Notionとスプレッドシートをつなぐだけで月商126万円。2週間で作ったアドオンが有料400人に届くまで
アルゼンチン在住の個人開発者LeandroがNotion APIの公開直後2週間で作ったNotion2Sheetsは、インストール約4万件・有料顧客400人超・MRR $8,400に到達。転機は無料プランの廃止だった。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商126万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から42%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。
2週間で作ったアドオンが月商126万円になるまで
Notionが2021年5月にパブリックAPIのベータを公開したとき、アルゼンチン・ブエノスアイレス在住の開発者Leandroは2週間でMVPを組み上げ、Google Workspace Marketplaceに公開した。プロダクト名はNotion2Sheets。Notionのデータベースをそのままスプレッドシートに同期するだけの、機能としては地味なアドオンである。
そのアドオンが、累計インストール約40,000件、有料顧客400人超、MRR $8,400にまで育った。年商換算で約1,500万円。開発も運営も一人で、名前の挙がる主要な固定費はメール配信のSendGrid $89.90/月だけだ。
数字の全体像
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| MRR | $8,400 |
| 有料顧客 | 400人超 |
| 累計インストール | 約40,000件 |
| MVP開発期間 | 2週間 |
| 最初の50ユーザー | 公開から10日 |
| 最初の有料顧客10人 | 有料プラン導入から2ヶ月 |
| 主要コスト | SendGrid $89.90/月 |
| 体制 | 個人1名 |
インストール40,000件に対して有料400人超なので、無料を含む全ユーザーからの有料転換率は1%程度。マイクロSaaSとしては珍しくない水準だが、逆に言えばこの規模の月商をつくるのに4万件のインストールが必要だった、という重さの数字でもある。
「作れるもの」ではなく「引っ張られるもの」を選んだ
Leandroはフリーランスのソフトウェア開発者として8年の経験があり、Sheets APIにはすでに慣れていた。だが着手の決め手は技術ではない。彼はRedditのNotionコミュニティやFacebookグループを調べ、「Sheetsと同期できれば、今は不可能なワークフローが可能になる」という声の塊を先に見つけている。作りたいものを作ったのではなく、既に言語化されている不満に手を伸ばした形だ。
本人の言葉が、この事例の核心を一行で示している。
ユーザーがプロダクトを引っ張ってくれる感覚が必要であって、自分が押し込む感覚ではだめだ
MVPは荒く、バグもあった。それでも先に公開したことについて、オープンな場に置いたからこそユーザーとの会話が始まり、そこから作り込めたと述べている。公開から10日で50ユーザー。本人はこれを「素晴らしかった」と振り返り、過去の自作サービスとは手応えの質が違ったと語る。10日で50という数字自体は小さいが、押し売りをせずに集まったという点で先行指標として機能した。
想定顧客も明確だ。Notionを深く使い込んでいる企業のオペレーション、プロジェクト管理、プロダクト管理の担当者。彼らはNotion単体の限界をSheets連携で越えようとしている。買い手の職種が絞れているため、コミュニティでの一言が刺さりやすい。
決定打になった判断:無料プランを畳んだこと
この事業の軌道が明確に変わったのは、機能追加でも広告でもなく、価格設計の変更である。
当初のNotion2Sheetsは無料で使えた。制限はワークスペース3つ、データベース3つ、更新は1時間おき。だがLeandro自身が「無料であまりに多くを与えすぎていた」と認めている。日常業務でNotionとSheetsを同期したい人にとって、この制限は十分に実用的だったからだ。
無料アカウントを廃止した後、彼は「本当に良い成長の2ヶ月」を得たと述べている。売上の絶対値の前後比較までは開示されていないが、変化のきっかけとして本人が明示的に挙げているのはこの一点だけだ。プロダクトも流入経路も変えず、無料で満たされていた需要を有料側へ押し出しただけで数字が動いた、という構図である。
これは「無料をやめれば伸びる」という一般則ではない。効いた理由は、無料枠が既にコア価値(継続的な自動同期)をまるごと提供してしまっており、有料に移る動機が存在しなかったからだ。無料枠の設計として正しいのは、価値を体験させつつ本番運用には足りない状態にすることで、Notion2Sheetsの初期設定はその線を越えていた。なお本人は、最適な各プランの上限値を探る作業は今も終わっていないとも書いている。
