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Traffic Think Tank、副業6年のSEOコミュニティが$1.8Mで売却。代金の4割は18か月の後払いだった

SEOの有料コミュニティTraffic Think Tankは、創業者3人が本業を持ったまま約6年運営し、2023年2月に上場企業Semrushへ$1.8Mで売却された。買い手の10-Qによれば、うち$360Kずつが12か月後と18か月後の後払いで、クロージング時に払われたのは6割だった。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

Traffic Think Tank、副業6年のSEOコミュニティが$1.8Mで売却。代金の4割は18か月の後払いだった

2023年2月、SEO担当者向けの有料コミュニティTraffic Think Tankが、マーケティングツールの上場企業Semrushに売られた。売却額は$1.8M。創業者は価格を語っておらず、数字が出てくるのは買い手が米国証券取引委員会に出した四半期報告書(10-Q)のほうだ。そこには内訳まで書いてある。$360Kは12か月後、もう$360Kは18か月後に払う。クロージングの時点で動いたのは$1.08M、総額の6割だった。

運営していたのは共同創業者の3人で、約6年のあいだ全員が本業を持ったままだった。共同創業者のMatthew Howells-Barby氏が書いたエッセイの題は「How We Sold Our Side Hustle to a Public Company」、副業を上場企業に売った話である。

副業で作った事業が上場企業に買われた、という一文だけを読むと、伸び続けた末の売却が浮かぶ。実際の数字は、逆向きの話をしている。2019年末の時点でARRは$1M弱。売却時の年商も、外部の整理ではおよそ$1Mだった。売られたのは、3年ほど桁の動いていなかった事業である。

15人の非公開グループから、上場企業の10-Qまで

時期出来事出典にある数字
2014年Howells-Barby氏が、SEOの手法を共有する非公開のFacebookグループに招かれる約15人(最大でも30人)
2017年半ばNick Eubanks氏がコンサル顧客を有料のSlackに集めていた場に、2人が合流顧客約10人
2017年11月ベータとして開始月$99・定員100、1週間未満で満員
約1年後会員が増える約350人
2019年末初の対面イベント150枚完売、ARR $1M弱
2020年複数の大手から買収の打診ほぼ断る
2021年末伸ばしに行くか、売りに行くかの判断記載なし
2022年8月Semrushと意向表明書(LOI)に署名最初の会話から約2か月
2023年2月クロージング総額$1.8M(うち$720Kは後払い)

会員の上限は、Search Engine Journalのインタビューでは1,000人とされている。They Got Acquiredの整理では有料会員は約750人で、上限は最後まで埋まっていない。

最初の100人を1週間で埋めたのは、月$99という摩擦だった

始め方は慎重だった。定員を100人に絞り、3か月で需要が確かめられなければ畳む前提で、最初から月$99を取った。無料にしなかった理由をHowells-Barby氏は、スパムを減らし、入るのに一段の手間をかけさせるためだったと書いている。成長を遅くすると分かっていて付けた値段である。告知は3人の個人的なメールリストとSNSで、100人は1週間かからずに埋まった。

その後の集客もほぼ広告を使っていない。新規会員の約95%が口コミだったという。会員向けの講座で有料の宣伝枠を売る話も、ツールを紹介してアフィリエイト収入を取る話も断っている。SEOの業界でツールの紹介料は手近な収入源だが、それを取れば中立性が崩れるという判断で、会員のNPSもそれを支持していたと氏は書く。代わりに置いたのは、ベンダーから会員向けの割引を無償で集める特典欄だった。

この組み立ては断定してよい。このコミュニティが売っていたのは情報ではなく、紹介料の匂いがしない場所である。Semrushの10-Qが取得の目的を「ブランドとコンテンツ」と書いているのは、その場所に付いた名前を買ったと読むのが自然だ。

2019年末にARR $1M弱、売るときもおよそ$1Mだった

弱いところも同じ記録に残っている。2019年末、初の対面イベントで150枚を売り切った年にARRは$1M弱に届き、NPSは過去最高だった。そこから2023年2月の売却まで、桁は動いていない。年商約$1Mという外部の整理と、売却額が年商の1.8倍という計算は、どちらもその横ばいを前提にしている。

