Lively Table、レシピブログを7年育てて$200K超で売却。「買い手は広告収益しか見ない」を証明した
管理栄養士Kaleigh McMordie氏のレシピブログLively Tableは、月間20万訪問・広告収益主体で2022年に$200K超(月次収益の35倍)で売却。売却まで8ヶ月。買い手が評価したのは広告収益のみで、Instagram5万フォロワーはほぼ値段がつかなかった。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
売却額3,000万円は、売却額を公開している掲載41件のうち下から46%。掲載全体の売却額中央値は3,750万円です(データ集計)。
ブログ売却の記録として、この事例の価値は売却額そのものではない。管理栄養士という専門資格、約5万人のInstagramフォロワー、7年かけて築いたパーソナルブランド——売り手が積み上げたものの大半に、買い手が値段をつけなかったという事実にある。個人がメディアを育てるとき、どの資産が出口で換金され、どの資産が換金されないのか。They Got Acquiredのインタビューから、7年の運営と8ヶ月の売却プロセスを分解する。
売却の数字
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 売却額 | $200,000超 |
| マルチプル | 月次収益の35倍 |
| 売却年 | 2022年(運営開始は2015年) |
| 売却活動期間 | 8ヶ月(ブローカー2社+マーケットプレイスBlogsForSale.co+相対) |
| トラフィック | 月間20万訪問 |
| SNS | Instagram約5万フォロワー |
大学院の息抜きが専業になるまで
Lively Tableは、管理栄養士のKaleigh McMordie氏が2015年、大学院在学中に開設したブログである。動機は収益ではなく、料理好きと栄養学の知識を掛け合わせる創作のはけ口だった。テーマは「シンプルで健康的なレシピ」。そこからの軌跡は、フードブログ収益化の典型例をなぞっている。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 2015年 | 大学院在学中に開設。1年目の収益はゼロ |
| 2016年頃 | 初収益:スポンサー案件の**$100** |
| 2017年 | 月間5万訪問を突破。法人化し、広告ネットワークMediavineに参加 |
| 2018年 | 広告収益がフルタイム収入の水準に。パートタイムの管理栄養士職を辞めて専業化 |
| 2021年 | 幼い子供2人の育児とコンテンツ制作の両立でバーンアウト。売却を決意 |
| 2022年 | 8ヶ月のプロセスを経て、個人の買い手へ**$200K超**で売却 |
収益の主柱は運営の手がかからないMediavineのディスプレイ広告で、ブランドとのタイアップやスポンサードコンテンツが補助。集客は検索(レシピSEO)とSNSの複線だった。マルチプル35倍と売却額$200K超から逆算すると、売却時点の月次収益は$5,700強以上だった計算になる。
8ヶ月の売却プロセスで何が起きたか
売却は2021年のバーンアウトを起点に始まった。試した経路はブローカー2社、マーケットプレイスのBlogsForSale.co、そして相対交渉の並行である。1社目のブローカーはフードブログ領域の知見がなく、ミスマッチから破談も経験した。進行中もブランドとの契約は続いており、案件の納品と売却タイムラインの両立が精神的な負担になった。本人の回想は率直だ。「一番つらかったのは感情のジェットコースター。最後にはプロセスそのものに疲れ果てていた」(要旨)。
最終的な買い手は、複数のブログを買い集めている個人投資家だった。
買い手が値付けしたもの、しなかったもの
この事例の最大の発見は買い手の評価基準である。本人の総括は「広告収益が王様だった」。買い手が値段をつけたのは自動運転で回る広告収益だけで、5万人のInstagramフォロワーや管理栄養士としての専門性、7年分のパーソナルブランドはほぼ評価されなかった。複数ブログを束ねる買い手が探しているのは「自分が運営しても同じ数字が出る資産」であり、前オーナーの人格に紐づく資産は再現できないぶんゼロ査定に近づく。本人は後進に「SNSや自分のパーソナルブランドを事業に入れ込みすぎるな」「買い手がコンテンツサイトの何を評価し、何を評価しないかを理解しておくこと。それが価格を大きく左右する」と助言している(要旨)。
学び・分析
