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室内トランクルーム23室、満室で月6.5万円。静岡の物件で個人が公開した損益分岐点50%の中身

人事歴15年の会社員が2023年に始めた静岡県清水市の室内トランクルーム(16.6坪・23室)。満室時売上153,300円から管理料・電気代・家賃を引いた手残りは65,305円で、損益分岐点は稼働率50%。契約は月0〜2件しか積み上がらない。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

室内トランクルーム23室、満室で月6.5万円。静岡の物件で個人が公開した損益分岐点50%の中身

金額はすべて出典に記載された税込・実額である。本稿で計算した箇所は、そのつど「試算」と明記した。

「満室でいくら」だけを先に見る

副業や小規模投資の情報は、たいてい良い数字だけが切り出される。「利回り○%」「不労所得」という言葉は出てくるが、家賃も電気代も管理手数料も引く前の数字であることが多い。

その点で、人事歴15年の会社員である「ぐんし」氏が2025年1月に公開したnoteは扱いが違う。2023年から始めた室内トランクルーム投資について、静岡県清水市の物件1件の収支を、売上から支出まで項目ごとに並べている。しかも冒頭で「初年度は赤字覚悟」と自分から書いている。

まず、公開されている数字をそのまま置く。

項目金額(月)
満室時売上153,300円(税込)
管理料(売上の15%)−22,995円
電気代−約5,000円
家賃−60,000円
手残り65,305円

物件は総床面積16.6坪、区画数は23室。満室時売上153,300円を23で割ると、1室あたりの月額は約6,665円になる(本サイト試算)。ワンルームの家賃を1本借りて、それを23個の小箱に割って貸し直している、と言い換えてもいい。

初期投資額は約450万〜600万円程度で、自己資金での開業が基本、と本人は書いている。

支出の形が、この事業の性格を決めている

この収支表で注目すべきは金額の大きさではなく、支出の「形」だ。

固定費は家賃60,000円と電気代約5,000円の計65,000円。一方、管理料は売上の15%という変動費である。つまり、稼働率がゼロでも出ていく金額は月65,000円で頭打ちになる。

ここから損益分岐点を検算してみる。稼働率をxとすると、売上は153,300x、支出は0.15×153,300x+65,000。手残りがゼロになる点は、

0.85 × 153,300x = 65,000 → x ≒ 49.9%

本人が書いている「稼働率50%程度から収益が生まれる」という記述と一致する(本サイト試算)。23室のうち約12室が埋まれば、そこから先は1室ごとに約5,665円ずつ手残りが増えていく計算になる。

固定費の絶対額が小さく、変動費が売上連動である事業は、最悪ケースの損失額があらかじめ確定している。この物件で起こりうる最大の月次赤字は65,000円。本業を持つ個人が、生活を壊さずに何年でも待てる金額かどうか——判断材料がその一点に絞られている。

転機は「まだ来ていない」ことが公開されている

この事例に劇的な転機はない。むしろ本稿が価値を認めるのは、転機がまだ訪れていない状態のまま数字を出していることのほうだ。

本人はデメリットとして、契約件数が毎月0〜2件程度であり、満室になるまでに1年以上かかると書いている。これを積み上げると、月1件ペースなら23室が埋まるまで23か月、月2件ペースでも約12か月。本人の「1年以上」という体感は、契約ペースの数字と整合する(本サイト試算)。

したがって、この投資における転機は「稼働率が50%を超える日」であり、それは開業から早くて1年、遅ければ2年近く先にある。その日まで、毎月65,000円前後の固定費だけが確実に出ていく。

言い換えれば、この事業で決定的なのは開業後の運用努力ではない。開業前に、1年以上の赤字を黙って払い続けられる資金計画を組めたかどうかである。本人が「初年度は赤字覚悟、2年目以降に黒字化を目標に余剰資金を確保」と繰り返し書いているのは、そこが唯一の分岐点だからだと読める。

効いている構造 — 現地に行かない設計

では、この人はなぜ本業(大手企業の人事室責任者、毎年50名の新卒採用)を続けながらこれを回せているのか。

理由は運の良さではなく、設計にある。本人は「個人での運営は手間とコストがかかるため、管理運営利益型の会社を選ぶ」と書き、運営会社の選定基準として、個人投資家を相手にしているか、実績が多いか、インターネット集客力があるか、クレーム対応の範囲はどこまでか、管理手数料は妥当か、賃料設定は適正か、を挙げている。

