だ。売上・客数・営業日数の3つを毎月そろえて出しているから、単価の低下という変化が見える。売上だけを追っていたら「2か月目より落ちた」で終わり、原因が集客なのか単価なのか判別できない。開業直後の数字は知人の来店で歪むという前提を持ったうえで、その歪みが抜けた後の水準を見にいく、という読み方がこの3列で初めてできる。

規模の上限も最初から決まっている。6.2坪・平日夜のみという条件では、売上の上限があらかじめ決まっている。運営者も4か月目の回で「毎月このくらいの売上額で落ち着きそう」と書いており、伸ばす前提の事業として運営されているわけではない。初期費用50万円で始めた焼き鳥テイクアウトの事例と同様、小さく始めることは損失を小さくする設計であって、成長を約束するものではない。

そして、この記事が扱う数字は2025年8月と10月の2点にすぎない。飲食は2月と8月が厳しいと運営者自身が書いており、季節の影響も無視できない。ただ、連載はその後も続いており、一周年を迎えた回も投稿されている。開業から1年を越えて営業が続いていること自体は、月商27.9万円という数字とセットで見るべき事実だろう。開業から1年以内に閉じる店が珍しくない業種で、続いていることは一つの結果である。

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