月商の中央値、日本25万円・海外450万円 — 18倍の差はどこから来るのか
掲載346事例を日本135件・海外211件に分けると、運営中の月商中央値は25万円と450万円で18倍、売却額の中央値は200万円と1.3億円で65倍離れていた。ただしこれを「実力の差」と読むのは早い。両者は分布の欠け方が違う。
執筆: Small Start 編集部(掲載事例の集計+公開情報の分析)
同じ「個人開発」「スモールビジネス」でも、日本語で読む数字と英語で読む数字は桁が合わない——という感覚を持っている人は多いと思う。本メディアは日本の事例と海外の事例を同じスキーマで記録しているので、この感覚を実際に集計で確かめられる。2026年8月17日時点の掲載346事例(日本135件・米国113件・その他98件)を、日本とそれ以外に分けて並べた。
数字はたしかに桁違いである
| 日本(135件) | 海外(211件) | |
|---|---|---|
| 運営中・月商公開 | 65件 | 86件 |
| 月商の下位25% | 7万円 | 150万円 |
| 月商の中央値 | 25万円 | 450万円 |
| 月商の上位25% | 100万円 | 1,250万円 |
| 売却額公開 | 10件 | 27件 |
| 売却額の中央値 | 200万円 | 1.3億円 |
| 売却額の最大 | 480万円 | 48億円 |
| ソロ・副業の比率 | 77% | 47% |
月商の中央値で18倍、売却額の中央値では65倍。日本の上位25%(100万円)は、海外の下位25%(150万円)にも届かない。数字だけ見れば完敗である。
だが、この表を「日本では小さくしかやれない」と読むのは早い。両者は同じ土俵の分布ではないからだ。差がどこで作られているかを、順に分解する。
差を作っている4つの構造
**出どころが違う。**海外事例の多くはIndie HackersやThey Got Acquiredのような「成功が確定してから記事になる」媒体経由で世に出る。月商数万円の海外事例は、そもそも英語圏メディアの網にかからない。一方、日本には収益が小さい段階から過程をnoteやブログで自己開示する文化があり、本メディアはそれを意図して拾っている。月4,000円のストックフォトも、累計700円のゲームも掲載している。**日本の中央値が低いのは、小さい数字まで「公開されている」からでもある。**海外の分布は左半分が欠けた状態で比較されている。
**事業の構成が違う。**両者の業態の内訳を並べると、比べているものの違いがよく見える。
| 地域 | 業態の上位(件数) |
|---|---|
| 日本(135件) | 実店舗・オフライン36、コンテンツ販売20、EC・物販14、モバイルアプリ14、ブログ13 |
| 海外(211件) | SaaS 99、ブログ・メディア45、コンテンツ販売15、Webサービス12 |
日本側の最多は実店舗・オフライン(36件)。飲食店の承継、自販機、レンタルスペースといった、月商の桁が立地と席数という物理で制約される事業だ。海外側は約半分がSaaSで、掲載SaaS105件のうち日本の事例は6件しかない。事業種別ごとの月商中央値は種別間で50倍以上開くのだから、この構成のまま地域をまるごと比べれば差が出るのは当然である。地域の差に見えるものの相当部分は、業態構成の差だ。
**体制が違う。**日本事例の77%はソロまたは副業だが、海外は47%で、残りは少人数とはいえチーム経営や調達済みの会社を含む。月商450万円という海外の中央値には、5人のチームや買収で拡大した事業が混ざっている。
**売却市場の層が違う。**売却額の65倍差は、倍率のコラムで見た構造とつながっている。日本の公開案件はバトンズやラッコM&Aで個人と個人が生活圏の事業を受け渡す取引が中心で、海外の公開案件はSaaSをファンドや事業会社が買う取引が中心だ。取引の桁が違うのは値付けが渋いからではなく、市場に出ている商品が違うからである。なお本メディアは売却額100万円以下の案件を掲載しない基準を置いており、それでも日本の中央値は200万円にとどまる。小型案件の層の厚さは、この基準の上からでも見える。
「日本だから小さい」わけではない
構造を差し引いて残るものを見るには、日本側の上位を見ればいい。掲載事例の中で最大の月商は、実は海外ではなく日本にある。月1.26億円のオンラインサロンだ。1,505万PVで月1,255万円のブログは、海外分布の上位25%境界(1,250万円)にちょうど並ぶ。公開4ヶ月半で事業譲渡されたZennのように、速度で海外事例に引けを取らない例もある。日本語圏という市場は英語圏の1/10以下の規模だが、上位事例の絶対値は市場規模の比ほどには離れていない。
つまり18倍という数字の大半は、「何をやるか」「どこまで公開するか」「どこで売るか」の構成差で説明がつく。残る本質的な違いをひとつ挙げるなら、英語圏では小さな事業の売買市場が個人にも開いていて、作った資産を現金化する出口が近いことだろう。出口の近さは、始める人の数と投じる真剣さに跳ね返る。
その意味で注目しているのは、日本側の掲載事例でこの1〜2年に増えた事業承継の記録だ。書店、薬局、そば屋、自販機。バトンズやトランビを経由して、個人が数百万円で「すでに回っている事業」を引き継ぐ取引が、名前と経緯つきで公開されるようになった。売買の対象が違うだけで、「個人に開いた出口と入口」という構造は英語圏のマイクロM&Aと同じものである。18倍の差のうち、市場の整備で縮む部分は、これから縮む可能性がある。本メディアはその過程を記録していく。
集計方法と限界
母集団は本メディアの掲載事例のみで、日本と海外の実勢を代表する統計ではない。海外事例の金額は1ドル150円で円換算しており、レートを変えれば海外側の数字はそのまま伸縮する。たとえば1ドル130円で引き直せば海外の月商中央値450万円は390万円に縮むが、それでも15倍の差は残る。地域は運営者の拠点(frontmatterのcountry)で分類しており、日本人が海外向けに展開する事業は「日本」に数えられる。生存者バイアスは両地域にかかるが、上で述べたとおり掛かり方が非対称である点にいちばん注意してほしい。定義と方法はデータ集計ページを正とする。
ソロ・副業の分布そのものは一人でどこまで行けるのかで、個別の事例はソロプレナーの事例一覧から辿れる。
出典
本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。
本コラムは、Small Startに掲載している事例(すべて出典付きの公開情報)の集計と、公開情報の分析にもとづく編集部の見解です。特定の事業・投資・副業を推奨するものではありません。
ほかのコラムを読む →この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →