Crimibox、広告$200でメール1,000件、ローンチ4時間で100件受注。未解決事件ボックスの立ち上げ
ベルギー警察の捜査官が副業で始めた未解決事件ボックスCrimibox。ローンチ前に広告$200でメール1,000件を集め、告知4時間で100件超を受注。取材時点で月商$8,000超・累計4,000箱、現在のプロフィール表示は月商$85,000。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商1,275万円は、月商を公開している掲載227件のうち上位14%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。
物販の失敗の多くは、在庫を作ってから買い手を探す順序に起因する。ベルギー・ゲント発のCrimiboxは、その順序を意図的に反転させた事例である。創業者Jimmy Cowe氏は、箱を一つも作らないうちにFacebook広告に$200を投じ、1,000件超のメールアドレスを集めた。そのリストに告知を送った4時間後、100件超の注文が入っていた。
Cowe氏の本業は、ベルギー連邦警察の捜査官である。未解決事件を扱う仕事の中で彼が気づいたのは、「ほとんどの事件は現場ではなく刑事の机の上で解決する」ということだった。証言の裏取り、アリバイの照合、動機の整理。その机上の作業こそが面白いのではないか、という職業的直感が商品の中身になっている。
数字で見るCrimibox
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 創業 | 2017年6月 |
| 事前検証のFacebook広告費 | $200→ メール1,000件超 |
| ローンチ直後 | 4時間で100件超の注文 |
| 自己資金 | $5,000※プロフィール欄の開業費表示は$18.9K |
| 設計着手からローンチまで | 270日 |
| 1事件の設計期間 | 約1ヶ月 |
| 平均単価 | 約$35 |
| 取材時点の月商 | $8,000超 |
| プロフィール欄の月商表示 | $85,000 |
| 累計販売 | 4,000箱超 |
| リピート率(2つめの事件を購入) | 38%超 |
| 粗利率 | 43%(規模拡大時は58%まで想定) |
| 体制 | 創業者1名+従業員5名 |
商品の構造
Crimiboxは、架空の殺人事件の捜査資料が入った物理的な箱である。中身は捜査ファイル、現場写真、証拠品の袋。購入者はそれを読み解きながら、専用のスマートフォンアプリを使って捜査を進める。アプリにはチャットボットと架空の警察データベースが実装されており、そこには「数千人分の架空の人物と車両ナンバー」が登録されている。SNSのプロフィールや監視カメラ映像、Google Mapsといった実在のウェブ環境も捜査の舞台として使われる。
つまりこれは、脱出ゲームの体験を家庭に持ち込みつつ、物理の箱とデジタルの検索行為を往復させる設計になっている。単価$35は、脱出ゲーム1回分の料金と比べれば安く、ボードゲームと比べれば標準的な価格帯だ。
潮目を決めたのは、作る前の$200
この事例の転機は、ローンチ後ではなくローンチ前にある。Cowe氏は商品を完成させる前にFacebook広告を回し、$200で1,000件超のメールアドレスを獲得した。この時点で「売れるかどうか」の問いは、ほぼ答えが出ている。
そして完成前のリストに対して先行予約を打った。結果は4時間で100件超。単価$35で換算すれば$3,500前後になる。彼が自己資金$5,000で立ち上げられたのは、この先行予約が在庫の仕入れ資金を先に運んでくれたからである。前後の対比は明快だ。広告費$200という支出が、在庫リスクを負わずに事業を起動させる前払い資金を呼び込んだ。
本人が最大の学びとして挙げているのも、まさにこの点である。「私たちが学んだ最も重要なことは、ローンチする前にマーケティングを始めることだ。ローンチ前にメールリストを作れ」。
なぜこの手順が機能したのか
この商品は、そもそも「先行予約」と相性が良い。買い手にとって未解決事件ボックスは緊急性のない娯楽であり、届くのが数週間先でも不満になりにくい。日用品や食品では同じ手は使えない。
事前リストが広告の効率を根本から変えていることも大きい。取材時点でメール購読者は5,000人、Messengerのチャットボット購読者は800人。ここで注目すべきは開封率の差だ。メールが25%に対し、Messengerは95%。新作の事件をリリースするたびに、ほぼ全購読者に確実に届くチャネルを持っていることになる。1事件の設計に約1ヶ月かかる商品において、既存顧客の38%超が次の事件も買うというリピート率は、この到達率と不可分である。
有料広告の単価も異常に低い。Facebook広告は1件の購入あたり平均$4、Instagramストーリーズは1サイト訪問あたり$0.08。単価$35・粗利率43%の商品で獲得コストが$4なら、初回購入だけで広告費は回収できる。加えてサイト訪問者は1日300〜400人、転換率4%。ニッチな商材でありながら、訪問者の25人に1人が買っている計算になる。
言い換えれば、Crimiboxの収益構造は「安く集めて、高い開封率で繰り返し売る」という一本の線でできている。事前リストは起動資金であると同時に、その線の起点でもあった。
うまくいっていない部分と、数字の留保
まず数字の読み方に注意が必要である。記事本文は2018年11月時点の取材で、月商は「$8,000を少し超える程度」と書かれている。一方でStarter Storyのプロフィール欄には月商$85,000と表示されている。この2つは時点が異なる数字であり、どの時期にどう伸びたかの内訳は開示されていない。開業費についても、本文の「$5,000」とプロフィール欄の「$18.9K」が食い違う。本稿ではどちらか一方を採らず、両方をそのまま並べている。
運営面の課題も残っている。取材時点で製造と在庫はまだ自宅ガレージで行われており、「倉庫に移らざるを得なくなるのは時間の問題」と本人が述べている。物販である以上、売れれば売れるほど物理的な制約に突き当たる構造だ。粗利率43%という数字も、規模が出れば58%まで改善する余地があると同時に、裏を返せば現時点では原価が重いということでもある。
プラットフォームについては、当初のShopifyからWordPress/WooCommerceに移行している。「WordPressのほうが選択肢が多いと感じた」という理由だが、立ち上げ期に構築したものを作り直すコストは発生している。
そして最大の構造的リスクは、コンテンツ枯渇である。1事件あたり約1ヶ月の設計期間を要する商品で、収益の柱がリピート購入(38%超)であるということは、新作が止まれば売上も止まるということだ。ソフトウェアと違い、一度作った箱は勝手に増えない。
再現できる条件
再現しやすいのは手順のほうである。作る前に広告で需要を測り、リストを作り、先行予約で在庫資金を賄う。この流れは商材を問わず有効で、必要な初期費用も$200程度から試せる。開封率の高いチャネル(この事例ではMessenger)に購読者を溜める発想も、そのまま応用できる。
再現しにくいのは中身のほうだ。Cowe氏は現役の警察捜査官であり、事件の組み立て方に職業的な蓄積がある。同じ商品を素人が作った場合、リピート率38%を出せるかは別問題である。加えて2017年当時のFacebook広告単価($4/購入)は、現在の水準では再現が難しい。獲得コストが3倍になれば、単価$35・粗利率43%の商品では初回購入での回収が成立しなくなる。
つまりこの事例から持ち帰るべきは「未解決事件ボックスが売れる」ではなく、「在庫を作る前に、リストと先行予約で需要と資金を同時に確保できる商材かどうかを見極めよ」という判断基準である。
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出典
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