TravelMamas、初年度19,500人が年間200万人に。家族旅行ブログが13年で届いた月商$15,000
Colleen Lanin氏が2009年3月に始めた家族旅行ブログ。初年度の訪問者19,500人未満・PV96,000から、年間200万ユニークユーザー・月商$15,000へ。派手な転機はなく年12〜56%の複利成長だった。
執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)
月商225万円は、月商を公開している掲載227件のうち上位46%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。
本の宣伝で始めたブログが、本体になった
Colleen Lanin氏が最初に作ったのは、赤ちゃんや小さな子どもを連れた旅行についての本だった。エージェントから「本を売るためにブログを始めてはどうか」と勧められ、2009年3月にTravelMamas.comを開設する。本のほうは出版社に断られ、自費出版になった。断りの理由は「ネットに無料で転がっている旅行情報に、読者は金を払わない」というものだった。
その判断は、ある意味では正しかった。無料で読める旅行情報が氾濫する市場で、Lanin氏が最終的に作ったのは有料の本ではなく、無料で読めるブログを収益化する事業だったからだ。現在の月商は$15,000。体制は創業者1名と従業員1名である。
数字の全体像
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 月商 | $15,000 |
| 開始 | 2009年3月(TravelMamas.com、のちにColleen Travels Betweenへ改称) |
| 初年度の訪問者 | 19,500人未満/年 |
| 初年度のPV | 96,000(年間累計) |
| 現在の訪問者 | 年間200万ユニークユーザー超 |
| 現在のPV | 月20万〜35万超 |
| 年成長率 | 12〜56%(2020年まで) |
| 体制 | 創業者1名+従業員1名 |
| 拠点 | 米アリゾナ州スコッツデール |
収益の内訳
収益源は一つではない。
- 広告ネットワーク(Mediavine経由の広告配信)
- アフィリエイト報酬(記事内リンク経由の予約・購入。Commission Junctionなど)
- スポンサード記事(ブランドや観光地からの依頼)
- 書籍印税(『The Travel Mamas’ Guide』)
- その他: 講演、Twitterパーティー、ブログ講座、メディアキャンペーン、観光地のテレビCM出演
本人は「Travel Mamasは初年度から利益は出ていた。ただし最初の数年間、その利益はごくわずかだった」と述べている。赤字を掘って一気に伸ばす形ではなく、小さな黒字を長く続ける形の事業だ。
転機はどこだったか
正直に書くと、この事例に劇的な転機はない。単一のバズも、単一の提携も、単一のプラットフォーム変更も、軌道を変えてはいない。効いたのは13年前後の継続そのもので、その根拠は本人が開示している成長率にある。
年成長率は「12〜56%」と幅がある。初年度の訪問者19,500人が年間200万人になったということは、およそ103倍だ。取材はコロナ後の回復に触れているため、創業からおよそ13年が経った時点と見てよい。13年で103倍になるには年平均約43%の成長が必要で、これは開示された12〜56%のレンジのちょうど中に収まる。つまりどこかで一度だけ跳ねたのではなく、開示レンジ通りの成長が十数回積み重なった結果として現在の数字がある。爆発が起きていれば、ある年の成長率が数百%として記録に残るはずだが、そうはなっていない。
その上で、軌道を「維持できるもの」に変えた判断は二つ特定できる。
一つは、技術基盤の載せ替えである。彼女は当初、ブログを時代遅れのDreamweaverで作っていた。初めてブログ関連のカンファレンスに参加した後、開発者を雇ってWordPressへ移行する。本人はこれで作業の流れが「大幅に改善した」と述べている。更新のたびに手作業が発生する状態のままでは、13年分の記事は積み上がらない。
もう一つは、集客の主軸をSEOに固定したことだ。「読者を集める私の主要な手段は、SEOへの強い理解だ。ソフトウェア(SEMRush)を使い、順位を上げるためにキーワード分析に多くの時間を費やしている」と本人は語る。有料広告への支出はほとんどなく、流入の大半はオーガニックである。
なぜ複利が効いたのか
SEOを主軸に据えた選択が構造的に効いた理由は、記事が資産として在庫になるからだ。SNS投稿は投稿した週に消費されて終わるが、検索から来る記事は公開後も年単位で流入を生み続ける。年40%前後の成長を13年続けられたのは、毎年ゼロから集客をやり直していないからである。逆に言えば、この事業のグラフは「今年の頑張り」ではなく「過去13年分の記事の総和」を描いている。
SNSの使い分けにも、効果の序列が明確に出ている。本人の評価では、Pinterestがブログのページビューに最も効き、Facebookが最も忠実な読者とエンゲージメントを生み、Twitterは中程度、Instagramはクリックにつながりにくい。ただしInstagramはブランドが最も重視する。ここには面白いねじれがある。読者を連れてくる力が最も弱いプラットフォームが、スポンサード案件の獲得には最も効く。収益源が複数あるからこそ、成果の出ないチャネルにも別の役割が生まれる構造だ。メールのニュースレターは月1回で、開封率もクリック率も低いと率直に開示している。
もう一つの補強材が「教えること」だ。彼女はUC San Diego ExtensionとSan Diego Writers, Inkで5年以上ブログ講座を担当した。「何かを習得したければ、それを教えろ」という言い回しは、実際に自分の専門性を上げる働きをしたという。講座は直接の収益源であると同時に、SEOやマネタイズの知識を体系化する装置でもあった。
つまずいたこと
最初の数か月で、競合する家族旅行ブログの弁護士から名称が似ているとして警告書(Cease and Desist)が2通届いた。のちに別の旅行専門家からもう1通。彼女は弁護士を雇い、商標を出願した。費用も精神的負担も大きかったが、戦う価値はあったと振り返っている。個人ブログであっても、名前を巡る争いは開設直後から起こりうる。
2020年3月、コロナ禍のロックダウンで流入は激減した。旅行ブログは需要そのものが消える種類の事業であり、これは施策では防げない。取材時点では前年同期比263%増まで回復し、コロナ前の水準にほぼ戻っている。
支出についての彼女の立場ははっきりしている。「多くのブロガーは、収入が出るまでブログに一切お金を使うべきではないと考えている。しかし、何の支出もせずに成功する事業が他にあるだろうか」。ローンは組まず、事業用クレジットカードの範囲で、デザイン、写真、カンファレンス、講座、技術サポートに再投資し続けた。
何が真似でき、何ができないか
真似できるのは、設計の部分だ。検索流入を主軸に据えること、記事を資産として積むこと、収益源を広告・アフィリエイト・スポンサード・印税に分散させること、チャネルごとに役割(集客用か、案件獲得用か)を割り当てること。どれも今日から始められるし、資本もほとんど要らない。
真似しにくいのは、時間そのものである。この事例の主成分は13年であって、施策ではない。同じ施策を2年続けても、複利は13年分にはならない。加えて、2009年という開始時期は個人ブログにとって有利な条件だった。本人も「2009年にTravel Mamasを立ち上げた当時、私たちブロガーはまだ収益化の方法を分かっていなかった」と述べている——競争が薄く、検索結果に入り込む余地が今より大きかった時期である。
再現の限界も直視しておくべきだ。年間200万ユニークユーザーで月商$15,000ということは、訪問者1人あたりの月間収益はごく小さい。広告収入型メディアは規模が要る事業であり、少ない読者で高単価を取るモデルとは経済性がまったく違う。彼女自身、今後の選択肢としてライターの追加雇用、VC出資の検討、そしてサイトとブランドの売却まで挙げている。個人で回せる上限に達したときにどうするかは、この型の事業に共通する次の問いになる。
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出典
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