事例 売却済み

RPGゲームアプリ、175万円(月間収益の約7ヶ月分)で成約

ラッコM&Aの公開成約事例より。RPGゲームアプリ、175万円(月間収益の約7ヶ月分)で成約。掲載データから個人規模M&A市場の実勢価格を記録する。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

RPGゲームアプリ、175万円(月間収益の約7ヶ月分)で成約

月商25万円は、月商を公開している掲載259件のうち下から21%。掲載全体の月商中央値は225万円です(データ集計)。

成約の数字(ラッコM&A成約事例一覧より)

項目数字
成約価格175万円
掲載時の月間収益25万円
掲載時の月間利益20万円
対収益倍率7.0ヶ月分(対利益では約8.8ヶ月分)
掲載から成約まで12日
サーバー費月2,757円
売買経路ラッコM&A(売主手数料無料)

事例の見方

本件はラッコM&Aが公式サイトで公開している成約事例一覧に掲載された案件で、運営者インタビュー等の詳細ストーリーはない。ただし掲載ページには収益構造や運用データが比較的細かく開示されており、匿名の一覧データとしては情報量が多い。個人規模M&A市場で「収益の出ているスマホアプリ」にいくらの値が付くのか、その実勢を記録する。

掲載情報から案件の中身を復元する

公開されている範囲で、このRPGアプリの姿はかなり具体的に見える。収益源は動画リワード広告(任意視聴型)とアプリ内課金の併用。リリースから4ヶ月で月間最高売上30万円超に到達し、掲載時点の月間収益は25万円、利益は20万円。日予算2,000円の広告出稿でROAS(広告費用対効果)499〜789%を出しており、ユーザー獲得は広告運用で回っていた。バックエンドはPlayFab(ゲーム向けクラウド基盤)で、サーバー費は月2,757円。売り手が挙げる伸びしろは広告予算の拡大とiOS/PC展開だった。

数字を突き合わせると費用構造も推定できる。収益25万円と利益20万円の差は月5万円。サーバー費が2,757円しかない以上、差額のほとんどは広告宣伝費で、日予算2,000円×30日=約6万円という出稿規模とほぼ整合する。つまりこのアプリの利益は「広告を焚き続けること」を前提にした利益であり、買い手は資産と同時に広告運用の継続義務を引き取っている。

倍率7.0ヶ月分を決めた変数

個人サイトの売却相場は月間利益の18〜24ヶ月分が目安とされる。それと比べて本件の7.0ヶ月分(対利益8.8ヶ月分)は半分以下だ。差を作った変数は掲載情報から3つ読み取れる。

ひとつは実績期間の短さ。最高売上がリリース4ヶ月目という記述から、この収益にはまだ「続く」という証明がない。18〜24ヶ月分の値が付く検索流入サイトは、複数年の収益履歴で持続性を示していることが多い。ふたつめは保守コストの所在。アプリはOSアップデート対応、広告SDKの更新、ストア規約変更への追随が買い手側に乗り、サイトの保守より重い。みっつめが前述の広告依存で、運用の手を止めれば収益が縮む構造は、放置でも検索流入が続くサイトより割り引かれる。倍率の差は理不尽ではなく、収益の壊れにくさへの評価差である。

横断比較 — 同時期のラッコM&A成約15件の中での位置

ジャンル(種別)成約価格月間収益倍率
都市伝説(YouTube)10万円1,644円60.8ヶ月分
ガチャガチャ(サイト)28万円1.4万円20.4ヶ月分
歴史解説(YouTube)71万円4万円17.7ヶ月分
まとめ系(YouTube)300万円27.7万円10.8ヶ月分
心理学・雑学(YouTube)480万円56万円8.6ヶ月分
RPGゲーム(アプリ)175万円25万円7.0ヶ月分
スピリチュアル(YouTube)120万円17.3万円6.9ヶ月分
海外の反応(YouTube)32万円5.8万円5.6ヶ月分
恋愛(YouTube)32万円6万円5.4ヶ月分
切り抜き(時事)(YouTube)40万円17.6万円2.3ヶ月分
シニア向け(YouTube)25万円12.7万円2.0ヶ月分
キャンプ情報(Instagram)30万円0円—
ダイエットレシピ(Instagram)6.5万円不明—
ファッション(Instagram)80万円不明—
宇宙科学(YouTube)5万円不明—

15件を並べると、市場の値付けロジックが浮かび上がる。検索流入型サイトは約20ヶ月分、YouTubeチャンネルは2〜18ヶ月分、収益ゼロのSNSアカウントはフォロワー基盤のみで値が付く。同じ「月間収益」でも、その収益がどれだけ壊れにくいか(アルゴリズム依存・規約リスク・属人性)への評価が、倍率の差として現れている。本件のアプリはこの分布の中央付近(高RPMのYouTubeチャンネルと同水準)に位置しており、「収益は大きいが履歴が浅く保守が重い」資産の落ち着きどころとして読める。

買い手と売り手の算盤

買い手側から見ると、175万円は月間収益が維持されれば7.0ヶ月、利益ベースでも約8.8ヶ月で回収できる計算になる。比較対象は「ゼロから同等のアプリを作って収益化する時間」で、企画・開発・ストア審査・広告運用の試行錯誤を買い取っていると考えれば、ROAS実績付きの運用ノウハウごと手に入る点に妙味がある。逆に、収益維持には広告運用の継続が必要で、買い手のスキル次第で回収期間は延びる。

売り手側は、運営を続けた場合の期待収益と即金の交換である。月20万円の利益が続くなら175万円は9ヶ月弱で追い付かれる額だが、モバイルゲームの収益曲線はリリース直後が最も高く、その後逓減するのが一般的だ。最高売上を出した直後、履歴が浅く見栄えの良いうちに売る判断には、資産価値のピークで現金化するという合理性がある。この価格帯(数万〜数百万円)は95万円・21日で売れた通信系サイトと同じく買い手需要が厚く、売主手数料無料のため出品を試すコストがほぼない。12日で成約という速度がその厚みを裏付けている。

この記録の限界

一覧掲載データのみで運営者への取材はなく、開発期間や累計投下時間は不明である。仮に開発に1年かかっていれば、175万円という対価の評価はまったく変わるが、それは判定できない。ROAS等の数値は売り手申告であり、掲載時点の収益がその後も維持された保証もない。ここに書けるのは「この条件の資産に、この価格が付き、12日で買い手が現れた」という取引事実までだ。

個人開発者から見た再現の条件

掲載データの範囲で言い切れるのは、収益化済みの小規模アプリに数十万〜数百万円の流動性が実在するという事実だ。「作って、育てて、売る」の出口が国内マーケットプレイスで機能しており、倍率を左右する変数(収益履歴の長さ、広告以外の収益(課金)の比率、運用の引き継ぎやすさ)は掲載情報から逆算できる。一方で、アプリという資産クラス自体がサイトより構造的に低倍率であることは動かない。月25万円という収益の絶対額が同じでも、それを載せる器によって値札が3倍変わる。これがこの一覧データの最も実務的な教訓である。

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。
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