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BruMate、クラファンで集まったのは$1,025。それでも従業員ゼロのまま年商$20Mに届いた

目標$5,000のIndiegogoで集まったのは$1,025。そこから2017年$2M、2018年$20M、2019年$33M、2020年$100M超。$20Mまで正社員はゼロだった飲料容器ブランドの数字を追う。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

BruMate、クラファンで集まったのは$1,025。それでも従業員ゼロのまま年商$20Mに届いた

2016年4月、インディアナ州の20代前半の起業家がIndiegogoでキャンペーンを立ち上げた。目標は$5,000。集まったのは$1,025だった。商品は「ビールがぬるくなる前に飲み切れない」という、本人が友人宅のパーティで感じた不満から作った缶用の保冷ホルダーである。

クラウドファンディングの失敗は、普通ならそこで話が終わる種類の失敗だ。ところがHead West Guideがまとめた事業史によれば、この事業(BruMate)の年次売上は2017年に$2M、2018年に$20M、2019年に$33M、2020年に$100M超と伸びている。しかもHubSpotの記事は、$20Mに達した時点で正社員は一人もおらず、創業者のDylan Jacobがフリーランスと代理店と外部倉庫を束ねて回していたと書いている。

だからこそ興味深いのは「$100M」という到達点ではなく、$1,025から$20Mまでの区間で何を外部化し、何を自分の手元に残したかのほうだ。以下、公開されている数字だけを並べて構造を見ていく。

数字で追う5年間

時期売上・出来事
2016年4月Indiegogoで$1,025を調達(目標$5,000)
2016年初回生産1,000個。うち200個は地元ブルワリーSun Kingへ
2017年8月年内累計$1Mに到達
2017年10〜12月デジタルマーケティングの専門家を入れ、さらに約$1Mを上乗せ。通年$2M
2017年11月〜12月9日ブラックフライデーの予約販売で$270k分。2日で7,000件を出荷
2018年年商$20M。SBAの政府融資$250kを調達
2019年年商$33M。内訳はDTC 50%・Amazon 30%・卸 20%。年半ばに$2Mのクレジットラインを確保
2020年9月San Francisco Equity Partnersから$20M
2020年年商$100M超。5年間の成長の6割以上がこの年に集中
2022年さらに$25M

Forbesのプロフィール(2018年1月更新)には、2017年の売上見込みが$2M超で、Jacobが会社を100%保有していたことが記されている。$20Mに届く直前まで、資本を一切外に出していない。

「作らないこと」で人を増やさなかった

従業員ゼロで$20Mという数字は、業務が少なかったからではない。分解すると、この事業は在庫・物流・広告という重い3工程をすべて外部の他人の設備と時間で回していた。製造は中国の工場、保管と出荷は3PL、広告運用は代理店とフリーランス。Jacob自身が持っていたのは、商品企画と、キャッシュフローの管理と、初期にはFacebook広告の運用だった。

初期の広告予算はHubSpotの記事によれば1日$30〜40である。派手なローンチ予算ではない。この小さな予算で回していたのは「販売」ではなく「メールアドレスの収集」だった。ランディングページでリストを作り、ワインボトル1本分を丸ごと入れるWinesulatorの予約販売キャンペーンでは7,000件超のメールリストが積み上がった。予約販売は工場からの納品の2〜4週間前に走らせている。つまり顧客の入金が先、工場への支払いが後という順序を、意図的に商品ごとに作っていた。

在庫商売でいちばん人手と資本を食うのは、売れる前に積み上がる在庫である。予約販売はそこを構造的に回避する。無在庫のプリント・オン・デマンドで固定費を持たないStoic MuseのEtsy Tシャツ販売とは手段が違うが、「在庫リスクを自分の資本で背負わない」という発想は同じ方向を向いている。

商品側の設計も人手を増やさない方向に効いている。既存の保冷タンブラーがステンレス地の銀色ばかりだった市場に、色数を揃えて出した。その後も「スリム缶用クーラーの世界初」「取っ手付きで漏れないマグの世界初」「タップ付きバックパッククーラーの世界初」と、毎年ひとつ「世界初」を名乗れる商品を出し続けている。説明が一言で済む商品は、広告のクリエイティブも接客も軽くなる。単品に近い構成で年商$300万をAmazon FBAに集中させたPuzzle Readyのパズル台ECと同じで、SKUの複雑さを持たない事業は少人数で回る。

資金は「借りて回した」

自己資本も外部投資もない状態で在庫を積むための原資は、借入だった。初期はShopify Capitalと、20%を超える金利を取る民間の貸し手。2年目にSBA(米中小企業庁)の政府保証融資$250k。HubSpotの記事は、Shopify Capital・PayPal Working Capital・Amazon Lendingを併用し、重複した借入をスプレッドシートで管理して、返済期間の重なりが1〜2ヶ月を超えないようにしていたと伝えている。

2019年半ばに銀行との再交渉と監査を経て$2Mのクレジットラインを引き、機関投資家からの$20Mは2020年9月まで待った。年商$33Mになるまで、資本市場ではなく運転資金の借入で成長を買っていたことになる。金利20%超の借入は一般的には推奨されない条件だが、この事業では在庫の回転が速く、借りた金が数ヶ月で売上に変わる前提が成立していた。逆に言えば、回転の遅い商材で同じことをすれば金利がそのまま損失になる。

うまくいかなかったこと

クラウドファンディングは目標の2割しか集まっていない。この事業はクラファンで検証に成功したのではなく、失敗した後に自力で売った側である。

物流でもつまずいている。2017年第4四半期に使った最初の3PLは、記事の表現を借りれば「完全な失敗」だった。年間最大の繁忙期に出荷が崩れている。次の委託先ShipMonkに移すときは、いきなり全量を渡さず注文の20%でテストしてから切り替えた。

チャネルの偏りも残った。Facebookのエコシステムにほぼ100%依存している状態を、Jacob本人が問題視していた。スケール期にはInstagramとFacebookの広告費が上がり続けたため、マーケティング予算の25%をTV・ポッドキャスト・SMS・Snapchat広告といった未検証チャネルに割り当てるルールを持った。並行して、Amazonと卸を足して3本立てにしている。卸は12の独立販売グループと全米100人超の営業レップ、アトランタ・ダラス・ラスベガスのギフト見本市が入口だった。SNS広告の当たり1本で3ヶ月に売上1億5,000万円を作りながら、その後の展開に苦労したネック枕Necklowの事例と比べると、依存の解体に予算のルールを充てたかどうかの差が見える。

BruMateは、iPhone修理の卸を売った人間の3社目だった

この成長には前史がある。創業者は高校時代にiPhoneの画面修理事業を100店以上に卸して$100kの利益を出し、その事業を修理店11店舗を運営する小売グループへ$100kで売っている。ガラスタイルの会社をWayfairとOverstockで販売した経験もある。BruMateは初挑戦ではなく、物販と仕入れの回し方を既に知っている人間の3社目である。さらに、断熱容器という市場は既に需要が確認済みで、競合が色展開を怠っていたという「空いた席」があった。市場そのものを作る必要がなかった点は、条件として大きい。

もう一つ、$20Mまで従業員ゼロという事実は「一人で年商$20Mを作れる」という意味ではない。代理店・フリーランス・3PL・工場という他社の人員が背後にいて、その調整に創業者の時間が全投入されている。雇用の有無は組織の有無とイコールではない。国内でも、5人体制のD2Cが値上げ一発で利益構造を変えた月商1,200万円のD2C事例のように、人数と成果の関係は事業ごとにまったく違う形をとる。

数字だけを見れば$1,025から$100M超という飛躍だが、間にあるのは在庫と物流と借入の地味な設計である。派手なのは結果のほうで、途中経過はどこまでも運転資金の話だった。

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