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私を甲子園に連れてって、公開11ヶ月で累計1,290万円。課金収益を10倍にしたのは100円の「失わないための券」だった

名古屋の個人開発者・古田悠氏の高校野球ゲームは、2017年11月の公開から2018年9月末までに累計1,290万円、最高月商は8月の257万円。4.8万DL・DAU約3,000で収益の76%が課金。月100万円を超えた転機は100円のドラフト指名チケットだった。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

私を甲子園に連れてって、公開11ヶ月で累計1,290万円。課金収益を10倍にしたのは100円の「失わないための券」だった

月商257万円は、月商を公開している掲載259件のうち上位47%。掲載全体の月商中央値は225万円です(データ集計)。

高校野球の監督になって甲子園を目指すスマホゲーム「私を甲子園に連れてって」は、2017年11月の公開から2018年9月末までの11ヶ月で累計1,290万円の収益を上げた。最高月商は2018年8月の257万円。この257万円は、当サイトで月商を公開しているモバイルアプリ19件の中央値25万円のちょうど10倍で、国内事例88件の中央値25万円と比べても同じく10倍の位置に立つ。作者は名古屋の個人開発者・古田悠氏(furuApplications)、野球ゲームとしてはシリーズ3作目にあたる。題材が甲子園だから当たった、と読みたくなる並びである。ところがアプリマーケティング研究所の取材で本人が課金収益の転機として挙げたのは、強い選手を引き当てる課金ではない。夏が終われば引退して消えていく3年生を、100円で手元に残せるようにした券だった。

引退をかけた3作目だった

時期出来事数字
2016年3月前作『草野球チームを作ろう!レジェンド』を公開2017年9月までに約4万DL・累計約300万円
2017年6月頃本作の制作を開始。3Dモデルを動かす表現へ移行制作期間は約6ヶ月
2017年11月『私を甲子園に連れてって』を公開直前の月商は約30万円
2018年8月甲子園シーズン月商257万円(最高月)
2018年9月末取材時点累計1,290万円・4.8万DL・DAU約3,000

古田氏は前作で月30万円を稼げるようになっていたが、結婚して子どももいる状況で「いつか苦しくなる」という危機感を持ち、3作目に「1年以内に月100万円を達成できなければアプリ開発を引退する」という条件を付けて臨んだ。本人ブログには、前作の売上では余裕がなく今作で前作以上の売上が必要だった、とある。

収益の内訳は課金76%・広告24%。ダウンロードは4.8万件でiOSが4割、Androidが6割。1ダウンロードあたりの収益は約260円、課金ユーザーの比率は5〜6%で、課金した人の1人あたり収益は約3,000円。つまり全体の20人に1人が3,000円を払い、残りの19人は広告を見るか、何も払わずに遊んでいる。本人は自身のブログで、無課金のままアンインストールする日まで遊んでもらって全く問題ない、と書いている。

売れたのは選手ではなく、選手が消える期限のほうだった

課金収益を跳ね上げたのは「ドラフト指名チケット」だと本人は語る。このゲームは高校野球を題材にしている以上、3年生は夏の大会が終われば引退して手元から消える。育てた選手を卒業後もOBチームに確実に登録できるようにしたのが、100円程度のこの券だった。導入後、課金収益は10倍になり、月数十万円だった売上が月100万円を超えた。古田氏の言葉では「心理的には手に入れるときより『失うときの動機』のほうが強いかもしれない」。

この数字はこう読む。券が売れたのは野球が好きな人が多いからではなく、このゲームが題材の側から時計を借りているからだ。高校野球には3年という上限が制度として組み込まれていて、プレイヤーが何をしようと選手は必ず消える。開発者が締め切りを設計したのではなく、題材が最初から締め切りを持っていた。古田氏は後続の開発者に向けて、野球や将棋やオセロのような定番ゲームに独自要素を足す作り方を勧めている。率直に言えば、効いたのは定番であることよりも、その定番が毎年人を入れ替える仕組みを内蔵していたことのほうだ。同じ理屈で、スカウトチケット(入学してくる選手の質を上げる)も入学の時期にしか意味を持たない。

8月だけが跳ねる収益カーブ

累計1,290万円を11ヶ月で割ると月平均は約117万円で、ピークの257万円は平均の2.2倍になる。前作でも売上が伸びたのは夏休みと甲子園の時期で、ピークは月40万円だった。売上の形を決めているのは施策より先に暦である。