そして「物件購入後も現地に赴く必要がなく、遠隔地での所有が可能」とも書いている。住まいから離れた静岡県清水市の物件を選べているのは、この前提があるからだ。

構造として整理すると、こうなる。

  • 集客(WEB広告・掲載)を自分でやらない → 15%の管理料に外部化
  • 清掃・入退去対応を自分でやらない → 同じく管理料に含まれる
  • 内見・現地対応を自分でやらない → 遠隔所有が成立する

つまり15%という手数料は、収益を削るコストであると同時に、本業の可処分時間をゼロに近づけるための対価である。稼働率が低い期間、この15%は絶対額としてはごく小さい(満室でも22,995円)。稼働が上がるまで赤字が続く事業では、固定額ではなく売上連動で外注できることそのものが効いている。

一方、この設計は運営会社への依存と裏表でもある。集客力・賃料設定・クレーム対応をすべて委ねている以上、稼働率が上がらなかったときに打てる手は「運営会社を替える」以外にほとんど残らない。本人が運営会社選びを繰り返し強調するのは、そこが唯一の裁量だからだろう。

回収年数を計算すると、話は途端に地味になる

需要側の追い風は本人も列挙している。マンションの専有面積は70㎡台の供給比率が減り50㎡台・60㎡台が増えていること、2012年を100とすると着工戸数85.3%・延べ床面積70.5%・敷地面積66.0%まで縮小していること、東京都のテレワーク普及率が約3割・全国平均でも約15%であること、2021年10月時点でトランクルームの認知率は約81%だが利用率は約5%にとどまること。

ただし、追い風があることと、この物件が投資として報われることは別の話である。初期投資450万〜600万円に対して回収年数を試算すると次のようになる。

前提稼働率月の手残り年間450万円の回収600万円の回収
100%(満室)65,305円約78.4万円約5.7年約7.7年
70%約26,213円約31.5万円約14.3年約19.1年

(いずれも本サイト試算。70%時は売上107,310円−管理料16,097円−固定費65,000円で算出)

本人は「6〜7割の区画が埋まると黒字化」と書いているが、その水準で止まった場合の回収は14年から19年かかる。満室を長期に維持できて初めて、5〜7年という不動産投資らしい数字になる。これは失敗の話ではなく、期待値の置き方の話だ。稼働率が数ポイント動くだけで回収年数が倍以上ぶれる。それがこの事業の本質的な性格である。

なお、note記事は一部有料(残り2,243字)で、本稿が扱ったのは無料公開部分の数字に限られる。稼働率の実測推移など、有料部分にしか無い情報は本稿では確認していない。

どこまで真似できるか

真似できる部分は、意外に少なくない。

  • 収支の型:固定費(家賃+電気)と変動費(管理料%)を分けて損益分岐点を出す作業は、店舗でもコインランドリーでも同じようにできる
  • 外注比率の設計:自分の時間を1分でも使うなら副業として続かない、と割り切って手数料を払う判断
  • 赤字期間を先に見積もる:契約ペース(月0〜2件)から満室までの月数を逆算し、その間の固定費総額を先に用意しておく

一方、真似できない・真似すべきでない条件もはっきりしている。

第一に、450万〜600万円の自己資金を「1年以上寝かせても生活に響かない」形で用意できること。本人の本業は大手企業の人事室責任者であり、この資金体力は誰にでもある前提ではない。

第二に、条件を満たす運営会社が自分の対象エリアに存在すること。この事例の設計は運営会社の集客力に全面的に乗っている。地方の物件を遠隔で持てるのも、そこを任せられる会社がいるからだ。

第三に、需要側の数字(狭小化、テレワーク、認知率81%対利用率5%)は市場全体の話であって、静岡県清水市の16.6坪に23人の借り手がいることの保証ではない。市場が伸びていることと、自分の区画が埋まることは別々に検証しなければならない。

小さく始めて時間で回収する、という副業の型としては素直な事例である。ただし「小さく」なのは月々の赤字幅であって、入口の450万〜600万円ではない。

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

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