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Sheets & Giggles、レイオフ3週間後に始めた寝具D2C。ローンチ前に7週間で集めたメール11,000件が初年度$1Mを決めた

2017年に勤務先で全員レイオフ。3週間後に立ち上げた寝具D2Cが、Indiegogoで$284,000、初年度$1M、2020年11月に初の月商$1Mへ。仕掛けはローンチ前の11,000件のメールだった。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

Sheets & Giggles、レイオフ3週間後に始めた寝具D2C。ローンチ前に7週間で集めたメール11,000件が初年度$1Mを決めた

2017年、Colin McIntoshが勤めていたウェアラブル機器のスタートアップでチーム全員がレイオフされた。彼が次に始めたのは、シーツである。しかも社名は「Sheets & Giggles」。英語圏の慣用句 “shits and giggles”(冗談半分で)をもじったダジャレだ。

eCommerce MasterPlanのポッドキャストのショーノートによれば、レイオフから3週間で立ち上げたこの事業は、最初の12ヶ月で売上$1Mに届いている。その間、McIntoshは1人で1日16〜18時間働き、15ヶ月にわたって自分に給料を払っていない。そして初出荷から約2年後の2020年11月、Retention Chroniclesの出演回で語られている通り、初めて月商$1Mを記録した。

面白いのは、この事業がクラウドファンディングで「当てた」ように見えて、実際にはIndiegogoに出す前の7週間ですでに勝負がついていた点だ。数字を追うと、寝具という差別化の難しい商材で何が効いたのかがはっきり見える。

立ち上がりの時系列

時期出来事・数字
2017年前職でチーム全員がレイオフ。3週間後に事業開始
ローンチ前の7週間ランディングページでメール11,000件を収集。取得率46%
2018年5月Indiegogoで$284,000の予約販売(同カテゴリ最高記録)
2018年10月初出荷。初期のクラファン顧客は1,893人
初年度(12ヶ月)売上$1M。この間は1人運営、15ヶ月無給
2019年四半期ごとに売上が倍増。通年見込み$2.4M
2019年8月Rockies Venture Club主導で$1.3Mのシード。累計調達は約$2M
2020年11月初の月商$1M

商品はユーカリから作るリヨセル繊維のシーツで、綿の生産に比べて水の使用量が約96%少ないと説明されている。シーツ1セットあたり、平均的な人の飲料水およそ5年分に相当する節水になる、という言い方をしている。

「11,000件」が何を担保したのか

Shopifyのブログが分解しているローンチ設計が、この事例の核心である。McIntoshはIndiegogoを開く前に、Kickoff Labsで12種類のランディングページを出し分け、Facebook広告は約50通りの組み合わせをテストした。広告テストに充てたのは週$1,000。彼はこの点について「広告に$1,000も出せないなら会社を立ち上げるべきではない」という趣旨のことを述べている。

結果として7週間で11,000件のメールアドレスが集まり、訪問者のメール取得率は46%という異常に高い水準になった。訪問者の70%はモバイルである。彼が事前に置いた目標は「10,000件のリストから、最初の72時間で300人の顧客」。つまり反応率3%という前提だった。この計算があったから、Indiegogoの初日に人が押し寄せ、$284,000という記録的な予約販売になった。

言い換えれば、この事業のクラウドファンディングは資金調達ではなく「すでに温めたリストを一斉に決済させる装置」として使われている。プラットフォームが客を連れてきてくれたのではなく、連れていく客を7週間かけて先に用意した、という順序である。

広告だけでは説明がつかない部分

もう一つ、この事業を語るときに外せないのがRedditである。McIntoshは自分の履歴書をRedditに投稿し、それが100万ビュー超に達して、オーガニック流入の大きな源になった。後に「Sheets Resume」という履歴書レビューの副プロジェクトも走らせている。寝具の広告ではなく、寝具と無関係な話題で人を集めたわけだ。彼自身、商品の宣伝と切り離した価値あるコンテンツを作るべきだと繰り返し述べている。

ここは、SNS広告の当たり1本で一気に立ち上がったネック枕Necklowの事例との対比が効く。広告一本足の立ち上がりは速いが、費用が上がった瞬間に成長が止まる。Sheets & Gigglesは広告・コミュニティ・自社リストの3つで入口を分けている。

LTVを上げにいった判断

Retention Chroniclesの回で開示されている数字が、その後の伸びを説明する。当初のLTVは約$150、CACは$60〜$70だった。シーツ単品のAOVは約$100(単価$70のシーツ×1注文あたり1.5点)である。この構造だと、広告費が少し上がるだけで採算が崩れる。

そこで商品ラインを、掛け布団・枕カバー・デュベカバー・ブランケット・マットレスプロテクター・枕・マットレス、さらにコーヒーやTシャツ、アイマスクまで広げた。結果としてLTVは$300〜$400まで上がっている。CACが同じでも、回収できる金額が2倍以上になれば広告の出稿余地はまったく変わる。返品率という別の指標を1%まで下げて広告採算を守ったHipstikのパンスト D2Cと方向は違うが、どちらも「広告費の上昇に耐える体をつくる」という同じ課題に対する答えである。

うまくいかなかったこと・制約

最初の商品案は竹素材のシーツだったが、クラウドファンディングで人を動かすには弱いと判断して捨てている。また、高額な費用を請求しながら成果を出さない代理店に当たった経験も語られている。

体制も見誤りやすい。フルタイムは6人だが、業務委託、カリフォルニアとサウスカロライナの3PL、インドの製造委託まで含めると関わる人数は30〜40人になる。「6人でこの売上」は、6人だけで回しているという意味ではない。McIntosh自身は従業員1人あたりの売上を重視しており、マットレス大手Casperの約$400,000を上回っていると述べている。

そして最大の制約は、15ヶ月の無給期間である。レイオフ直後の個人がこの期間を耐えられるかどうかは、貯蓄と生活条件に完全に依存する。ここは戦術ではなく前提条件だ。

Redditの100万ビューは、狙って作れない

立ち上がりを決めたRedditの100万ビューは、狙って作れるものではないし、同じ投稿を今やっても同じ結果にはならない。事前リスト11,000件という数字も、46%という取得率が出た商材・訴求・時期の組み合わせに依存している。順序は設計できても、当たりの大きさは設計できない。

Sheets & Gigglesが示したのは、ダジャレの社名でもユーカリ繊維でもなく、「売る前に売り先を用意しておく」という順序の話である。レイオフから3週間という速さも、その順序を守るための時間の使い方だった。犬のミームで6万人を集めてからEC化したHappy Puppinの事例も、順序は同じで「客が先、商品が後」である。

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