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400玉が24分で完売。千葉・八街の家族経営スイカ農園が自社ECでシーズン月商900万円台へ

千葉県八街市の家族経営スイカ農園が自社ECとLINEで直販に転換。1年目は約100件の注文だったが、3年目には広告費ゼロでLINE登録4,000名、第一弾400玉が24分で完売し、収穫シーズンの月商は900万〜1000万円規模に達した。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

400玉が24分で完売。千葉・八街の家族経営スイカ農園が自社ECでシーズン月商900万円台へ

月商900万円は、月商を公開している掲載227件のうち上位26%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

千葉県八街市。スイカの産地として名が通っているのは隣接する富里市であり、八街は産地名としてほぼ無名だった。その土地で50年以上スイカを作り続けてきた家族経営の農園が、しあわせスイカ農園である。いまでは販売開始と同時に400玉が24分で売り切れ、販売前には400名以上が待機している。ここでは、立ち上げを支援したデザイン会社が公開している事例記事をもとに、3年間で何が積み上がったのかを数字で追う。

3年間で起きたこと

時期取り組み確認できる数字
開始前パソコン・SNSの経験がほぼない状態。家族は「八街のスイカが本当に売れるのか」と懐疑的で乗り気ではなかった販売は農協への出荷が前提
1年目自社サイト構築、スイカ専用段ボールとパルプモールドトレーの開発、少額のFacebook広告注文 約100件
2年目LINE登録者と顧客レビューが蓄積し、検索からの自然流入が増加。広告への依存度が下がる動画付きクチコミが積み上がる
3年目以降Facebook広告を完全に停止。それでも販売は前年を上回る広告費0円
現在事前告知で待機列をつくり、時間指定で一斉販売LINE登録4,000名超/第一弾400玉が24分で完売/クチコミ130件以上

現在の売上規模は、トウモロコシを含めてシーズン累計で月商900万〜1000万円と公表されている。スイカは収穫期が限られる季節商材であり、この水準が通年で毎月続くわけではない点は最初に断っておく。

「売りにくい商品」から始まっている

この農園がネット直販で抱えていたハンデは、産地の知名度だけではない。スイカという商品そのものが、重い・送料が高い・割れやすいという三つの構造的な難しさを同時に持つ。EC で扱う商材としては、単価あたりの物流コストとクレーム発生率がともに高い部類に入る。

対策は物理面から入っている。1玉用と2玉用の専用段ボールを起こし、転がりを止めるためのパルプモールドトレーを作り、ヤマト運輸と連携して割れが発生した場合は全額返金または交換で対応する体制を先に用意した。結果として割れの発生率は全体の1%以下に抑えられている。「割れたらどうする」という購入前の不安を、事前の告知で潰しにいった格好である。

商品設計の側でも一手が打たれている。農協の流通に乗らない3L以上の大玉に価値を与え、めったに採れない5Lサイズには「奇跡(きせき)」という名前を付けてプレミア価格を設定した。糖度は例年14度を超えるという数字で品質を可視化し、八街が無名であることを隠さず「全国に並ばない、幻のスイカ」という位置づけに反転させている。

決定打になった判断は、売り方より先にあった

この事例で最初に効いた判断は、マーケティング施策ではない。娘さん夫婦が両親から農協と同じ引き取り価格でスイカを買い取り、それを全国にネット販売するという取引の設計である。

この形にすると、ネット販売がうまくいかなかった場合でも、両親の収入は従来の農協出荷と変わらない。50年以上同じ売り方をしてきた家族に「新しい売り方を試そう」と提案するとき、最大の障害は技術でも集客でもなく、失敗したときに生活の土台が揺らぐことへの恐怖である。買い取り方式は、その恐怖を構造的に取り除いた。家族が乗り気ではなかった状態から実際に着手できたのは、説得ではなくこの仕組みによるところが大きい。

数字の上での転機は2年目から3年目にかけて訪れている。1年目の注文は約100件、集客はFacebook広告に一定額を投じていた。2年目にLINE登録とレビューが積み上がると、既存顧客からの再購入が販売の大部分を占めるようになり、広告の役割が薄れた。そして3年目に広告を完全停止しても販売は落ちず、むしろ増えた。広告費という変動費をゼロにしたまま売上が伸びる状態に移行したのが、この事業の分岐点である。

なぜ広告なしで売り切れるようになったのか

構造としては、支払った広告費が一度きりの売上ではなく、再販可能な顧客リストに変換され続けたことに尽きる。LINE登録4,000名という数字は、次のシーズンに販売告知を届けられる相手が4,000人いるという意味であり、収穫期に合わせて需要をまとめて起こせる装置になっている。販売開始前に400名以上が待機していたのも、需要を分散させず一点に集める設計の結果である。400玉が24分で消えるという現象は、瞬間的な話題性ではなく、事前に蓄えた登録者を一斉に動かした帰結と読める。

もう一つは、レビューが売り場そのものになっている点である。動画付きのクチコミが130件以上並ぶ商品ページは、「重い・割れやすい・高い」という購入前の不安に対して、運営側の説明よりも強い証拠として機能する。1年目の約100件という小さな注文数が無駄にならなかったのは、その全件が次の年の販売材料に変わったからである。

さらに、家族側の運用能力も同時に育っている。当初はパソコン初心者向けに画面写真付きのマニュアルと返信の雛形を用意していたが、回数を重ねるうちに絵文字を交えた自分たちの言葉に変わっていった。栽培する側も、5Lの「奇跡」がしばしば採れるように大玉づくりへ注力し、糖度も年々上がる傾向にあるという。売り方の改善が栽培の目標を変え、それがまた商品力に戻るという循環が起きている。

つまずいた点と、残っているリスク

順調一色ではない。販売開始のタイミングでサーバーがダウンし、増強で対応している。需要を一点に集中させる販売方法は、購買を確実にする代わりに、その瞬間の技術的なトラブルが直接機会損失になるという裏返しを持つ。

より根本的な限界は、スイカが天候に左右される季節商材であることだ。売上は収穫と品質に上限を規定される。顧客リストが4,000名に育っても、採れる玉数以上は売れない。実際、現在の月商にはトウモロコシが含まれており、単品の季節性を品目で補う構造になっている。

また、この事例は外部の支援会社が入って組み立てられている。サイト構築、価格戦略、コピー、サポート体制、サーバー対応まで含めた伴走があった前提の数字であり、農家が独力でここまで到達した記録ではない。

どこまで真似できるか

再現しやすいのは、家族や共同経営者のリスクを先に消してから新チャネルに着手するという順番である。買い取り方式のように、既存の収入源を維持したまま新しい売り方を試す形は、農産物に限らず家業を持つ事業なら組み替えられる。広告を顧客リストの獲得コストと割り切り、2〜3年かけて自前チャネルに移し替える設計も、季節性のある商材なら応用範囲が広い。

一方で再現が難しいのは、50年以上の栽培歴に裏打ちされた糖度14度という商品そのものと、3L以上・5Lという規格外の大玉を安定して出せる生産力である。「幻のスイカ」というポジションは、名前の付け方で生まれたのではなく、農協流通に乗らない品質の実物があって初めて成立している。産地が無名であることを希少性に転換する手法も、中身が伴わなければ一度きりで終わる。数字の派手さに目を奪われず、この事例の起点が売り方ではなく栽培と信頼設計にあった点は押さえておきたい。

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

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