集客側でも暦に合わせた手が打たれている。サブタイトルに「甲子園」というキーワードを入れたことで、それまで拾えていなかった検索で上位に出るようになった。どのキーワード設定が効いたかを記録して改善を続ける運用も取材で語られている。レビュー依頼は初めて試合に勝ったときだけ表示し、Google Playで2,500件のレビューを集めた。App Storeの掲載情報を見ると、2026年9月時点でも無料+アプリ内課金のまま配信が続き、評価は3.5万件で平均4.6、説明文には「運営はいません」「1人で開発しているので」と書かれている。

動画1本ぶんの体力と、バグ報告にダイヤ50個

広告側の打ち手も、ゲームの資源設計に噛み合わせてある。試合に勝ったあとに動画を見ると体力が回復する仕組みを入れたところ、1ダウンロードあたりの動画リワード広告収益は2倍になった。体力は練習すれば減る有限の資源で、しかも課金アイテムと真正面から競合しない。本人はバナー広告について、1クリック数十円でクリック率は1%程度という見方をブログに書いている。この単価の広告で収益の24%を作るには、視聴に理由を付けるしかない。

継続の側では、ユーザーの行動を観察して「試合に負けたとき」に圧倒的多数がアプリを閉じることを突き止め、敗戦後に練習効率が上がるボーナスを配るようにした。やめどきに次の理由を置く、という単純な対処である。開発初期には、アプリ内に「バグ報告するとお礼がもらえるかも」と書き、報告してくれた人にダイヤ約50個(50円相当)を渡していた。発生条件とスクリーンショット付きの報告が集まり、本人が「この人デバッガーなのか」と感じるほどだったという。50円で外部のテスターを雇った形になる。

前作は300万円、その前は貯金を削っていた

この1,290万円は、失敗を数えたあとの数字でもある。前作『草野球チームを作ろう!レジェンド』は2016年3月公開で、2017年9月時点の累計収益が約300万円(課金150万円・広告140万円)、ピーク月商40万円、サーバー費は月1,000円だった。1本目の草野球ゲームから数えて3本目でようやく月100万円である。独立直後の1〜2年は貯金を食いつぶし、初期の複数のアプリは失敗している。本作の制作に入る前にはテニスゲームを進捗50%で中止し、2017年にリリースした脱出ゲームは数万ダウンロードに届いたもののクリア後に遊び続ける理由が作れなかった。古田氏は当時をこう振り返る。「新しいこと始める時って、大きな池に小石を投げるくらい何も起きない」。

見えていない数字も多い。約6ヶ月の制作期間に自分の人件費をいくら乗せたか、広告出稿費、iOSとAndroidの売上内訳、2018年10月以降の推移は公開されていない。累計1,290万円は売上であって手取りではなく、ストアの手数料も引かれる前の数字である。数字の出所も本人の申告をアプリマーケティング研究所が取材した二次資料で、第三者の検証は入っていない。

どこまで持ち帰れるか

同じ「個人開発のスマホアプリ」の型では、TikTok経由の流入で月商250万円に届いたトーク分析アプリiStalk、3本を並行運営して月20万円になった個人開発、初リリースから5年で月5万円の広告収益に落ち着いたアプリを掲載している。本作の最高月257万円はこの並びの最上段にあたるが、それは年に1ヶ月だけの数字でもある。

  • 「失うことへの課金」が成立するのは、遊びの中に期限が最初から組み込まれていて、期限を越えて残す行為がゲームの進行を壊さないときだけ
  • 8月に平均の2倍が立つのは、題材の側に毎年同じ月が来る行事があり、その行事名をストアの検索対象にできるときだけ
  • 動画広告で収益が倍になるのは、広告の報酬が体力のような有限の資源で、しかも課金アイテムの売上を食わないときだけ

限界も書いておく。この数字は「1年で月100万円に届かなければ引退する」という条件を自分に課した人が、前作のユーザーとシステムを引き継いで作った3作目のものだ。前作のデザインを名古屋の美術大学の学園祭で見つけた学生に外注できた、という地の利も効いている。加えて2018年は個人開発のアプリがまだ広告とストア検索で伸びた時期で、当サイトが掲載している8年でアプリ10本、月3万円まで落ちた広告収益の記録のように、同じ売り方の効きは年によって大きく違う。

出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 「報道」は他メディアが取材・整理した記事で、数字はその報道時点のものです。 詳細は必ず出典をご確認ください。
この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →

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