Thomas Frank、Notionテンプレートだけで年1.5億円。290万人の本chを止め、11万人の新chに賭けた
Thomas Frankのチームは2022年1〜12月にNotionテンプレートだけで$1M超を販売。Ultimate Brainが$760,000。登録者290万人のメインchは1年近く更新せず、4.3万→11万人のニッチchに集中した結果だと本人が明かした。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商1,250万円は、月商を公開している掲載227件のうち上位15%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。
この記事で確認できること
Notionのテンプレートを売る。ただそれだけの事業が、1年で$1Mを超えた。売ったのはYouTubeクリエイターのThomas Frankとそのチームで、本人が2022年1月〜12月の実績として製品別の内訳ごと公開している。
この事例が面白いのは金額そのものではない。同じ1年間、彼は登録者290万人のメインチャンネルにほぼ1本も動画を上げていない。代わりに、当時4.3万人しかいなかった別チャンネルに投稿を集中させた。そして「収益はむしろ倍増した」と書いている。数字の出どころも、その判断の理由も、本人の言葉で残っている。
開示された数字
出典は本人のスレッド1本である。以下は原文で示された内訳をそのまま整理したものだ。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| テンプレート販売の年間合計 | $1,000,000超/ 2022年1〜12月 |
| Ultimate Brain | $760,000 |
| Creator’s Companion + Ultimate Brain バンドル | $298,000 |
| Creator’s Companion(Ultimate Tasks版) | $86,000 |
| Creator’s Companion(Base版) | $17,000 |
| チーム | 8人(本人含む。うち専任の開発者2人) |
| Thomas Frank Explains(ニッチch) | 登録者 4.3万人 → 11万人(+6.7万人)/ 再生 343万回 |
| 同chの投稿本数 | 長尺13本+ Shorts 2本 |
| メインch(登録者290万人) | 1年近く新規投稿なし |
ひとつ注意点がある。内訳を単純に足すと$1,161,000となり、本人が掲げる「$1M」を上回る。スレッドからは、この差が返金・決済手数料を引く前の総額と手取りの差なのか、バンドルの計上が一部重複しているのかまでは判別できない。本稿では「$1Mを超えた」という本人の表現を事実として扱い、内訳は各製品の相対的な大きさを示すものとして読む。
何を売っていたのか
商品は2つある。Creator’s Companion(2021年8月リリース)はYouTuberやライター向けに、企画から公開までのコンテンツ制作パイプラインをNotion上で管理するテンプレート。Ultimate Brain(2022年4月リリース)はタスク・メモ・プロジェクト・目標を一体化させたいわゆる「セカンドブレイン」型のテンプレートだ。
内訳を見ると、売上の大半は後発のUltimate Brainが持っていっている。$760,000は年間合計の3分の2近い。つまりこの1年の成果は、既存商品がじわじわ売れ続けた結果ではなく、2022年4月に投入した新商品が一気に主力になった結果である。
そしてもうひとつ。Creator’s Companion単体で最も売れたのはバンドル版だった。本人は「バンドルは他のエディションを3:1で上回る」と明記し、平均注文単価を押し上げていると述べている。$298,000対$86,000+$17,000という数字は、まさにその3:1に近い。
潮目が変わった判断
転機は明確だ。2022年4月のUltimate Brain投入と、発信の主戦場をメインチャンネルからニッチチャンネルへ移したこと。この2つが同じ年に重なっている。
前後の数字はこうなる。メインチャンネル(登録者290万人)は投稿ゼロのまま1年が過ぎた。一方でThomas Frank Explainsは長尺13本+Shorts 2本という、決して多くない投稿量で4.3万人から11万人へ。再生回数は343万回。290万人のチャンネルなら1本の動画で出せてもおかしくない数字である。それでも本人は「収益は倍増した」と書き、その理由を一行に凝縮している。More Views =/= More Money(再生数は金にならない)。
なぜ小さいほうが勝ったのか
再生数が減って収益が増える、という現象は感覚に反する。だが構造を見ると理屈が通る。
第一に、動画のテーマそのものが購買意欲の選別装置になっている。 「生産性向上のコツ」を見に来た290万人は、生産性に関心があるだけだ。対して「Notionの数式でタスクを自動仕分けする方法」を検索して見に来た人は、すでにNotionを使い、しかも自力で複雑な仕組みを組もうとして詰まっている。この人にとってUltimate Brainは「買うかどうか」ではなく「自作するか買うか」の選択肢になる。視聴者1人あたりの購買確率が桁で違う母集団を、動画のテーマだけで抽出している。
第二に、無料の巨大資産が信頼と検索流入を同時に作っている。 本人は利益を無料コンテンツに再投資していると述べ、実例として42,000語のNotion数式ガイドと2時間のNotion APIチュートリアルを挙げている。これは「無料お試し」ではない。Notionの数式で詰まった人が世界中から辿り着く参照資料であり、しかも競合が片手間に真似できる分量ではない。ここで「この人はNotionを一番分かっている」と認識させたうえで、その人が作った有料テンプレートを提示する。順序が逆なら同じ価格は付かない。
