事例 売却済み

仲介会社に断られた個人事業の卸売が、登録直後から30件超の引合い。2ヶ月弱で承継完了

意匠登録済みの女性用アパレル雑貨を扱う個人事業主が、大手M&A仲介会社に規模と手数料で断られた後、事業引継ぎ支援センターの紹介でTRANBIに登録。直後から問い合わせが入り最終的に30件超の引合い、2ヶ月弱・面談3回で数百万円の事業譲渡が成立した。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

仲介会社に断られた個人事業の卸売が、登録直後から30件超の引合い。2ヶ月弱で承継完了

小規模事業の売却で最初に立ちはだかるのは、買い手がいないことではない。買い手に会う場所がないことである。2018年4月にTRANBIが公開したこの事例は、その差がどれだけ結果を変えるかを、同じ事業・同じ時期の前後比較として示している。

売り手のR様は個人事業主として、自ら開発し意匠登録まで済ませた女性用アパレル雑貨の卸売・インターネット販売事業を営んでいた。競合のない唯一無二の商品であり、大手総合雑貨店等にも商流を持っていた。それでも個人経営による負担は大きく、成長力に限界を感じていたという。より事業を成長・発展させられる個人や企業に引き継いでもらえるなら、第三者への事業承継という選択肢もあるのではないか。そう考えて動き出したところから話が始まる。

断られてから成約するまで

局面起きたこと
最初の行動インターネットで検索した大手M&A仲介会社を訪問
結果事業規模や仲介手数料等の点で「全く折り合わなかった」。一部の仲介会社からは「個人事業を買い取りたい相手はいない」とも言われた
転換点相談で訪れていた事業引継ぎ支援センターでTRANBIを紹介され、すぐに登録
反応登録直後から問い合わせが入り、最終的に30件社超の引合い
選定交渉相手が多数いるなかで、買い手F様の事業への熱意を決め手に選定
交渉詳細なデューデリジェンス等はほとんどなし。直接会った回数は引継ぎを含めて合計3回程度
期間トランビ上で交渉開始から引継ぎ完了まで2ヶ月弱
金額数百万円。R様は「当時の業績水準を考えると納得感のあるもの」と評価

金額の内訳や売上高は公開されていない。記事に付されている価格帯タグは「500万円」である。

潮目が変わった一点

この事例の転機は、買い手が見つかった瞬間ではなく、売る場所を変えた瞬間にある。前後の落差がはっきりしている。仲介会社に持ち込んだ段階では受託自体が成立せず、「個人事業を買い取りたい相手はいない」とまで言われた。ところが事業引継ぎ支援センターの紹介でTRANBIに登録すると、登録直後から問い合わせが入り、最終的な引合いは30件を超えた。事業も商品も価格も変わっていない。変わったのは掲載先だけである。

R様自身、短期間で多くの買い手候補から問い合わせがあったことに大変驚いたと述べている。「買い手がいない」という診断は、市場に買い手がいないことの証明ではなく、その窓口から買い手が見えないことの表明にすぎなかった。

なぜ仲介では成立せず、掲載では成立したのか

理由は買い手の存在ではなく、仲介という業態のコスト構造にある。記事はこう説明している。M&Aの仲介を専門に手がける会社はビジネスとして仲介業を営んでいるため、一定の企業規模があり手数料を取れる事業でなければ案件として受託することができない。つまり案件1件あたりに人が張り付く以上、成約報酬が人件費を上回らない規模の案件は、意欲の問題ではなく構造上受けられない。数百万円の個人事業はその線の下にある。

対してプラットフォーム掲載は、1件を追加する限界コストがほぼゼロに近い。だから「手数料が取れない規模」という理由で弾かれる案件が、そのまま買い手候補の目に触れる。30件超という引合い数は、需要が新しく生まれたのではなく、もともとあった需要が可視化されただけだと読むのが妥当だろう。

もう一つ効いているのが、売り物の輪郭がはっきりしていたことだ。意匠登録済みで競合のない商品、そして大手総合雑貨店等への商流。買い手から見れば、引き継いだ瞬間に何が手に入るのかが数行で理解できる。個人事業のM&Aでは、売り手本人の腕前と切り離せない事業が多く、その場合は買い手が価値を見積もれない。ここでは権利と販路という移転可能な形で価値が固まっていた。

選定の決め手は財務ではなく不可逆な行動だった

30件超の候補から最終的にF様が選ばれた理由として記事が挙げているのは、事業に対する熱意である。F様は初回交渉の時から「この事業の後継者として相応しいのは自分しかいない」という意気込みで猛アピールしたという。

ただし熱意だけで決まったわけではない。R様はF様の経歴から、自分が育ててきた事業をさらに成長させるために必要なノウハウを持っていると確信している。さらにF様は、この事業に専念するためサラリーマンとして勤務していた会社を退職し、新たに会社を設立して独立すると申し出た。この二つが揃ったところで、R様は「F様ならこの事業をさらに伸ばしてくれる」と確信し、事業譲渡を決断している。

言葉ではなく退路を断つ行動が判断材料になっている点は見ておく価値がある。売り手にとって最大のリスクは、承継後に事業が投げ出されることだ。退職と法人設立という取り消しの効かない選択は、そのリスクが小さいことの証明として機能した。

2ヶ月弱で終わった条件と、その裏側

交渉が速かった理由も構造で説明されている。個人事業としてビジネスがシンプルだったため、詳細なデューデリジェンス等はほとんど必要なかった。直接会ったのは引継ぎを含めて3回程度で、残りはインターネット上のやり取りである。記事は、毎回直接会っての交渉であればM&Aの交渉に取られる時間も多くなり負荷が大きかったかもしれないとし、オンラインとオフラインを使い分けたことがスピードにつながったと総括している。

一方で、この形式ならではの注意点も明記されている。個人事業の事業承継は、株式の譲渡によるM&Aとは異なり会社の資産すべてを売却するわけではないため、在庫や取引先、契約関係など譲渡対象となる範囲をしっかり決めておくことが重要だという。事業に関わる資産や契約のどこまでが承継対象なのか、その前提がずれると交渉は前に進まない。交渉に臨む前にリストとして整理しておけば後が楽になる、というのが当事者側からの助言である。速さは省略から来るのではなく、範囲の確定から来る。

真似できるもの、できないもの

真似できるのは動線の側だ。規模を理由に仲介会社に断られた段階で終わりにせず、事業引継ぎ支援センターのような公的窓口に相談し、そこからプラットフォームへつなぐ。掲載前に譲渡対象の範囲をリスト化しておく。面談を必要最小限に絞り、残りはオンラインで詰める。いずれも資本を必要としない手続き上の工夫である。

真似できないのは商品の側である。意匠登録によって競合がいない状態を作れていたこと、そして大手総合雑貨店等への商流を個人事業のまま持っていたこと。この二つがあったからこそ30件超の引合いが集まり、買い手が短期間で価値を判断できた。同じプラットフォームに載せても、権利も販路も持たない事業に同じ反応が返るとは限らない。また金額が数百万円にとどまった以上、これは老後資金を作る売却ではなく、事業を残すための承継である。R様が納得したのは「当時の業績水準を考えると」という条件つきの評価だった点も、あわせて読んでおきたい。

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出典

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