Website Investing:有料70人で止まった課金を無料層の後ろに置き直したら、7ヶ月で月商7,500ドル・低6桁ドル売却
Richard Patey氏の有料ニュースレターは月49ドル課金で有料70人から伸び悩んだ。2020年5月にSubstackへ移し無料層を前に置くと、7ヶ月後には有料100人・無料2,700人・月商7,500ドルとなり、低6桁ドルで売却された。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商112.5万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から41%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。
「低6桁ドル」とは10万〜30万ドル台を指す英語圏の慣用表現で、日本円にすればおおよそ1,500万〜5,000万円の幅である。
Website Investing Publicationは、ウェブサイトを資産として売買・運用する「サイト投資家」向けの有料ニュースレターだ。運営したのはRichard Patey氏。2019年12月に構想し、2020年5月にSubstackで本格的に立ち上げ、その2ヶ月後の2020年7月に、Smash.vcの創業者Travis Jamison氏へ低6桁ドルで売却した。構想から数えても7ヶ月、Substack移行からは2ヶ月あまりという速さである。
立ち上げから売却までの経過
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2009年 | 非営利団体のファンドレイジング/助成金申請の職を離れ、オンライン事業へ |
| 2009〜2013年 | パノラマ写真のShopifyドロップシッピング→ローカルSEO代理店(2013年に売却) |
| 2015年 | マーケティングオートメーションのレビューサイト「Funnel Engine」を開始 |
| 2017年 | Funnel EngineをEmpire Flippers経由で6桁ドルで売却(買い手はBlackstone Valley Group) |
| 2019年夏 | ポッドキャスト+2,000人規模のFacebookグループ「Flipping Websites」をAlpha Investorsへ売却 |
| 2019年12月 | Website Investing Publicationの構想を固める |
| 当初 | Gumroadで月49ドル課金。有料約70人で頭打ち |
| 2020年5月 | Substackへ移行し、無料→有料のファネル型に再構成 |
| 2020年7月 | Travis Jamison氏へ低6桁ドルで売却 |
| 2021年1月 | 保有していたマイノリティ持分をJamison氏へ売り戻し |
売却時点の数字は、月商7,500ドル、有料購読者100人、無料購読者2,700人。体制はPatey氏に加えて業務委託4名――ライター2名、編集1名、ポッドキャストのホスト兼プロデューサー1名である。
収益の中身を見る
月商7,500ドルの内訳が、この事例で最も重要な数字だ。出典によれば、うち約5,000ドルが広告とアフィリエイト提携によるもので、残りが有料購読である。
つまり売上の約3分の2は、有料会員100人ではなく、無料会員2,700人を含む読者全体に対して立っていた。有料購読は「Patey Premium」として月49ドル、無料版のニュースレターがその前に置かれ、ポッドキャストは前半が無料で後半が有料という構成だった。Patey氏は「無料のニュースレター/ポッドキャストは、Substack上で毎回少なくとも1,000回の閲覧・再生を得ていた」と述べている。
ただし数字の整合には注意が必要だ。有料100人×月49ドルなら月4,900ドルになり、「広告・アフィリエイト約5,000ドル+残りが有料購読」という記述と足し合わせると合計7,500ドルを超える。年額プランの割引、期中の入退会、あるいは価格の変更のいずれかが挟まっていると考えるのが自然だが、出典にその説明はない。ここは幅のある数字として読むべきところである。
転機:課金の壁を、読者の前から後ろへ動かした
軌道が変わった地点ははっきりしている。2020年5月のSubstack移行だ。
それ以前、Patey氏はGumroadで月49ドルの課金を設定し、有料購読者約70人まで積み上げたところで停滞していた。金額も内容も基本的には同じである。変えたのは構造だけだ。無料のニュースレターとポッドキャストを前面に置き、その後ろに有料の層を置いた。
