事例 売却済み

Lea:LINE公式アカウントのEC化ツール、オンラインサロン経由で見つけた買い手に事業譲渡

LINE公式アカウント上にEC機能を提供する個人開発SaaS「Lea」は、2022年7月に株式会社INFLUへ事業譲渡された(額非公開)。買い手との出会いは有料オンラインサロン——「市場が流行っている場所に自分から入っていく」ことで譲渡先を見つけた、経路が珍しい記録。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

Lea:LINE公式アカウントのEC化ツール、オンラインサロン経由で見つけた買い手に事業譲渡

個人開発サービスの譲渡記録は増えたが、「どうやって買い手を見つけたか」を具体的に書いたものは少ない。LINE公式アカウント上にEC機能を提供するSaaS「Lea」の開発者は、プロダクトを磨いて買い手を待つのではなく、有料オンラインサロンに参加して買い手のいる経済圏へ自分から出向いた。しかもこの出口は思いつきではない。個人開発を始めた22歳の時点で「25歳までに事業譲渡する」と期限を切っていた——出口から逆算された個人開発の記録である。

事業の歩み

時期出来事
大学3年開発者、フリーランスエンジニアとして独立
22歳受託単価を上げる実績作りとして個人開発を開始。「3年以内(25歳まで)に事業譲渡」を目標に設定
—「LINE×〇〇」をテーマに、EC・テーブルオーダー・テイクアウト・会員サービスを並行開発
—LINE社からマーケットプレイス出店の依頼を受け、「気軽にEC『Lea』」として展開
2022年7月1日株式会社INFLUへ事業譲渡(額は非公開。本人は「売却額の半分はLEGO代に使う」とだけ)

出口が先、プロダクトが後

Leaの経緯でまず目を引くのは順序である。多くの個人開発者はプロダクトを作ってから出口を考えるが、この開発者は逆で、個人開発を始めた時点で「3年以内の事業譲渡」という期限付きの目標を置いていた。動機も明快で、フリーランスの受託単価を上げるための実績作りだ。実際、当初3,000円ちょいだった時給は、譲渡実績を得た後に数千円ほど上げられたと明かしている。個人開発が「ポートフォリオ兼、売却できる資産」として二重に働いた計算になる。

もう一つの特徴は、1本に賭けず面で張ったことだ。「LINE×〇〇」というテーマの下でEC・テーブルオーダー・テイクアウト・会員サービスを並行開発し、データベース設計を類似構成にして量産効率を上げた。生き残ったのはECのLeaだけである。テーマだけ固定して試行を並べる物量は相当で、2021年はGitHubのコントリビューションが埋まり、Findyの「コントリビューション・オブ・ザ・イヤー2021」で7位に入った。LeaはLINE社側からマーケットプレイス出店の依頼を受けており、プラットフォーム公式の販路にも乗っている。

買い手はサロンで見つけた

この譲渡の核心は経路にある。開発者はLINEマーケティングツール「Lステップ」が流行していることを確認すると、「Lステップを活用する企業なら、自社のLINEサービスを欲しがるはずだ」という仮説を立て、その実践者が集まる有料オンラインサロン(やまもとりゅうけん氏主催の「人生逃げ切りサロン」)に自分から参加した。サロンのオフラインイベントに顔を出して人脈を作り、そこで繋がったマーケティング会社が譲渡先の株式会社INFLUである。譲渡はその後の仕事にも繋がったという。

プロダクトを磨いて買い手が現れるのを待つのではなく、買い手がいそうな経済圏に足を運んで自分を見つけさせる。営業活動としての売却である。

譲渡後の数字が示すこと

譲渡額は非公開のままだが、規模の推移は手がかりになる。関連LINE公式アカウントの友だち総数は330万人から440万人超へ伸びた。譲渡後に伸びたという事実は、事業の天井が市場ではなく運営体制にあったことの証明でもある。

編集部の見立て

「売り先探し」はプロダクト開発と同じくらい能動的な仕事である。Zennのように公募で20社を集める勢いがないプロダクトでも、業界のコミュニティに入り込めば買い手候補と自然に出会える。数万円のサロン会費は、M&A仲介手数料と比べれば安い「出会いのコスト」だった。

LINEエコシステム内のツールという立地も効いた。BubbleのFlusk、ShopifyのOrder Taggerと同じく、伸びているプラットフォームの周辺ツールには「その経済圏で稼いでいる事業者」という買い手候補が最初から存在する。Fluskが本体に買われたのに対し、Leaは経済圏内の事業者に買われた。プラットフォーム周辺ツールの出口は、本体・周辺事業者・ロールアップの三方向に開いている。

「一人の限界」の中身は足し算だった

本人が挙げた反省は「個人開発の枠を超えられなかったこと」。その中身が具体的で、アイデアが次々湧いて機能とサービスの「足し算のオンパレード」になり、一人の能力範囲を超えてしまったのだという。個人開発の最大の武器は速度であり、速度を保つにはサービスの規模を個人に収める必要がある。規模が個人を超えたまま進めば、資金と組織力を持つ大企業に食われる。という総括である。

実際、友だち総数330万人という関連規模に対して、開発・サポート・営業を一人で回す構造は追いつかない。個人開発SaaSは、ユーザーが増えるほどサポートと信頼性の要求が上がり、開発時間が削られるというジレンマを抱える。一人の限界が譲渡理由になるのは、Extra PointsやZennと同じ、個人開発売却の最頻出パターンだ。

買い手から見れば、「市場は伸びているが売り手の体制が追いつかない」案件は、自社のリソースを注げば伸びることが最初から分かっている。投資判断がしやすい。自分の限界を事業の欠陥ではなく「買い手にとっての伸びしろ」として提示することが、個人開発売却の交渉の要諦である。

再現の条件

この事例から持ち出せる判断は3つある。ひとつ目は、出口の期限を先に切ること。「3年で譲渡」と決めれば、一人で回る規模に事業を収める設計圧力が最初から働く。買い手のいる経済圏へ自分から入ることも、その一つだ。国内では業界特化のサロンやコミュニティがその場として機能し、会費は仲介手数料より安い。そして、譲渡を単発の換金ではなく、その後の取引関係の入口として扱うこと。この開発者の時給が譲渡後に上がったのは、譲渡実績が受託営業の信用に転化したからだ。

再現しにくい条件もある。LINE社からマーケットプレイス出店を依頼されるような公式との接点や、友だち総数330万人という関連アカウント網の規模は、時期と立地に恵まれた結果であり、後追いで同じ位置は取りにくい。また譲渡額が非公開のため、この事例は相場情報としては使えない。個人開発売却の金額感はワラリー!のような開示事例で補う必要がある。

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出典

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