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BASE月商42万円で全国1,919位。平均月商1万円→53.8万円の6年と、クーポン施策の「先食い」検証

BASEで作家もの雑貨を売るミック氏が、2024年2月の月商42万円・全国1,919位を公開。平均月商は2018年1万円→2020年56.3万円→2022年53.8万円。閑散期をクーポンと送料無料で埋めた月を「需要の先食いか掘り起こしか」で自己検証している。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

BASE月商42万円で全国1,919位。平均月商1万円→53.8万円の6年と、クーポン施策の「先食い」検証

月商42万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から28%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

ECの実績公開は「月商◯万円」で止まることが多い。この事例が扱いやすいのは、月商と同時にプラットフォーム内の順位、そして「その月商をどうやって作ったか」の施策と、その施策への自己批判までが1本の記事に揃っている点である。

出典はベストエフォート株式会社代表・ミック氏のnote。BASEで作家もの雑貨を扱うショップの2024年2月実績と、同氏が別記事で公開している出店以来の平均月商推移を突き合わせる。

2024年2月:月商42万円、全国1,919位

記事タイトルがそのまま結論になっている。「【2024年2月実績】BASE月商は42万円、ランキングは1,919位でした。」

前月との対比を含めると、直近の数字はこう並ぶ。

月商BASEショップランキング
2024年1月75万円1,060位
2024年2月42万円1,919位
(基準) 平均月商約40万円1,000〜2,000位

1月の75万円は「特殊要因」による数字で、恒常的な水準ではないと本人が断っている。2月の42万円は平均月商40万円をわずかに上回った、という位置づけである。

順位の意味づけも同記事群で説明されている。BASEは開設数200万件規模のプラットフォームであり、平均月商40万円で毎月1,000〜2,000位、すなわち「上位0.05〜0.1%」に相当する。ただし本人は順位を額面通りには取っていない。「ランキングは売上額だけでは決まらず、アクセス数やフォロワー数、レビューなども要素になる」と推察したうえで、1,919位について「悪くはないですが、できれば、常に1500位以内には、位置していたいと思っています」と書く。

転機は2020年。ただし「巣ごもり需要」ではない

このショップの本当の分岐点は、2月の月商ではなく6年分の平均月商推移に現れている。

平均月商
2018年(出店)1万円
2019年9.4万円
2020年56.3万円(巣ごもり需要)
2021年45万円
2022年53.8万円

2018年の1万円から2019年に9.4万円へ、そして2020年に56.3万円へ。6倍の跳ね上がりに本人が付した注記は「巣ごもり需要」である。外部要因であり、本人の手柄ではない。

しかし転機として意味があるのはその次の年だ。巣ごもり需要が剥落した2021年、平均月商は45万円までしか落ちていない。2022年には53.8万円へ戻している。特需で3ヶ月だけ売れた店ではなく、特需で得た顧客と認知が需要消滅後も残った店である。1万円→9.4万円という2年間の助走がなければ、2020年に受け止められる在庫も出荷体制もなかったはずで、外部要因は「準備が済んでいた店にだけ効いた」と読むのが素直だろう。

以後の平均月商40万円台という水準は、この2020年に引き上げられた地面の上に乗っている。

42万円をどう作ったか——閑散期の「刈り取り」

2月は同ショップにとって最も不利な月である。作家もの雑貨は「秋から冬は需要が落ちる傾向」にあり、1月から2月は「年末商戦と春商戦の狭間で最も厳しい時期」だと本人は説明する。

そこに、本業である卸売事業の目標未達が重なった。全社の売上を戻す必要があり、ショップ側では「刈り取り」(将来の需要を今月に引き寄せる打ち手)が選ばれた。

実施したのは2つ。税込3,300円以上の購入で全品5%オフになるクーポンの発行と、送料無料キャンペーン。あわせてInstagramとメールマガジンで商品紹介とギフト提案を強化している。

結果は月商42万円で、平均月商40万円をクリア。ただし「値引きや送料負担が嵩むため、利益は平均よりダウン」した。売上目標は達成し、利益は落とした月である。それでも本人は「平均月商をクリアしたという結果が大事」と評価している。

「掘り起こし」と「先食い」を分ける自己採点

この記事の価値は、施策の成否を売上額で判定していないところにある。ミック氏はキャンペーンの効果を3つに分類する。

  • 需要を掘り起こす(良い効果)
  • 需要を先食いする(悪い効果)
  • 競合から需要を奪う(必要悪)

そのうえで今回の自己採点は「中間ぐらい」。割引に惹かれて買った層は先食い(本来3月や4月に買われたはずの購入が2月に前倒しされただけ)であり、Instagramやメルマガでの商品紹介・ギフト提案をきっかけに買った層は掘り起こしだ、という切り分けである。

この区別が効いているのは、同じ42万円でも意味が違うからだ。先食い分は翌月の売上を減らす。掘り起こし分は減らさない。売上の数字だけを見ていると、翌月の落ち込みが「施策をやめたせい」なのか「前月に食べてしまったせい」なのか判定できなくなる。

本人の警告はさらに踏み込む。「近くのスーパーでは、いつ行っても『3割引』や『タイムセール』のラベルが貼られている」ような常態化した値引きは、ショップの信頼性を落とし、定価では買わない買い控えを起こさせる。だからキャンペーンは「いつ」「なにを」「どれだけ」やるか、「どんな効果が見込めるか」の検証を先にやるべきだ、と。結論は「キャンペーンは諸刃の剣なので、需要を掘り起こす活動も同時にやっておくことが、継続的な安定に向けて必要」である。

事業としての体格

運営体制は極小である。ベストエフォート株式会社は法人だが「私一人の会社です」「営業・企画・宣伝・総務・経理・出荷など全てを一人でやっています」。BASEショップは同社の事業のひとつで、別に卸売事業を持つ。つまり月商42万円は、専業のEC事業者の数字ではなく、一人法人が複数事業を回すなかの1本である。

一方で開示されていない情報もある。ショップ名、具体的な仕入れ先、原価率、粗利額は記事中にない。したがって「月商42万円」から手取りを逆算することはできず、この事例から読み取れるのは売上と順位の水準、そして施策の設計思想までである。

真似できること、できないこと

再現しやすいのは、判断の枠組みのほうだ。売上をキャンペーンで作った月に、その内訳を「先食い/掘り起こし/競合からの奪取」に自分で仕分けし、翌月の予測に反映する。この作業に必要なのは新しいツールではなく、施策ごとの流入元(クーポン経由か、Instagram・メルマガ経由か)を分けて見る習慣だけである。閑散期を事前に把握し、そこにだけ刈り取りを配置する運用も、季節性のある商材なら同じ形で組める。

再現しにくい条件は3つある。2018年から2024年まで6年間店を開け続けたこと自体が筆頭だ。1万円→9.4万円という「2年間ほぼ稼げない期間」を越えた店だけが2020年の需要を受け取れた。2020年の特需というタイミングにも恵まれている。同じ助走をした店が同じ年に開いていなければ、この跳ね方は起きない。本業(卸売)を別に持っていることも外せない。EC単体で生活費を賄う必要がなければ、利益を落としてでも売上を作るという今回の判断は取りやすい。専業でこれをやると、利益ダウンがそのまま生活を直撃する。

平均月商40万円で上位0.1%という数字は、裏を返せばBASEの200万店の大半が月商数万円以下であることを意味する。この事例が示しているのは近道ではなく、6年かけて地面を上げ、上げた地面の上で月ごとに需要を配分し直している運用の記録である。

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