「売れる資産」と「運営を支える資産」は別物である。 パーソナルブランドやSNSは運営中の集客には効くが、譲渡できない(=買い手が再現できない)ため売却時の値段にならない。出口を考えるなら、収益を「本人がいなくても回る仕組み」(SEO×広告)に寄せておく必要がある。これは属人性を武器とするヒトデ氏の戦略の真逆であり、「運営で稼ぎ続けるなら属人化、売るなら脱属人化」という設計の分岐を示す。
マルチプル35倍(約3年分)は英語圏コンテンツサイトの標準レンジ。 国内のサイト売買が月間利益×20ヶ月程度なのに対し、英語圏は30〜40倍が相場とされ、この事例も一致する。同じ作業でも英語圏サイトは出口価格が1.5〜2倍になる構造は、これから作る人の市場選定に効く。
売却は8ヶ月かかる「第二の事業」。 Career Sidekickの売り手も「売却プロセスは第二のビジネス」と証言している。バーンアウトしてから売り始めると、最も消耗した時期に最も重い仕事が来る。本件はまさにその実例で、疲弊の中で破談・ブローカー交代・8ヶ月の交渉をこなすことになった。売却は元気なうちに準備が始まっているのが理想形だが、現実には「疲れたから売る」順序になりやすい。そのギャップの大きさを、8ヶ月という数字が示している。
つまずきの記録
- ブローカー選定の失敗。1社目はフードブログの知見を欠き、破談につながった。仲介者の「業界理解」は、手数料率より先に確認すべき変数であることを示す
- 売却タイミングの逆転。バーンアウトが先、売却活動が後。売却理由が消耗であることは交渉上も不利に働き得る(急いでいる売り手ほど条件を譲りやすい)
- 資産構成の偏り。5万フォロワーの構築に投じた時間は、売却額にはほぼ変換されなかった。運営中の集客には効いた投資が、出口では回収できない投資だったことになる
売却後 — ブランドは売れず、スキルは残った
売却後のMcMordie氏は家族との時間を優先しつつ、フリーランスとして料理写真とレシピ開発の仕事を続け、将来のサイト立ち上げも視野に入れているという。皮肉なことに、買い手が値付けしなかった「本人の専門性」は、売却後も本人の手元に残る唯一の資産でもある。脱属人化した資産(SEO×広告収益)を売り、属人的な資産(資格・スキル・ブランド)で次を始める。換金されなかったものが失われたわけではない、という分離がここでは機能している。
真似できるか、できないか
- 再現しやすい点: レシピ×SEO×広告ネットワークという構成は完全に定型化されており、Mediavine等の参加基準(セッション数)が中間目標として機能する。1年目収益ゼロ→3年目に参加基準到達→4年目に専業化、というペース感も参照値になる
- 限界: フードブログは競争が激しく、2015年参入当時よりSEO難度が大幅に上がっている。またAI検索の普及でレシピ系の検索流入自体が構造的リスクに晒されている。加えて日本語圏にはMediavineに相当する高単価の参加型広告ネットワークが乏しく、同じPVでも広告収益は英語圏より薄くなりやすい。35倍のマルチプルも英語圏市場の相場であり、国内相場は20ヶ月前後と半分程度に留まる
関連事例
- Own The Yard — 3年で$250K、公開実験としてのニッチサイト
- Career Sidekick — 月$50Kサイトの売却実務
- ラッコM&Aでの95万円売却 — 国内相場との比較
出典
近い規模・近い業種の事例
よく読まれている記事
- 1
minne販売で最高月商100万円。元デザイナーのハンドメイド作家が語る「売れる写真」の技術
直近34人が訪問 - 2
AI動画6本で初月15万3,030円 — 1本422万再生が収益の3分の2を占めたTikTok収益化
直近21人が訪問 - 3
売上30円から8年。アプリ3本を並行運営して月20万円に届いた個人開発の記録
直近19人が訪問 - 4
副業ブログ「Tsuzuki Blog」、月4.2万円から1年で月100万円へ。公開されている月次データを分解する
直近15人が訪問 - 5
シチナツ、会社員デザイナーのBOOTH素材販売が半年で108万円。月10万→25万円へ、月次売上の全公開
直近13人が訪問
新着記事
- 2026年9月26日
源氏リーインカーネイション、Steam初販売は1ヶ月で32本。宣伝費2万円が売上を上回った
- 2026年9月25日
Pirsch Analytics、社員1人のGA代替がMRR $11,000→$14,300。毎年決算を公開する「三番手」の5年目
- 2026年9月25日
孤高の旅人、開設約1年の雑記ブログで月50万PV・月30万円。「カテゴリ内で特化する」という戦い方
- 2026年9月24日
Fomo、MRR $10,000のウィジェットを売り手分割払いで買って最高月$154,000。6年後に7桁ドルでRelay Commerceへ
- 2026年9月23日
13坪のケーキ屋、開業3年目の年商27,073,172円。夫婦2人・家賃6万円の店が月別売上を24か月分すべて公開した



