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フォロワー301人でLINEスタンプ月10万円 — 年12万円から一転させた「10種リリース」

スタンプ作家マツモトユキエ氏は2016年3月の初リリースから7年後の2023年1月に月10万円を達成。Twitterフォロワー301人・Instagram404人。転機はリリースゼロで年収約12万円だった2021年から一転、2022年に10種を集中投入したことだった。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

フォロワー301人でLINEスタンプ月10万円 — 年12万円から一転させた「10種リリース」

月商10万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から13%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

LINEスタンプで稼ぐには相応のフォロワーが必要だ、という説明はよく見かける。「広島弁のマルちゃん」シリーズを手がけるマツモトユキエ氏の記録は、その通説に正面から反論している。月10万円を達成した時点でのフォロワー数は、Twitterが301人、Instagramが404人である。

同時にこの事例は、7年という時間の記録でもある。2016年3月の初リリースから月10万円到達までに7年を要しており、途中には「うっかりブラック企業に入社してしまったりして全然リリースできなかった時期もある」と本人が書いている。

7年の推移

時期出来事収入
2016年3月初めてのLINEスタンプをリリース
(中略の期間)就業環境の都合でリリースが止まる時期あり
2021年リリースを1本も出さず年間約12万円
2022年1年間で10種をリリース(記事に年額の記載なし)
2023年1月月10万円を達成月10万円
2023年(目標)月3種のリリース

累計のリリース作品数は27件。本人は他の作家と比較して「ナガノさん…73件 いしいともこさん…672件 紅おれんじさん…223件」と挙げた上で、「私はまだ27件なので、全然ひよっこですね」と書いている。累計販売数は「これまでに5万セットくらいは売ってきたはずですが」という水準である。

単価から見た規模感

記事には単価の内訳も示されている。「LINEスタンプは120円で販売してクリエイターの取り分が31円程度」。取り分は販売額の約26%にあたる。

この31円で7年累計の5万セットを掛けると、約155万円になる。7年=84か月で割れば、平均は月あたり1万8,000円台にすぎない。達成月の10万円は、この平均の5倍以上ということになる。

ただしここには留保が必要である。10万円という金額が単品販売の分配だけなのか、送信回数に応じて支払われるLINEスタンプ プレミアム分を含むのかは、記事から一意に定まらない。31円換算で単純に割れば月3,200セット相当となり、7年累計5万セットの6%強が1か月に集中したことになる。数字の性質上、プレミアム分が含まれている可能性は否定できない。内訳が開示されていない点は、この記録の限界として押さえておきたい。

転機は2022年の集中投入である

この事例の転機は明快で、本人も因果を明示している。

2021年は1本もリリースしなかった年で、収入は年間約12万円だった。翌2022年、「LINEスタンプと真面目に向き合ってみよう!」と決めて1年間で10種を投入した。その結果として、2023年1月に月10万円が出ている。年間12万円だった収入が、単月で10万円に届く水準まで動いた。before/afterがこれほど単純な事例は珍しい。

つまり変数はほぼ一つ、リリース本数である。絵柄も価格も配信先も変えていない。出す本数だけを0から10に変えた。

リリースが売上を動かす仕組み

なぜ本数がここまで効くのか。本人の説明から、LINEというプラットフォームの挙動が見えてくる。

新作をリリースすると、LINE側が二つの配信を行う。ひとつは過去に自分のスタンプを買った人への新作リリース通知、もうひとつは絵柄が好みそうなユーザーに向けたトーク画面の広告枠での表示である。通知は「リリースしてから大体2、3日後に配信されているようで、急にババッと売れていくようになりました」という体感で、明確なタイミングを持っている。

重要なのはその先である。本人はこう書いている。新しいスタンプを見つけて気に入った人が、過去の作品もチェックしていくつか購入してくれる、と。

ここで起きているのは、新作の販売ではなくカタログ全体への集客である。1本のリリースは、それ自体の売上を作る以上に、既存27作品の棚を再露出させるトリガーとして機能している。在庫が27作品ある状態で通知を1回撃つのと、在庫が3作品の状態で撃つのでは、1回の通知から回収できる金額が違う。2021年の年間12万円は、この集客イベントを一度も起こさなかった年のベースラインだったと読める。

そしてこの配信主体はLINEであり、作家のSNSではない。だからフォロワー301人でも成立する。フォロワー数と販売数の関係について、本人は「スタンプの販売数に比例しているとは言えず、ほとんどフォロワー獲得に繋がっていません」と述べている。

点火に使った手段

配信の主体がLINEだとしても、最初の購入者ゼロの状態では通知先が存在しない。この初期の点火に使われたのが、友人への配布である。

「リリースしたスタンプは利用してくれそうな友人に配りまくっていました」。動機は本人の購買行動に基づいている。「私がスタンプを購入するとき、友人から送られてきたスタンプからストアに飛んで買うことが多い」。さらにグループLINEで使ってもらえば、一度の配布で複数人にリーチできる。

配布先の選定には、制作段階でのペルソナ設定が対応している。「どのような人がどんな場面で使うのか、をよく考えて作る」。具体例として、ビキニフィットネスを目指して筋トレに夢中な友人に向けたスタンプ、岡山出身・岡山在住の友人に使ってほしくて作った岡山弁スタンプが挙げられている。ペルソナが思いつかない場合は「『自分』がペルソナでも良いと思います」とも書いている。「広島弁のマルちゃん」自体、本人が使いたいスタンプという発想から出ている。

方言スタンプという選択は、この構造と噛み合っている。使う場面と使う人が最初から限定されるため、誰に配れば実際に使われるかが自明になる。汎用のかわいいスタンプでは、この逆算ができない。

限界と、真似できる範囲

月10万円は2023年1月という単月の数字であり、継続性は示されていない。取り分が販売額の26%という薄さも構造的な制約で、金額を伸ばすには販売セット数を積む以外の手段がない。2023年の目標として掲げられた月3種というペースは、年間36種、これまでの累計27件を1年で超える負荷である。ブラック企業勤務でリリースが止まった過去がある以上、この稼働前提の脆さは無視できない。

真似できるのは、リリース頻度を意図的に上げることと、配布先が想像できる粒度までペルソナを絞ることである。どちらも費用はかからない。

真似しにくいのは、7年かけて積んだ27作品という在庫の存在である。リリース通知が効くのは再露出させる棚があるからで、在庫のない段階で頻度を上げても、1回の通知から回収できる額は小さい。この事例は「頻度が効く」話であると同時に、「頻度が効くには在庫が先に要る」話でもある。加えて、広島弁という自分の出自に紐づいた題材と、通知・レコメンドというLINE側の仕様に依存している点も、作家が制御できない前提として残る。

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出典

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