第三に、テンプレートを「テンプレート」で終わらせていない。 8人のチームに専任の開発者が2人いる。Notion APIを使い込んだ2時間のチュートリアルを公開していることと合わせて考えれば、売っているのは配布用のページ複製ではなく、継続的に保守・拡張されるプロダクトに近い。無料コピーが無数に出回るカテゴリで単価を維持できる理由はここにある。
第四に、バンドルは値引きではなく意思決定の簡略化として効いている。 セカンドブレインとコンテンツ制作パイプラインは、同じ人が同じNotionワークスペースで抱える隣接した問題だ。片方を買った人はほぼ確実にもう片方でも詰まる。「どちらを買うか」を考えさせずに両方渡せば、新規開発コストゼロで単価が上がる。3:1という比率は、顧客がその選択を面倒だと感じていた証拠でもある。
数字の裏にある12年
ただし、この1年だけを切り出すと大事な前提が抜け落ちる。本人はスレッドの中で経歴も添えている。コンテンツ制作を始めたのが2010年、フルタイム化が2012年、最初の採用が2016年。$1Mが出た2022年は、開始から12年目の年だ。
「4.3万人のチャンネル」も、ゼロからの4.3万人ではない。290万人のメインチャンネルを持つ人物が新設した第2チャンネルであり、初期の登録者は本チャンネルから流れている。ニッチに絞る戦略が機能したのは事実だが、絞る前に絞れるだけの母集団があった。
収益源も templates 一本ではない。2022年の事業全体にはスポンサー案件、Skillshareの講座収入、アフィリエイト収入も含まれると本人が明記している。$1Mはあくまで「テンプレート販売だけ」の数字である。
弱点はどこにあるか
開示されているのは売上であり、利益ではない。 8人分の人件費と決済手数料を引いた後に何が残るかは公開されていない。テンプレート販売は原価率が低いが、専任開発者2人を抱える体制は固定費が重い。
プラットフォーム依存も構造的リスクである。 商品はNotionというひとつのアプリの中でしか存在できない。Notionが同等機能を標準搭載すれば、あるいは料金体系やAPIの方針が変われば、商品の前提が消える。実際、Ultimate Brainのようなセカンドブレイン系テンプレートは2022年以降に類似品が急増したカテゴリだ。
さらに、これは月次の継続収益(MRR)ではない。 買い切りのため、翌月も同額を売るには翌月も新しい買い手を連れてこなければならない。無料コンテンツへの再投資を本人が強調しているのは、善意である以前に、流入を止めた瞬間に売上が止まる構造への必然的な対処と読める。
どこまで真似できるか
再現しやすいのは3つ。「テーマで購買意欲を選別する第2チャンネル」を作ること、隣接商品をバンドルにして単価を上げること、そして競合が真似しづらい分量の無料資産(42,000語のガイドのような)を1本置くこと。いずれも資本ではなく手間で作れる。
**再現できないのは2つ。**290万人という助走と、2010年からの12年である。ニッチ集中戦略は「絞ったあとに残る人数」が事業として成立する規模でなければ機能しない。フォロワー1,000人が100人に絞られても、$1Mにはならない。
そして再現の可否が最も曖昧なのがタイミングだ。 2021〜2022年はNotionの利用者が急拡大し、かつ公式テンプレートギャラリーや有料テンプレート市場がまだ薄かった時期にあたる。同じ商品を今日ゼロから出すなら、無料の代替が大量に存在する市場で単価を正当化する追加の理由(開発者2人分の継続保守のような)を先に用意する必要がある。
言い換えれば、この事例から持ち帰るべきは「Notionテンプレートを売れ」ではない。自分の観客のうち、どの一部が「作るか買うか」の分岐点に立っているかを特定し、その一部だけに向けて発信を絞れ、である。290万人を捨てて11万人を取る判断は、その特定ができていたから下せた。
あわせて読みたい
- Kindle出版で24冊、印税を積み上げた事例 — 買い切り型のデジタル商品を複数並べて収益を作る、という点で構造が近い。
- Photo AI(Pieter Levels) — 既存の観客を持つ個人が新商品を投入したときに何が起きるか、という比較対象として。
出典
本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。
この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →
近い規模・近い業種の事例
よく読まれている記事
新着記事
- 2026年9月1日
CyberLeads、19個の失敗の次に31日で作った「調達企業リスト販売」が月$53.7K。無料ニュースレターが営業装置
- 2026年9月1日
サウナイキタイ、趣味で始めた検索サイトが2期目売上約7,288万円。社員ゼロ・月370円「定員制サブスク」の設計
- 2026年8月31日
SEObot、AIが記事を書くSaaSがMRR $46K・累計$1.8M。数字の出どころはStripe連携の公開ダッシュボード
- 2026年8月31日
Feather、「Notionで書いてブログにする」SaaSを創業2年・$250Kで売却。買い手はTweet Hunterを売ったTibo
- 2026年8月27日
GummySearch、MRR $35Kの黒字のまま閉鎖を選んだRedditリサーチSaaS。API商用ライセンスが取れなかった4年



