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8年でアプリ10本、月3万円。ピークは2021年——個人開発の広告収益が下り坂に入った理由

メーカー勤務の50代エンジニアが8年でiOS8本・Android2本を公開。ASOを回して2021年まで右肩上がり、ピークは月5万円近く。新規開発を止めた2022年以降は下降し、現在は月3万円前後で推移している。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

8年でアプリ10本、月3万円。ピークは2021年——個人開発の広告収益が下り坂に入った理由

月商3万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から6%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

個人開発の収益記事は、たいてい上り坂の途中で書かれる。この事例が珍しいのは、8年ぶんの推移を「ピークを過ぎたあと」から振り返っている点である。noteに公開された「スマホアプリ個人開発の現実。ダウンロード数と広告収益の推移を公開」(こたろー氏、2026年3月14日)は、メーカーで働く50代エンジニアが、iOSアプリ8本・Androidアプリ2本を運営して到達した月5万円弱と、そこから月3万円前後まで落ちた過程を記録している。全文が無料で公開されており、有料部分はない。

8年の輪郭

時期・項目内容
開始約8年前。「自分が欲しい・使いたいと思うアプリを自分で作ってみたくなり」
公開本数iOS 8本、Android 2本(いずれもツール系)
最初の数ヶ月ダウンロード数は「数十程度」
初回入金AdMobは8,000円以上で振込。最初の振込は開始から約半年後
〜2021年アプリを増やしつつASOを継続。DL数・収益とも右肩上がり
ピーク月に5万円近く
2022年〜新規開発が止まり、最低限のメンテナンスのみ。DL数・収益とも右肩下がり
現在3万円前後
作業時間当初は平日夜・週末に1日数時間 → 現在は「ほぼ0」

金額はすべて広告収益である。収益モデルはGoogle AdMobのみで、バナー・インタースティシャル・リワードの3種類を使い分けている。技術面では、最初はSwiftでiOSを書いていたが、Android対応の必要が出てからFlutterに移行している。

ここから計算できることがひとつある。AdMobは累計8,000円を超えないと振り込まれない。最初の入金が約半年後だったということは、初期の平均月商はおよそ1,300円台だったことになる。10本体制で月3万円という現在の水準は、1本あたり月3,000円。ピーク時でも1本あたり月5,000円弱である。8年かけて到達した数字の解像度としては、この「1本あたり」の視点が実態に近い。

転機は2つある。どちらも派手ではない

上りの転機は、アプリを1本ずつ増やしながらASOを回し続けたことだ。著者は「ASO(アプリストアの検索キーワード、説明文章、スクリーンショットなど)も頑張って」と書き、その結果2021年まで右肩上がりだったと振り返っている。単発のヒットで跳ねたのではなく、本数×検索最適化の掛け算がじわじわ効いた形である。数十ダウンロードから始まった最初のアプリが、8年後に月3万円の一角になっている。

下りの転機のほうが、この記事では明確だ。2022年である。本人の言葉では「2022年以降は伸び悩み、モチベーションも少しづつ下がってきて」、そこから「新規アプリの開発もなく、最低限のメンテナンスのみ」に移行した。前後の数字を並べると、ピークの月5万円近くから現在の月3万円前後へ。おおよそ4割減である。作業時間は1日数時間からほぼゼロに変わっている。

つまりこの事例の転機は、何かを始めた瞬間ではなく、手を止めた瞬間だった。著者自身がその因果を認めている。「継続しないとほんとに下がっていくんだな、と改めて感じました」。8年の推移グラフを自分で描き直して出てきた結論がこれだった、という順序である。

落ち方の中身を分解する

ここで見落としたくないのは、収益の落ち方がダウンロード数の落ち方より緩い、という著者の指摘だ。理由として挙げられているのは既存ユーザーの継続利用である。この一点に、広告モデルのアプリがどういう資産なのかが表れている。

ダウンロード数は「新規の流入」の指標であり、ASOをやめれば検索順位が競合に押されて素直に下がる。一方で広告収益は「今インストールされている端末で、今日どれだけ起動されたか」で決まる。つまりストックが効く。手を止めても即座にゼロにはならず、既存ユーザーの離脱ペースに沿ってゆっくり削れていく。著者が作業時間ほぼゼロで月3万円を受け取れているのは、この時間差のおかげだ。

ただし同じ構造は逆向きにも働く。ストックが効くということは、いま手を動かしても収益への反映が遅いということでもある。新規流入が止まった状態では、既存ユーザーは端末の買い替え、OSの更新、より新しい競合への乗り換えで少しずつ減る。減り方が緩やかだからこそ、止めたことの代償が数字に出るまでに時間がかかり、気づいたときには何年ぶんか失われている。2021年をピークに2026年まで下がり続けている、というのはそういう曲線である。

割に合わなかった部分

著者は良かったことと苦労したことの両方を書いている。良かった側は「一度公開すれば不労所得に近い感覚で収益を得られる」ことと、自分が欲しかったものが他人に使われる手応え。加えて、転職活動で個人開発の実績が「大きな武器になりました」と評価された点を挙げている。行動力が評価された、という書き方である。8年ぶんの副次的な回収として、これは月3万円より大きい可能性がある。

苦労した側は、まず初速の遅さだ。最初のアプリは数ヶ月ダウンロード数が数十程度で、AdMobの8,000円ラインに届くまで半年かかっている。この期間の時給はほぼゼロに近い。次に、公開後も消えない負担がある。毎年のOSアップデート対応、ユーザーからの厳しいレビュー、バグへの対応。そしてストア審査については「その時によって緩かったり厳しかったり」と、運の要素があることも書き添えられている。

「不労所得に近い」と「毎年のOS対応が要る」は矛盾するように見えるが、実際にはどちらも正しい。放置していても収益は出る。ただし放置期間の長さに比例して、いつか一度は強制的に手を入れさせられる。10本体制ということは、その強制イベントが10本ぶん降ってくるということでもある。本数を増やす戦略は、収益の分母を増やすと同時に、メンテナンスの下限コストも増やしていた。

何が再現でき、何ができないか

再現しやすいのは戦い方の型そのものだ。ツール系という手離れのよいジャンルを選び、1本ずつ増やし、ASOで検索流入を取り、AdMobで薄く広く回収する。著者が勧めているのも同じ方向で、「スモールスタートが大事です」「簡単なアプリで良いので、世の中にあるアプリを真似して少し変えただけでも良い」「まずはリリースしてみて下さい」と、完成度より公開回数を優先すべきだと書いている。最初からこだわって機能を盛ると、リリース前に諦める——という失敗の形も明示されている。

再現しにくい条件も正直に見ておきたい。ひとつは時期である。この人が伸ばした2017年前後から2021年は、個人開発アプリがASOで検索面を取りやすかった時期にあたる。同じ努力を今かけて同じ角度で伸びる保証はない。もうひとつは本業との関係だ。メーカー勤務のエンジニアであり、平日夜と週末に数時間を注ぎ込めた。月3万円という水準は、本業の給与があるからこそ8年続けられた金額でもある。これを主収入にする前提で読むと判断を誤る。

最後に、著者は非エンジニアの参入余地にも触れている。「最近は、AIでコードを書いてアプリ開発してリリースしている非エンジニアの方もいるようなので」。これは追い風のようでいて、供給が増えればASOの競争も激しくなるという意味でもある。8年前と同じ入口が、同じ広さで開いているわけではない。

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

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