2020年には複数の大手から打診があり、3人はほとんどを断った。まだ伸びる道が見えていた、というのが氏の説明である。ところが2021年末には、人を雇い、場合によっては買収もして伸ばしに行くか、売るかを決めるしかなくなっていた。中間に留まれば停滞か衰退だ、と氏は書いている。Search Engine Journalには、追加のパートナーを迎えることを考える必要があった、とも語っている。

3人とも本業を持ったままの体制では、やりたいことの一覧を片付けきれなかった。Search Engine Journalのインタビューで挙がったSemrush側の投資先(新しい企画、コンテンツの制作力、対面イベント)は、その一覧とほぼ重なる。編集部はこの売却を、成功の頂点で売った話ではなく、副業という体制の上限に3人が先に着いた話として読む。

売れる状態にするまでに2年かかった

2020年から2021年にかけて、3人は売るための準備を進めている。無料・有料を問わず全コンテンツの契約を整え、利用規約をGDPRに合わせて書き直し、経費の記録を付け直し、創業者間の持分の取り決めを更新した。資産の名義も洗い直した。サイトのドメインは、共同創業者のIan Howells氏の個人のGoDaddyアカウントに置かれたままだった。

氏はこの準備を、会社の歴史でおそらく最も重要な時期の1つだったと書き、教訓として「整っていない事業ほど売りにくい」と残している。副業で始めた事業は、始めたときの手軽さがそのまま後から負債になる。ドメインが誰の名義かという1行が、上場企業の法務を通るかどうかに直結していた。

LOIからクロージングまでは約6か月。氏はデューデリジェンスを長く苦しいものだったと振り返る一方で、Semrushは辛抱強かったとも書いている。

$1.8Mのうち$720Kは、売った後の18か月に置かれていた

10-Qの記載を並べ直すとこうなる。

項目金額備考
現金対価の総額$1,800K事業の無形資産を取得する形の取引
クロージング時に支払い$1,080K総額の60%
12か月後に支払い(holdback)$360K20%
18か月後に支払い(holdback)$360K20%
識別可能な無形資産$594K商標6年・コンテンツ4年・顧客関係5年で償却
のれん$1,206K総額の67%

代金の4割を18か月かけて払うという形は、買い手の側から見れば理屈が通る。ここからは推測だが、創業者が運営から一歩引いたあとに会員が残るかどうかを、買い手は払いの時期で確かめにいったのだと考えている。口コミが95%のコミュニティでは、会員を連れてきたのは3人の名前と関係で、その3人はクロージング後に関与を減らす立場にあった。後払いはその不確かさの値段である。

もう1つ読めるのは、のれんの比率だ。総額の67%が特定の資産に割り当てられていない。コンテンツの償却期間は4年とされていて、講座の動画が4年で価値を失う前提で計上されている。買い手が数えられる形で引き取ったのは全体の3分の1で、残りは場と名前に払われた。

同じ形の売却が成り立つ条件と、その限界

同じ「有料コミュニティの売却」には、ライター向けのFreelance Writers Denが6桁ドルで売れた例がある。会員数をあえて上限で止めて運営を続ける側の例としては、The Labの記録がある。同じSemrushが買ったブログのBacklinkoは、コンテンツを買われた別の形だ。

この事例から読める条件は3つに絞れる。

  • 会費を最初から取る設計が口コミに乗るのは、運営者の名前がすでにその業界で信用を持っているときだけ
  • 後払いの比率が高くなるのは、会員を連れてきたのが創業者個人の関係で、その創業者が売却後に離れるときだけ
  • 副業のまま売却まで届くのは、権利と契約の整理に年単位の時間を先に割けるときだけ

限界も書いておく。売却額と内訳は買い手の開示にしかなく、創業者3人の手取りや配分は公開されていない。年商の数字は、創業者本人の「2019年末にARR $1M弱」と、外部の整理の「年商約$1M」をつないだもので、売却直前の正確な値ではない。クロージング日もエッセイの2月21日と10-Qの2月23日で2日ずれている。体制についても、エッセイが名前を挙げる採用は2人で、外部の整理は業務委託3人としていて、出典どうしで揃っていない。

会費$99で人を絞った場所は、桁が止まったまま6年続き、最後は上場企業の帳簿に「のれん$1,206K」として載った。値段の大半は、数えられない側に付いていた。

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