RemoteOK — 月$140K→$10K→$41K。リモート求人ボードの乱高下が教える「市況依存」
リモートワーク求人ボードのRemoteOKは、コロナ前に月$140Kを記録した後、市況悪化で月$10Kまで9割減、その後$41Kまで回復。求人ボードという「市況の川下」ビジネスの振れ幅を、Pieter Levels氏が公開し続けた記録。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商615万円は、月商を公開している掲載259件のうち上位32%。掲載全体の月商中央値は225万円です(データ集計)。
数字の全体像
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| ピーク | 月$140,000(コロナ前) |
| ボトム | 月$10,000(ピーク比▲93%) |
| 直近 | 月$41,000/ 2025年公開値 |
| 収益モデル | 求人掲載課金・広告 |
| 体制 | Pieter Levels氏(従業員ゼロ) |
| 運営期間 | 10年超 |
この乱高下を記録する意味
月$140Kから$10Kへ——93%の減収を経て、畳まずに$41Kまで戻した事業の記録である。リモートワーク求人ボードRemoteOKを運営するPieter Levels氏は、ポートフォリオの収益を長年公開し続けており、この振れ幅は自慢話ではなくデータとして残っている。「求人ボード」という業態が構造的に抱える市況依存と、それでも生き残れた体制設計を、公開値から分解する。
下落の引き金は運営の外にあった
RemoteOKは「remote jobs」系の検索需要を長年押さえ、企業からの掲載料と広告で稼ぐ。ピークの月$140Kはコロナ期のリモート採用ブームが押し上げた数字だ。出典(PPC Land)はボトムへの転落を「FRBが金を刷るのをやめた後」と表現している。金融引き締め→テック企業の資金調達難→採用凍結→求人掲載の蒸発、という伝播であり、月$140K→$10Kの93%減は運営の巧拙と無関係に起きた。求人ボードの収益は雇用市況の従属変数である。「何で稼ぐか」は「何に依存するか」の裏返しで、掲載料モデルは他社の採用予算という、自分では一切制御できない変数に紐づいている。
▲93%を生き延びた「固定費ゼロ」の構造
月$140K→$10Kの減少は、普通の会社なら死ぬ。RemoteOKが生き延びたのは、求人掲載から課金・掲載・掲載終了までが完全に自動化され、従業員も、オフィスも、サーバー費以外の固定費もなかったからだ。収益が9割消えても支出はほぼ変わらずゼロ近辺。赤字にならない事業は、どんな不況も「待てる」。
出典にはこの自動化を支える技術面の記述もある。スタックはPHP+jQuery+SQLiteという徹底して枯れた構成で、外部資金はゼロ。Levels氏は12ヶ月で37,000コミットという速度で開発し、デプロイは1〜2秒、バグ修正を2分で本番反映した例も記録されている。モダンさより「一人で全部を触れること」に最適化した技術選定が、従業員ゼロ運営の前提になっている。対照的に、市況ビジネスで人を雇っていた企業は、冬の間にチームを解散し、回復期に新規参入者として出直すことになる。Levels氏の「従業員を雇わない」ポリシーは思想ではなく、この種の乱高下を織り込んだリスク設計として読むべきだ。
**それでも畳まなかったことが$41Kへの回復を生んだ。**維持コストがほぼゼロだったため、冬の間も店を開け続けられ、市況回復をそのまま受け取れた。ヒトデ氏らが語る検索アップデートの乱高下と同じく、ストック資産は「維持費が安いこと」自体が生存戦略になる。
ポートフォリオの中のRemoteOK
この事業単体で見ると乱高下の激しい賭けだが、Levels氏の全体像の中では一つの持ち札にすぎない。出典の公開値では、PhotoAIが月$132K(2025年5月)、InteriorAIが月$40K、その他のプロジェクトが各$15K〜22K。そして本人が明かす打率は「70以上作って、金になったのは4つだけ。やったことの95%以上は失敗した」(要旨)である。
PhotoAIの経緯を並べると、RemoteOKとの対比が際立つ。2022年10月に実験開始、2023年2月に正式ローンチ、約18ヶ月で月$100K到達(2024年9月)、2025年1月のLex Fridmanのポッドキャスト出演が成長を後押しし、同年5月に$132K。市況の追い風ではなく、プロダクトと本人の発信で伸びた曲線である。求人ボードが市況に沈んでいた期間に、性質の違う収益源が育っていたことになる。
RemoteOKの▲93%は、Nomad Listのようなコミュニティ収益や、こうした市況と相関の薄いAIプロダクトと合算されることで平準化されている。一つの事業の振れ幅は、ポートフォリオの中でだけ許容できる。これが10年分の公開データの結論だ。逆にいえば、RemoteOK一本に生活を載せていた場合、$10Kの冬は「待てる不況」ではなく撤退圧力になっていた可能性が高い。
回復の中身を割り引く
直近の$41Kはピークの3割にすぎない。そしてこの回復は、値付けや機能改善など運営側の施策の成果と、雇用市況そのものの持ち直しを切り分けられない。下落が市況で説明される以上、回復もまた市況で説明されるのが自然で、次の引き締め局面では再び落ちると考えるのが妥当だ。求人ボード・広告メディア・M&A仲介のような「他社の景況感が収益になる」川下の事業は、好況期の数字だけを見て参入すると危ない。この事例から引ける構造は3つある。ピーク時の収益を前提に固定費を組んだ瞬間に脆くなること、好況期の余剰を同じ市況に依存しない資産へ移した者だけが分散を持てること、撤退ではなく「冬眠」できる自動化水準が生存の条件になること、RemoteOKはこの3つをすべて満たしていたから、いま$41Kの数字がある。
日本の読者にとっての一般化可能性
一般化できるのは構造の側だ。検索需要を長期で押さえたストック資産、固定費ほぼゼロの自動化運営、複数事業への分散。これらは規模を問わず日本でも同じに働く。国内ブログの検索アップデート乱高下(きぐち氏の年収3,000万→1億→3,000万)は、同じ力学の国内版である。
一方で再現できない条件も明確にある。「英語圏のリモート求人」という市場の規模と、10年の発信で築かれたLevels氏個人の知名度だ。RemoteOKの集客は検索に加えて本人のSNSフォロワーに支えられており、この流入は事業ではなく個人に付いている。同型の求人ボードを今から日本語圏で作っても、市場規模と集客資産の両方が桁で違う。参照すべきは「求人ボードという商売」ではなく、「川下の事業を従業員ゼロ・固定費ゼロで持つ」という設計思想のほうである。
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出典
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