月間100万ユーザーで有料は1,000人。収益の8割が広告というポモドーロタイマーの構造
20個以上のWebサービスを作った開発者が、月間100万ユーザーのポモドーロタイマーと月間10万ユーザーの動画ループツールで生活している記録。有料転換率0.1%、収益の8割以上が広告という内訳が公開されている。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
Webサービスを20個以上つくり、そのうちの数本からの収入で生活している個人開発者がいる。主力はポモドーロタイマー「Pomofocus.io」で、月間ユーザーは100万人。開発歴は5年である。
100万人という規模がどう金額に変わっているのか。公開されている内訳を読む。
運営中の3本
| サービス | 規模 | 収益モデル |
|---|---|---|
| Pomofocus.io(ポモドーロタイマー) | 月間100万ユーザー / 有料1,000人程度 | 広告+プレミアム課金 |
| LoopTube.io(YouTubeループ再生) | 月間10万ユーザー | 広告のみ |
| Memozora.com(単語カード) | 数字なし | プレミアム課金のみ |
最も重要な数字がここにある。月間100万ユーザーのうち、有料は1,000人程度。転換率は0.1%である。
そして収益の内訳も公開されている。Pomofocusの収益の8割以上は広告収入で、課金は2割に満たない。100万人を集めて、そのうち999人に999人は1円も払わない構造で成立している。
0.1%という転換率をどう読むか
有料転換率0.1%は、SaaSの常識からすると極端に低い。一般的なフリーミアムSaaSでは2〜5%が目安とされる。
ただし、この差はプロダクトの出来ではなく業種の違いから来ている。ポモドーロタイマーは、無料のままでも用が足りる道具である。集中時間を測るという中核機能に、支払う理由がない。有料プランは統計や同期といった周辺機能になり、そこに価値を感じる人だけが1,000人いた、という順序になる。
だからこの事業の設計は逆になっている。**転換率を上げるのではなく、母数を上げる。**0.1%が動かないなら、100万を200万にするしかない。そして母数が増えれば広告収入も増えるので、8割を占める柱のほうも同時に太る。
同じ「無料で大量に集める」構造でも、月間UU100万まで来ながら1円も回収せずに終わった二次創作プラットフォームとは決定的に違う点がある。こちらは最初から広告と課金の両方を載せている。人を集める仕組みと、集めた人を金額に変える仕組みが、同時に存在している。
母数はどこから来ているか
集客について、この記録は具体的な数字を1つ出している。LoopTube.ioの領域では、YouTubeのループ再生に関する検索が月間4万8,000回あり、そこから1日1,000人程度の新規流入が見込める、という計算である。
つまり、この開発者は**検索需要の大きさを先に測ってから作っている。**ポモドーロタイマーも動画ループも単語カードも、いずれも「やり方を検索する人が一定数いる」道具である。ゼロから需要を作る種類のプロダクトではない。
20個以上つくったという試行回数も、この方針と噛み合う。**検索需要のある小さな道具を数多く出し、当たったものだけ残す。**当たり外れの判定が早く済むのは、需要の有無が検索ボリュームという形で事前に見えているからだ。
掲載事例と並べる
本メディアが掲載している事例のうち、月商が公開されているものの中央値は約150万円である。この事例は金額を公開していないため、そこには並べられない。
ただし「収入で生活している」と明記されていることから、生活費を賄う水準にはある。同じく金額非公開で68本・累計200万ダウンロードを10年積んだ個人開発者と似た位置づけで、規模の数字は出すが金額は出さないという個人開発の記録の典型でもある。
効いていること・見えないこと
読み取れる勝ち筋は3つある。**検索需要を先に測る。無料で母数を取る。広告と課金を両方載せる。**この3つが揃っているから、転換率0.1%でも成立している。
一方で、この記録から見えないことも多い。**月商・年商の金額が一切ない。**広告が8割という比率は分かるが、その8割がいくらなのかは分からない。有料1,000人の単価も未公開である。
サーバー費用も出ていない。月間100万ユーザーを捌くインフラのコストが、収益に対してどの程度なのかは読み取れない。広告収入型のサービスでは、この比率こそが事業の生死を分ける。
20個つくって残ったのが3本
もうひとつ押さえておきたいのが試行の総数である。**20個以上つくって、記事に名前が出ているのは3本。**残りがどうなったかは書かれていないが、少なくとも主力として語られてはいない。
打率にすれば15%以下になる。この比率は、5年で11個つくって当たったのが3件だった個人開発者ともほぼ一致する。当たりを引くには10本単位の試行が要るという点で、複数の記録が同じ方向を指している。
そして残った3本は、いずれも「検索されている用事」を解く道具である。集中時間を測る、動画をループさせる、単語を覚える。どれも既に言葉になっている困りごとで、説明しなくても検索窓に打ち込まれる。外れた17本以上が何だったかは分からないが、この共通点は偶然ではないだろう。
再現の条件と限界
似た商材に広げて読めるのは、転換率が低い商材では、転換率の改善より母数の拡大のほうが効くという点である。用が足りてしまう道具を作ったなら、課金を強化するより、広告を含めた別の回収経路を先に用意するほうが筋が通る。
広げて読めないのは、20個以上つくれる開発速度そのものだ。当たりを引くまで試す戦略は、1本あたりの制作コストが低いことを前提にしている。数ヶ月かかるプロダクトでは、同じ打ち方はできない。
もう一点、**この構造は無料ユーザーが「コスト」ではなく「在庫」になる場合にだけ働く。**広告を載せられるWebサービスだから、使われるほど収益に変わる。同じ100万人でも、AI推論のように1リクエストごとに原価がかかる商材なら、無料ユーザーが増えるほど赤字が深くなる。ポモドーロタイマーは処理がブラウザ側で完結し、原価がほぼ増えない。業種の選択が、この収益構造を可能にしている。
そして最大の限界は、この構造が広告市場に依存していることである。収益の8割が広告なら、単価の変動がそのまま事業に効く。広告単価の低下とともに収益が右肩下がりになった個人開発の事例と同じリスクを、より高い比率で抱えている。
出典
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