Twitterフォロワー86人でKindle印税が月7万5,000円。10冊・2年間の推移とSEO全振りの中身
Twitterフォロワー86人のながたき氏が、Kindle10冊で月印税7万5,000円(2022年12月時点)。月3,000円から2年かけて積み上げた推移と、2022年2月にAmazon内SEOへ舵を切ってから3万円台→7万円台に伸びた経緯を検証する。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商7.5万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から10%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。
個人のKindle出版が語られるとき、たいていセットで語られるのが「SNSの影響力」である。フォロワーを集め、そこに向けて本を売る。という順序が前提になっている。だがこの事例はその前提を外している。Twitterのフォロワーは86人。それでも月の印税は7万5,000円に達している。
note「カン|AI×Kindle出版」に掲載された、ながたき氏との対談記事がこの事例の出典である。数字はすべて本人の発言に基づき、時点は2022年12月である。
86人のフォロワーで月7万5,000円
対談の冒頭で、聞き手のカン氏はこう紹介している。「ながさきさんは、すごいのがTwitterのフォロワー数が100名以下。今先ほど見たんですけど86名で、月の印税が7万5000円」。
フォロワー86人という数字は、SNS集客としては実質ゼロに近い。つまりこの7万5,000円は、SNSのフォロワーが買ったのではなく、Amazonの中で本を見つけた見知らぬ読者が買っている。ここがこの事例の核心である。
出版ペースは「だいたい2ヶ月に1冊くらい」で、対談時点の累計は10冊。ジャンルは「節約だったり転職、副業、資産運用、ITだったりその資格を初心者向けだとか未経験者向けに出していく」。特別なジャンルではない。
2年かけた印税の上がり方(本人証言)
ながたき氏は月ごとの推移を口頭で振り返っている。数字は本人の記憶に基づく概略であり、1円単位の帳簿ではない点は差し引いて読む必要がある。
| 時期 | 出来事 | 月間印税(証言ベース) |
|---|---|---|
| 2021年1月末 | 1冊目を出版 | 約3,000円 |
| 2021年2月 | — | 約1万円 |
| 2021年3月〜夏 | 新刊なしで減衰 | 8,000円→7,000円→5,000円 |
| 2021年9月 | 2冊目(節約系)を出版 | — |
| 2021年11月 | ゲームエンジン本が当たる | 3万7,000円 |
| 2021年12月〜2022年秋 | 停滞 | 2万→2万→2万→4万→3万円 |
| 2022年2月 | Amazon内SEOの教材を購入し実装 | 約3万円まで回復 |
| 2022年5月 | CCNA(ネットワーク資格)本を出版 | — |
| 2022年12月後半 | SEOを全面適用したAWS本を出版 | — |
| 2022年12月時点 | — | 7万5,000円 |
本人の総括は「少しずつ上がっていった感じになります。2年間かけて」。1冊目が月3,000円だった当時の受け止めは「十分かなって思ってて、まあ多いかなっていう風には考えてました」だという。
転機は「たまたま当たった1冊」ではない
グラフの形だけを見れば、2021年11月のゲームエンジン本が転機に見える。本人も「たまたまヒットというかちょっと当たって月3万円、1冊で稼いだ」と言っている。だが、その後の1年は2万〜4万円を上下しただけで、伸びは止まっている。1冊のヒットは山を作ったが、地面の高さは変えなかった。
地面が変わったのは2022年2月である。この月、ながたき氏はAmazon内SEOを扱う教材を購入し、タイトル・キーワード・説明文の作り方を全面的に組み替えた。「そもそもAmazonSEOの内容を教えるということで僕に合ってるなと思って買って、実際にやってみたら結構上位に表示されたりとか、3万円くらい稼げるようになった」。
そして2022年12月後半、別の教材で知ったツールを使い、SEO対策を徹底した新刊としてAWS認定資格の本を出す。ここで水準が跳ねる。「そこから、印税がそれまでずっと3万円とか2万円とか、また4万円みたいにうろうろしていたのが7万円に増えて」。
前後を並べると、2万〜4万円のレンジで11ヶ月停滞→SEO実装済みの新刊1冊で7万円台、である。転機は「良い本を書いたこと」ではなく、同じ本を検索で見つけてもらう作りに変えたことだった。
なぜそれが効いたのか
ながたき氏の施策は3層に整理できる。効いた理由は層ごとに違う。
第1層:Amazon内の検索面を面で押さえる。 タイトルは「Amazonでは60文字以内にしといた方がいい」という推奨に対し「もう59文字だとか57文字とかだったらいいだろうと思って、ギリギリまで入れていった」。CCNA本では「ccnaというキーワードを狙って書いていったんですけど。それだけじゃなくて、例えばccnaの問題集や教科書やccna200-301とか、そういった関連で出てくるキーワードとかも、不自然じゃなければ全然タイトルに入れていく」。タイトルに入りきらない語は7つのキーワード欄へ、説明文は4,000字の上限ぎりぎりまで使い、目次を丸ごと貼って語彙を増やす。A+コンテンツも設定上限の5枚まで使い、画像側のキーワードも埋める。さらに著者ページを作って「他の書籍からの流入」を作る。効いている理由は明快で、資格名・教材名という検索語が事前に決まっているジャンルを選び、その語の周辺を1人で埋めているからである。SNSと違い、検索面は影響力ではなく記述量と一致度で取れる。
第2層:立ち上がりの3日間を無料で買う。 「毎回今まで10冊出したんですけど、全部開幕では無料キャンペーンやってます」。期間は3日間で、理由は「機会損失多そうだなっていうのは勝手な印象で、3日間にした」。宣伝先は数百人規模のLINEオープンチャットと、知人・友人・同僚。「これが99円だったら、多分誰も買ってくれないと思ったんでもう無料キャンペーンでやるしかない」。無料期間のダウンロードはランキングとレビューの初期値を作る役割を持つ。有料に戻したあとは「駆け出しエンジニアとつながりたい」のようなハッシュタグ付きの宣伝ツイートを15回ほど連投する。
第3層:他人の影響力を借りる。 AWS本では、書籍内で紹介したインフルエンサーや企業の教材について「こういうふうに書きましたっていうことでTwitterで連絡したら、拡散させていただきますということで拡散してもらった」。結果、無料キャンペーンで約315件のダウンロード、有料ランキング1,206位。フォロワー86人の本人がリーチを持たない以上、リーチは借りるしかない。という判断であり、借りる口実として「あなたを紹介しました」という事実を先に作っている点が実務的である。
やっていないこと、そして限界
ながたき氏はSNS運用をほぼ捨てている。「1日何ツイートもするってちょっと面倒くさいし、それで出すぐらいだったら自分の本出した方が早いなって思ってたりする」。マネタイズも印税一本で、コンテンツ販売やメルマガへの横展開は当時やっていない。2年で月7万5,000円という水準は、この選択の帰結でもある。
本人も自分の型の適用範囲を限定している。「大きく稼ぎたいとかだったら、正直僕のやり方ってあんまり参考にならないかなっていう風に思ってます」。一方で「KindleだけやってTwitterとかでもあんまり発信とかしたくないなっていう人は、ちょっと僕のやり方を参考にしたりしたらいい」。
リスクの所在も明確である。収益はAmazonの検索アルゴリズムとKindle Unlimitedの料率という、著者が触れない2つの変数の上に乗っている。ページ単価が動けば印税は動く。また、施策の要である「関連キーワードをタイトルに詰める」書き方は、プラットフォーム側のガイドライン運用が変われば一夜で無効化されうる性質のものだ。
どこまで真似できるか
再現しやすいのは、ジャンル選定と検索面の設計である。資格・ツール・製品名のように読者が打ち込む語が確定しているテーマを選び、その語の関連語をタイトル・キーワード欄・説明文・画像に一貫して置く。この作業は影響力も資本も必要とせず、1冊あたりの追加コストもほぼゼロで、10冊分積み上がれば著者ページ経由の回遊も生む。
再現しにくいのは3点ある。なにより、2年間で10冊を出し続けた継続そのもの。カン氏が「そをずっと2年近くも淡々と続けているからこそ、このぐらいの結果も出てるのかな」と評した通り、月3,000円で腐らずに2ヶ月に1冊を出せるかが最大の関門である。IT資格という執筆可能な専門領域を本人が持っていたことも代わりが利かない。参入時期も選べない。2021年当時と現在では同カテゴリの競合冊数が異なり、同じSEO施策で同じ順位が取れる保証はない。
そして忘れてはならないのは、この記事の出典がKindle関連の教材を販売する発信者のnoteであることだ。ながたき氏が購入した教材群は出典元の商材でもある。数字は本人の発言として扱えるが、「教材を買ったから伸びた」という因果は、売り手側の媒体で語られた因果である点を割り引いて読むのが妥当だろう。検証可能なのは、SEO実装の前後で月2万〜4万円が7万円台に変わったという時系列の事実までである。
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出典
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