コラム

事業の種類で月商はどれだけ違うか — 12分類の中央値マップ

運営中の事例を事業種別ごとに集計すると、月商の中央値はSaaSの約900万円からYouTubeの約17万円まで50倍以上の開きがあった。ただし件数と単価構造を見ると、この差は「稼げる分野」の差ではない。

執筆: Small Start 編集部(掲載事例の集計+公開情報の分析)

事業の種類で月商はどれだけ違うか — 12分類の中央値マップ

副業や独立の相談でいちばん多い問いは「何をやればいいか」だろう。本メディアの運営中事例を事業種別で割って月商の中央値を出すと、分野ごとの水準がはっきり分かれる。集計は2026年8月12日時点で掲載している337事例(運営中165件・売却168件)のうち、月商を金額で公開している運営中事例にもとづく。数字を先に置く。

種別ごとの月商中央値(運営中事例)

事業種別月商の中央値集計件数
SaaS約900万円62件
コミュニティ約666万円4件
アフィリエイトサイト約656万円2件
ブログ・メディア約250万円25件
Webサービス約150万円13件
EC・物販約55万円17件
SNSアカウント約40万円3件
モバイルアプリ約26万円18件
オフライン事業約25万円7件
コンテンツ販売約18万円26件
YouTube約17万円7件

上から下まで、中央値でおよそ50倍の開きがある。ただしこの表を「SaaSをやれば50倍稼げる」と読むのは間違いだ。

差を作っているのは分野ではなく単価と継続性

SaaSが上に来る理由は明快で、顧客単価が高く、毎月自動で課金され、解約されにくいからだ。月$50の法人向けツールを200社が使えば月$10,000になる。中央値の月900万円をコンテンツ販売(1本1,500円の買い切り)で作るなら、毎月6,000本を売り続けなければならない。分野の優劣ではなく、単価×継続の掛け算の差である。

逆に下位の分野には、その代わりに得られるものがある。コンテンツ販売やYouTubeは初期投資と参入障壁が極端に低い。SaaSを作るには開発力か資金が要るが、Kindleの本は文章が書ければ出せる。中央値が低いのは、参入した人の裾野が広いことの裏返しでもある。

件数も一緒に見る

この表で見落としてはいけないのが集計件数だ。アフィリエイトサイトは2件、SNSは3件、コミュニティは4件しかない。中央値と呼べる代物ではない。上位2〜3位にアフィリエイトサイトとコミュニティが並んでいるのは、分野の実力というより数件の大きい事例がそのまま中央値になっているだけだ。一方でSaaS62件、コンテンツ販売26件、ブログ25件、モバイルアプリ18件、EC17件、Webサービス13件は、傾向としてある程度信頼できる。

件数の偏り自体も情報である。SaaSの事例が多いのは、開発者が収益を公開する文化が英語圏に根付いているからだ。逆に日本のオフライン事業や物販は、そもそも数字を公開する人が少ない。この表はビジネスの分布ではなく「数字を公開する人の分布」を映している

分野を選ぶときに本当に効く変数

事例を横断して見ると、月商の水準を決めているのは分野名ではなく次の3つだった。

支払い主が誰か。 法人が経費で払う商品は、個人が財布から出す商品の一桁上の単価が成立する。同じニュースレターでも、業界関係者向けの年$450(The Daily Lodging Report)と、一般読者向けの月$5では商売の設計がまったく違う。

課金が続くか、都度か。 買い切りは売った瞬間にゼロに戻り、翌月また同じ努力が要る。Kindle出版24冊の月5〜7万円が示すのは、都度課金で積むには「棚」を作るしかないという事実だ。

集客が自走するか。 検索・アプリストア・マーケットプレイスに載る商品は、寝ている間も見つけられる。SNS依存の事業は、投稿を止めた月に収益が落ちる。

分野を選ぶというより、この3変数のうち何を取りに行くかを選ぶほうが、意思決定としては正確だ。

「参入しやすさ」と「稼ぎやすさ」は逆相関する

この表をもう一度、参入コストの軸で並べ替えると、きれいな逆相関が見える。参入が簡単な順に、コンテンツ販売 < YouTube < SNS < EC < ブログ < アプリ < SaaS。中央値の順序はおおむねその逆になる。例外はアプリで、中央値は約26万円とECやSNSより下に沈む。作るのに技術が要るわりに、出しただけでは見つけてもらえない分野だということだ。

当たり前に見えるが、副業選びではこの当たり前がよく無視される。「すぐ始められる」ことを基準に選ぶと、同じ理由で参入した無数の競合と同じ土俵に立つことになる。逆に、習得に半年かかる技能は、その半年が参入障壁として自分を守ってくれる。

ただし例外がある。既に持っている技能を別の市場に持ち込む場合だ。掲載事例には、税理士がスキルマーケットに出品して月70万円に到達した例、インテリアデザイナーが撮影技術を武器にハンドメイド市場で月商100万円を作った例がある。彼らにとって参入コストはゼロに近いのに、市場の中では希少能力になっている。**「自分にとって簡単で、その市場では希少」**という交差点を探すのが、分野選びの本質だろう。

上位分野に近づく現実的な経路

月商の高い分野へ移りたい場合、いきなりSaaSを作る必要はない。掲載事例に頻出する経路は次の順序だ。まず自分が使う道具を作る、次に同業に売る、そして同業の業務に不可欠になる。専門家が自分の手順をツール化した事例が売却に至る例が多いのは、需要検証が最初から済んでいるからである。

分野の中央値は「その分野に入れば得られる金額」ではなく、「その分野の構造が許す上限の目安」でしかない。同じSaaSでも月15万円で止まっている事例はいくらでもあり、同じコンテンツ販売でも$4.5Mで売却された講座がある。

集計の前提

本メディアに掲載している運営中事例のうち、月商が具体的な金額として公開されているものを事業種別で分類し、中央値を算出した。海外事例は1ドル150円換算。月商であり利益ではないため、原価率の高い物販・オフライン事業は手残りベースだと表よりさらに下がる。

出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

本コラムは、Small Startに掲載している事例(すべて出典付きの公開情報)の集計と、公開情報の分析にもとづく編集部の見解です。特定の事業・投資・副業を推奨するものではありません。

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