前後の数字を並べると――有料約70人で停滞していた状態から、移行後2ヶ月で有料100人・無料2,700人、月商7,500ドル。有料会員の増加は30人に過ぎない。伸びたのは無料側であり、そして収益の主力になったのも無料側だった。
Patey氏自身がこの設計を意図して選んでいる。
「自分は全力で乗った。以前にファネル領域で6桁ドルのソフトウェアレビューサイトを作って売った経験があり、無料のニュースレターのコンテンツが、無料購読者を有料購読者へどう直接転換させられるかが見えていた」
なぜ効いたのか
課金の位置が、収益源の数を決めていた。 Gumroad時代の構造では、収益は有料購読の一本しかない。読者は「払うか、いなくなるか」の二択であり、払わない読者は資産にならなかった。無料層を前に置くと、払わない読者2,700人が残る。この2,700人が広告主とアフィリエイト提携の対象になり、月5,000ドルを生んだ。同じコンテンツ、同じ書き手で、収益源が一本から三本に増えた――これが転換の実質である。
買い手は読者ではなく広告主の中にいた。 Patey氏は、条件の合わない買収オファーを受けた際、相談相手としてTravis Jamison氏に連絡した。Jamison氏はそれ以前からこの媒体の広告主だった人物である。相談は買収提案に転じ、Jamison氏はニュースレターと投資家コミュニティ「Investing.io」を構築する材料としてこの媒体を取得した。Patey氏はマイノリティ持分と6ヶ月の移行支援を受け、翌2021年1月に持分を売り戻している。
この経路は偶然ではない。広告主は既に自腹で出稿し、読者の反応を見ており、媒体の価値を実データで知っている唯一の外部者だ。デューデリジェンスに相当する検証を、取引前に日常業務として済ませている相手からのオファーは、話が速い。7ヶ月という短さの半分は、ここで説明がつく。
外注で作り、外注ごと渡した。 ライター2名・編集1名・ポッドキャスト担当1名という体制は、Patey氏本人の稼働を最小化する。これは立ち上げ速度のためでもあるが、売却時にも効く。書き手が本人でない部分が大きいほど、譲渡後の継続性が説明しやすい。
見落としてはいけない前提
この事例は「7ヶ月で売却」という速さが目を引くが、Patey氏の職歴は2009年から続いている。SEOは「タイトルタグとは何かをそのままGoogleで検索する」ところから独学で始め、ドロップシッピング、SEO代理店、レビューサイト、ポッドキャスト+2,000人のFacebookグループと、10年以上かけて売買を繰り返してきた。彼は「自分は読者を作っているのだと気づいた」と振り返っている。Website Investing Publicationが2ヶ月で無料2,700人に届いたのは、ゼロから集めたからではなく、既存の観客を移したからだ。出典もこれを「既存のオーディエンスを活用したこと」と「Substackに早期に入ったこと」の2点で説明している。
売却額の具体的な数字、倍率、契約者への支払額、広告主の数と単価は開示されていない。また、Patey氏がその後2022年初にAlts(オルタナティブ資産のニュースレター)をFlippaへアクハイアの形で売却し、現在は契約者としてAltsを運営しつつPatey Media Servicesを所有していることも記されているが、こちらの条件も非公開である。
何が真似できて、何が真似できないか
真似できるのは、課金の位置を動かす設計判断だ。有料購読が数十人で止まっているとき、価格や内容を変える前に「無料層が存在するか」を確認する価値がある。この事例では、無料層の追加が有料転換だけでなく、広告・アフィリエイトという別系統の収益を丸ごと生んだ。
もうひとつ真似できるのが、広告主リストを買い手候補リストとして扱うことである。既に金を払ってその媒体に関わっている相手は、外部の買い手より意思決定が速い。
真似できないのは、10年で3件の売却を経験した実績と、その過程で蓄積された観客である。加えて、2020年5月というSubstackの初期にいたというタイミングも選べない。同じ設計を2026年に実行しても、無料層が2ヶ月で2,700人に届く保証はない。この事例の7ヶ月は、7ヶ月で作られたものではなく、11年目に7ヶ月かけて回収されたものと読むのが正確だ。
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出典
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