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Plausible、広告費ゼロ・4人で$1M ARR。Google Analytics対抗が証明した「思想で売るSaaS」

プライバシー重視のアクセス解析Plausibleは、2019年5月の公開から$400 MRRまで324日かかったが、その後9ヶ月で$10K MRRへ。広告費ゼロ・チーム4人・完全自己資金で$1M ARRに到達した。武器はコンテンツと「Googleへの対抗」という思想。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

Plausible、広告費ゼロ・4人で$1M ARR。Google Analytics対抗が証明した「思想で売るSaaS」

月商1,250万円は、月商を公開している掲載259件のうち上位17%。掲載全体の月商中央値は225万円です(データ集計)。

広告費ゼロ、営業ゼロ、外部資本ゼロ。チーム4人で$1M ARR——プライバシー重視のアクセス解析SaaS「Plausible」の到達点である。この事例が貴重なのは、創業から$1M ARRまでの全過程が月次MRR付きで公式ブログに開示されている点だ。どの施策が当たり、どの施策が空振りだったかまで数字で追える。コンテンツと思想だけで育つSaaSの速度曲線を検証する材料として、これ以上の公開データはなかなかない。

成長のタイムライン

時期出来事MRR
2018年12月Uku Taht氏が1人で開発開始—
2019年1月パブリックベータ公開—
2019年5月有料版を公開、初の課金$64
2019年9月MITライセンスでオープンソース化$178
2020年3月マーケ担当Marko Saric氏が共同創業者として合流$433
2020年4月反GA記事が拡散し転機$607
2020年9月初めて創業者に給料$5,035
2021年1月$10K MRR超え、持続可能ラインに$11,303
2021年10月$500K ARR(有料顧客4,802)$42,624
2022年6月2日$1M ARR(有料7,000超・計測サイト5万超)$83,637

初課金から$400 MRRまで324日。そこから$10K MRRまで9ヶ月、$500K ARRまで10ヶ月、$1M ARRまで8ヶ月。時間あたりの増分が後半ほど大きくなる、ストック型ビジネスの複利カーブそのものである。

何を売り、どう回しているのか

PlausibleはGoogle Analyticsの代替を掲げるCookieレスのアクセス解析SaaS。創業のきっかけは、Uku氏が勤務先でGA導入を頼まれた際の「GA以外を使えないのか」という自分自身の反応だったと明かされている。掲げるミッションは「できるだけ多くのサイトからGoogle Analyticsを取り除くこと」。コードは全て公開されており(当初MIT、2020年10月に自衛のためAGPLへ変更)、収益はクラウド版サブスクリプション一本だ。30日の無料トライアル、解約は問い合わせ不要、更新課金の前には事前通知メールを送る。監視型マーケティングへの批判を、製品体験のレベルまで一貫させている。

体制は2022年6月時点で4人。開発のUku氏、マーケのMarko氏に、2021年6月にRobert氏(パートタイム)、2022年2月にCenk氏が加わった。専任サポート職は置かず、全員で問い合わせに答える。「痛みが出るまで雇わない」というBasecamp流の採用方針だ。技術面では2020年6月のPostgreSQLからClickHouseへのDB移行を「最良の技術的決断」と自評しており、月間10億ページビュー超の計測を4人で支える土台はここで築かれた。

当たった記事、外れた施策

成長の主砲はブログだった。数字の残っている当たり記事だけでこれだけある。

時期記事効果
2019年7月「SPAはたぶん要らない」1日2,500訪問。初のHacker Newsヒット
2020年4月「GAの利用をやめるべき理由」数日で読者数万人、1週間でトライアル166件(それまでの約4ヶ月分)
2020年7月「オープンソースで家賃を払うには」1日で35,000訪問超
2021年5月「Google AMPは死んだ」数日で35,000読者
2021年8月独自調査「HN読者の58%はGAをブロック」24時間で30,000読者、トライアルが5日間で倍増
2022年1月「GAは違法か——墺仏当局の判断」規制ニュースの受け皿として急伸

外れた施策も包み隠さず開示されている。オープンソース化に合わせて設置した寄付ボタンの実績は半年で6件・計$30。Product Huntは瞬間風速のみで、数日後の流入は20訪問程度。メディアへの売り込みメールは大半が無視された(例外的に刺さったOpenSource.com掲載は、1日94トライアルという今も破られない記録を作った)。そもそもMarko氏が合流する前日のサイト訪問者は49人で、検索流入はゼロ。給料なしの期間に、創業者2人は貯金を合計$50,000以上取り崩している。

なお、有料広告・リターゲティング・ポップアップ・チャットボット・被リンク購入・インフルエンサー起用は、$1M ARRまで一度も使っていない。

数字の裏を読む

「巨人への対抗」は説明コストを消す。 Google Analyticsという誰もが知る存在の「against」に立つことで、Plausibleは「プライバシー版GA」の一言で自己紹介が終わる。比較検索(GA alternative)の受け皿にもなり、GAへの不満や規制ニュースが出るたびに、乗り換え先を探す人が流れ込む導線が既にできていた。何であるかより、何の代替かを言う方が小さなプロダクトは速く伝わる。

初年度の停滞は将来を予測しない。 324日で$400 MRRという数字だけ見れば撤退水準だが、Bannerbearの8ヶ月$0や教育系アプリの初年度12万円と同じく、初年度に書き溜めたコンテンツが2年目以降の複利の原資になった。当たり記事の型も一貫している。逆張りの主張、独自データ、規制ニュースへの即応。いずれも公開した瞬間より、検索と引用で参照され続ける時間の方が長く効く型だ。

追い風そのものは作れないが、受け皿は作っておける。 2022年1月にオーストリア、続いてフランスのデータ保護当局が「GAはGDPR違反」との判断を示し、3月にはGoogle自身がUniversal Analyticsの廃止を発表した。MRRは2022年1月の$55,411から6月の$83,637へ、半年で約1.5倍。ただしこの追い風を収益に変換できたのは、3年分の比較コンテンツと、2022年4月に間に合わせたGAインポートツールという「受け皿」が先にあったからである。

思想は解約率にも効く。 価格や機能で選んだ顧客は価格や機能で去るが、「Googleにデータを渡したくない」という理由で選んだ顧客には競合へ乗り換える理由がない。2021年2月からは粗収益の5%を寄付に回し(2021年は計$20,000)、思想で売ることの実行コストも払っている。選ばれる理由を思想に置くと、獲得と維持の両方が安定する。

自分に置き換えるなら

  • 再現しやすい点: 大手の倫理的・構造的弱点の逆を張るポジショニングと、比較検索を取りに行くコンテンツ戦略は、解析以外の領域でも繰り返し有効。当たり記事の型(逆張り+独自データ+時事即応)も真似できる
  • 限界: オープンソース化が信頼に転化するのは開発者向け製品に限る。「脱Google」にはGDPRという規制の追い風と、Google自身の失策(UA廃止)というタイミングがあった。思想マーケは時流と噛み合って初めて機能する
  • 覚悟すべきコスト: 検索流入がほぼゼロの期間が約1年、貯金の取り崩しが$50,000超。複利が立ち上がるまでの生存費用こそが、このモデルにおける実質的な「広告費」である

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。
この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →

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