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Pckgr、Intune運用の面倒を1点突破。ノーコード製SaaSが月商1,245万円に届くまで

Microsoft Intuneのアプリ配布作業だけを自動化するPckgrは、Intune管理者が集まるRedditとFacebookグループへ完全無料で投下するところから始まり、月額$25の導入と段階的な値上げを経て月商$83,000に達した。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

Pckgr、Intune運用の面倒を1点突破。ノーコード製SaaSが月商1,245万円に届くまで

月商1,245万円は、月商を公開している掲載227件のうち上位19%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

「Google Chromeを配布したい? Pckgrに登録してIntuneに接続し、Chromeを選んで配布する。それだけだ」。オーストラリア・メルボルンのThomas Mahony氏が作ったPckgrの説明は、これで全部である。企業のWindows端末をMicrosoft Intuneで管理する情報システム担当者にとって、アプリを配布可能な形に「パッケージング」し、更新のたびに作り直す作業は地味で終わりのない負担だ。その一工程だけを自動化するツールが、月商8万3,000ドル、年商換算で100万ドル超に到達している。

どこで課題を拾ったか

段階内容
2017年従業員5人のMSP(マネージドサービス事業者)のヘルプデスクに就職
その後コンサルティング会社でMicrosoft Intune専門の案件を担当
続いて勤務先がCapgeminiに買収され、大企業向けの大規模案件に従事
副業期在職中にMVPを構築
ローンチ完全無料で公開し、実環境での挙動を検証
課金開始初期の不具合を潰したうえで月額$25を導入
独立最初の有料顧客が出た時点でフルタイム化
現在Starter/Pro/Business/Customの4段階、MRR $83,000

原典は各段階の暦年を細かくは示していない。確実なのは、出発点が2017年の5人規模のヘルプデスクであり、そこから大企業案件までIntune運用の現場を上下に横断した経験そのものが、製品の種になっているという点だ。顧客の規模帯は「100台未満から10万台超まで」と幅広く、小規模なIT部門とMSPが中心である。

転機は「無料で撒く」と決めたところにある

Pckgrの軌道を決めたのは、公開時に価格をゼロに置いたことだ。氏は「早期ユーザーを集め、実環境で製品がどう動くかを学ぶため」に完全無料で出した。そして配る場所を、Intune管理者が既に議論を交わしているsubredditとFacebookグループに限定した。広く告知はしていない。

無料期間に不具合を洗い出したうえで月額25ドルを導入し、最初の有料顧客が出た段階でフルタイムに切り替えている。ここが二つ目の分岐点だ。「作ってから売れるか考える」でも「売れてから作る」でもなく、無料で実運用に晒して壊れる箇所を潰し、壊れなくなってから値段を付けるという順序を踏んでいる。

そして三つ目。単一プランから4段階への移行と値上げについて、氏は「価格の引き上げが成長に大きく寄与した」と明言している。月25ドルのままでは月商8万3,000ドルには届かない。同じ顧客層に対して、取り分を上げる余地が残っていたということだ。

なぜこの順序が効いたのか

無料公開が効いた理由は、集客ではなく検証の質にある。Intune配下の端末環境は企業ごとにばらつきが大きく、開発者の手元では再現しない失敗が必ず出る。無料で使ってもらう間に本番環境という試験場を借り、課金を始める頃には「動かなかった」というクレームの主要因を潰し終えている。有料で出していれば、同じ不具合は返金と評判の毀損に化けていた。

投下先の選び方も構造的だ。IT管理者向けツールは、検索広告で見つけてもらうより「同じ課題で愚痴を言い合っている場所」に置くほうが速い。subredditとFacebookグループは、購買判断者が既に自分の課題を言語化した状態で滞在している場所であり、説明コストがほぼゼロになる。

最も効いた集客チャネルとして氏が挙げるのは、Microsoft MVP(同社が認定する技術エキスパート)への働きかけである。MVPに製品をデモしてもらい、それがYouTubeに載る。この形式が強いのは二重の理由による。MVPの視聴者はIntune管理者に高度に絞り込まれており、しかも動画は公開後もずっと残り、後から検索してきた人を連れてくる。氏はこの「公開から長く経っても顧客を連れてくる」性質を効果の中心に置いている。

技術構成も一貫して軽い。UIとロジックはノーコードのBubble、パッケージングとテストはGitHub Actions、バックエンドはMicrosoft Azureのサーバーレス関数・ストレージ・Microsoft Graph連携。クラウドの無料枠を使い倒してコストを抑えつつ立ち上げている。フロントをBubbleで済ませたことは、Intune連携という本丸に開発時間を集中させる判断でもあった。

折れかけた瞬間と、残るリスク

開発中にMicrosoft自身が競合となるプラットフォームを発表している。氏は「やる気を完全に失い、リリースを諦めかけた」と振り返る。結局は一晩寝てから続行し、「壁にぶつかっても、翌日には何かアイデアを思いついて進み続けた」と語っているが、この事例のリスクの本質はまさにそこにある。Pckgrはプラットフォーム提供者の隣で、提供者が埋めていない穴を埋める事業だ。穴が埋められた日に価値が消える構造は、今も変わっていない。

参入障壁についての本人の見立ても率直だ。AIツールの普及で「参入障壁は信じられないほど低く感じられ、競争は増している」一方、「MVPを作るのはかつてないほど簡単になった」。この両面性は、後発が同じニッチを狙いやすくなったことも意味する。

何が真似でき、何が真似できないか

真似できるのは順序と場所の選び方だ。無料で実環境に晒して壊れる箇所を潰し、その後で価格を付け、さらに段階を刻んで上げていく。投下先を「対象者が既に集まっている場所」に絞る。この二つは業種を問わず適用できる。ノーコードで前面を作り、差別化の中核だけを自作する構成も同様である。

真似しにくいのは、課題の出所だ。氏がPckgrの必要性を確信できたのは、5人のMSPから大企業案件までIntune運用の現場を実際にやったからで、この判断材料は外から市場調査しても手に入らない。Microsoft MVPに取り合ってもらえたのも、業界内の言語と信用を共有していたからだ。加えて、Microsoftエコシステムという「大手が土台を持ち、周辺を埋める余地が構造的に生まれ続ける」地形の存在も、選ぼうと思って選べるものではない。氏は次にWindows端末を丸ごと管理する「Pckgr RMM」を構想しており、同じ地形をさらに深く掘る方向に進んでいる。

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

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