何が効いたのか:検索面の先取り
現時点で最も効いている流入経路は、Google Workspace Marketplaceそのものである。マーケットプレイスで「Notion」と検索すると、Notion2Sheetsが最上位に表示される。
この構造は強い。マーケットプレイスに来ている時点で、ユーザーは「NotionをGoogleの世界とつなぎたい」という意図まで絞り込まれている。そこに常設の答えとして置かれるので、説得のコストがほぼゼロになる。しかもインストール数と評価がランキングを押し上げ、上位表示がさらにインストールを生むという自己強化のループに入っている。API公開の2週間後という早さで棚を取ったことが、数年分の複利になったと読める。
短期の跳ね上げとして本人が「間違いなく自分がした最良のマーケティング判断」と評価しているのはProduct Huntのローンチだ。Notion社のBenをハンター(投稿者)に立て、トップ10入りとニュースレター掲載を獲得している。第三者、それも当のNotion関係者が紹介するという形式が、無名の個人開発アドオンに信用を貸した格好である。
効かなかったもの、そして減衰したもの
Hacker Newsではフロントページに載っている。トラフィックは大きく動いたが、本人は「インストールにも売上にもつながらなかった」と切って捨てている。読者層と買い手(業務でNotionを回している非エンジニア寄りの担当者)がずれていた、という素直な説明がつく。話題性のある流入が事業指標に効くとは限らない実例だ。
初期に効いたソーシャル施策も、そのままでは機能しなくなっている。Redditはモデレーターの方針が変わり、自己宣伝に厳しくなった。彼は宣伝をやめ、関連する質問に答えるだけの関わり方に切り替えている。同じ場所で同じことを続けても同じ結果は出ない、という当たり前が数年スケールで起きている。
成長も一本調子ではない。無料廃止後の好調な2ヶ月のあと、「10月はかなり静かで、11月も同じように見える」と踊り場を認めている。
リスクと限界
この事業はNotionとGoogleという二つのプラットフォームの上に同時に乗っている。Notionが公式に外部連携を拡充すれば需要そのものが消え、Google Workspace Marketplaceのランキング仕様や審査基準が変われば主要流入が細る。出典記事では競合やNotion本体の機能追加リスクは論じられておらず、そこは読者側で割り引いて読む必要がある。
もう一点、有料転換率1%という数字は、無料インストールの大半が「一度試して終わり」であることを意味する。40,000という総数は誇れるが、実質的な事業規模は400人という別の数字で決まっている。
再現の条件と限界
再現しやすいのは、API解禁のような公式の変化が起きた直後に2週間で棚を取りにいく速度、コミュニティの書き込みから需要を先に確認する順序、そして無料枠がコア価値を丸ごと渡していないかを点検する視点だ。いずれも資本を必要としない。
再現しにくいのは、2021年5月のNotion API公開という一度きりのタイミングと、Sheets APIを既に扱えた8年分の実務経験、そしてNotion社の人物をProduct Huntのハンターに立てられた縁である。特に最後の一つは、同じ手を後から真似しても同じ増幅は得られない。プラットフォームの解禁イベントは繰り返し起こるので、この事例から持ち帰るべきは特定の手法ではなく、解禁が来たときに2週間で動ける準備をしておくという構えのほうだろう。
あわせて読みたい
出典
本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。
この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →
近い規模・近い業種の事例
よく読まれている記事
新着記事
- 2026年9月1日
CyberLeads、19個の失敗の次に31日で作った「調達企業リスト販売」が月$53.7K。無料ニュースレターが営業装置
- 2026年9月1日
サウナイキタイ、趣味で始めた検索サイトが2期目売上約7,288万円。社員ゼロ・月370円「定員制サブスク」の設計
- 2026年8月31日
SEObot、AIが記事を書くSaaSがMRR $46K・累計$1.8M。数字の出どころはStripe連携の公開ダッシュボード
- 2026年8月31日
Feather、「Notionで書いてブログにする」SaaSを創業2年・$250Kで売却。買い手はTweet Hunterを売ったTibo
- 2026年8月27日
GummySearch、MRR $35Kの黒字のまま閉鎖を選んだRedditリサーチSaaS。API商用ライセンスが取れなかった4年



