海外事例 運営中

Trends.vc、累計収益$15から1年で月商$24,000。変えたのはペイウォールの引き方だった

Dru Riley氏のTrends.vcは、2020年3月時点の全期間累計収益が寄付1件の$15。そこから同年8月に月商$24,000、10月に$38,000へ。効いたのは「隔号を有料」から「毎号の後半を有料」へペイウォールを引き直した一手だった。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

Trends.vc、累計収益$15から1年で月商$24,000。変えたのはペイウォールの引き方だった

月商360万円は、月商を公開している掲載227件のうち上位40%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

Trends.vcは、Dru Riley氏が一人で書く市場トレンドのレポートである。1本のレポートを Problem / Solution / Players / Predictions / Opportunities / Haters / Links という固定フォーマットに収め、毎週配信する。第1号のテーマはクラウドキッチンだった。1本あたり50時間以上のリサーチ・取材・執筆が投じられているとされる。

この事業の面白さは、成功後の規模ではなく、直前までの数字の低さにある。2020年3月の時点で、全期間の累計収益は寄付1件の**$15だった。立ち上げ期には売上ゼロの月が続いている。そこから同年8月には月商$24,000**に達した。

数字の推移

時期出来事数字
2017年会社を辞める。貯金**$250,000**を持って「ミニ・リタイア」に入る収益なし
2017〜2020年約3年の助走期間。終盤にレポートの構想が生まれる収益なし
2020年3月全期間の累計収益は寄付1件のみ$15
立ち上げ初期売上ゼロの月が続く$0
2020年6月22日有料版 Trends Pro の購読者が100人を突破100人
2020年8月Product Hunt で1位(Product of the Month)、Pro を年**$149**へ購読者7,000人→25,000人
2020年8月月商のピーク$24,000
2020年10月さらに伸びる月商**$38,000**
2020年9月Indie Hackers のポッドキャストに出演。購読者を開示35,000人超
現在Pro は年$299、上位プランは年$699、スポンサーは1本$1,500年商**$500,000超**/購読者60,000人

決定打はペイウォールの引き直しだった

有料化にあたって、Riley氏は最初「レポートを1号おきに有料にする」という方式を試している。これは機能しなかった。無料購読者から見れば、有料号は「今週は読めない週」でしかなく、購読を検討する材料が手元に残らないからである。

これを「毎号の後半を有料にする」方式へ変えたところ、購読が動き出した。1本のレポートを最後まで読ませず、Problem や Players までは無料で読ませて、Predictions や Opportunities といった「結論に近い部分」を有料側に置く。読者は毎週、自分が支払うことで何が手に入るかを、実物で確認させられる状態に置かれる。

同じ配信量・同じ執筆コスト・同じ価格のまま、ペイウォールの位置だけを変えた変更である。事業の入力は一切増えていない。にもかかわらず出力が変わったという意味で、この事例で最も再現価値の高い一手はここだと言っていい。

増幅装置としてのProduct HuntとX

2020年8月のProduct Huntローンチは、月間1位(Product of the Month)を獲得した。この前後で購読者は約7,000人から25,000人へ、1回で18,000人以上増えている。Xでも1週間で2,000人の購読者を獲得した回がある。Riley氏はスレッド投稿を「過小評価されている」流通手段と表現し、レポート内で言及した企業や人物をタグ付けする形で拡散を作っている。

ただし順序が重要である。Product Huntに出したのは「初日」ではなく、レポートを150本近く出した後だった。本人は「成熟した状態でローンチする」と表現している。1号目の状態で18,000人が流れ込んでも、見せる在庫がなければ有料転換は起きない。ペイウォールの設計が先にあり、その上で流入を一気に増やしたから月商が跳ねた、という順番になっている。

価格は後から上げている

もう一つ見落とされやすいのが、値付けを固定していない点である。2020年8月にProduct Huntで露出を得たタイミングで、Trends Pro の価格は年**$149へ引き上げられた。安い価格で会員を集めてから、需要が確認できた瞬間に上げるという順序である。現在は年$299が標準プラン、上位の Trends Pro Full が年$699**、上位10本のレポートだけをまとめたバンドルが$30弱、さらに2022年2月からはスポンサー枠(1本$1,500)が加わっている。

購読者数と価格が同時に伸びたことで、年商$500,000超という水準に届いた。仮に会員1,500人×年$299なら約$448,500で、ここにスポンサー収入が乗る計算になる。会員数は3年以上「1,000人超」の水準で推移しており、規模の拡大よりも単価の引き上げと商品の階層化で伸ばした構造だと読める。購読者60,000人に対して有料が1,500人前後なら転換率は2〜3%であり、決して高転換で押し切ったわけではない。

効かなかったこと、払った代償

  • メール収集の開始が遅れた。レポートを4〜5本出してからメールアドレスの取得を始めており、初期の読者の一部は取り逃がしている。
  • 最初は個人サイトで公開していた。後に独立ドメインへ移し、ブランドとして識別できる形に変えた。
  • 3年間、収益ゼロで貯金を取り崩した。$250,000という原資があったからこそ、この助走期間が「準備」で済んでいる。

そして忘れやすいのが単位コストである。1本50時間以上という制作負荷は、購読者が100人でも35,000人でも変わらない。購読者が少ない期間、この事業は時給換算でほぼ無給だった。ペイウォールの引き直しが効いたのは、その負荷にすでに耐えていたからでもある。

持ち帰れるもの、持ち帰れないもの

持ち帰れるのは3点。1つ目は、無料と有料を「号単位」ではなく「1本の中」で割ること。2つ目は、フォーマットを固定して毎回同じ形で出すこと、読者が「Opportunities の節が有料側にある」と学習できるのは、構成が毎回同じだからである。3つ目は、ローンチ施策を在庫が積み上がってから撃つこと。

持ち帰れないのは前提のほうだ。貯金$250,000で3年間の無収入期間を買えるかどうかは、事業設計ではなく個人の資産状況の問題である。また、2020年8月のProduct Huntで月間1位という結果は、当時のタイミングと競合状況に依存しており、再現を前提に計画に組み込める性質のものではない。

その意味で、この事例から取るべきは「ローンチで爆発させる」という話ではなく、爆発したときに換金できる構造(毎号後半の有料化)を先に用意しておくという順序のほうである。月商$24,000という数字は、流入の大きさではなく、流入を受け止める設計の産物として読むのが正しい。

あわせて読みたい

出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →

近い規模・近い業種の事例

この記事が参考になったら、シェアで応援
Xでシェア