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ヨガアプリFlogaが月商1万ドル。未完成のままプレローンチし24時間で12万ドルを集めた

物理プロダクトのヨガカードをKickstarterで初月20万ドル売った創業者が、2025年5月にヨガアプリFlogaを未完成のままプレローンチ。アプリストア外のライフタイムディールで24時間に12万ドルを集め、約1年後に月商1万ドル・アクティブ4,000人へ。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

ヨガアプリFlogaが月商1万ドル。未完成のままプレローンチし24時間で12万ドルを集めた

月商150万円は、月商を公開している掲載227件のうち下から49%。掲載全体の月商中央値は157万円です(データ集計)。

ヨガアプリ「Floga」(floga.io)の創業者Umberto Mezzadra氏は、アプリを作る前は紙を売っていた。2020年、Kickstarterで発売したヨガ用のカードデッキ「PlayPauseBe」は、初月だけで20万ドル超を集めている。電源も画面も要らない、完全にアナログなプロダクトだった。

その延長線上で、氏は同じブランドからアプリを出した。2025年5月、まだ完成していない状態でプレローンチし、24時間で12万ドル超を売っている。しかもアプリストアを経由しなかったため、プラットフォーム手数料はかからず、売上は全額手元に残った。Indie Hackersが記事を公開した2026年6月時点で、Flogaのアクティブユーザーは約4,000人、月商はサブスクリプションと年間プランを合わせて約1万ドルである。

この事例で検証する価値があるのは、「24時間で12万ドル」と「月商1万ドル」という二つの数字が、同じ会社の同じプロダクトから出ているという点だ。両者は桁も性質もまったく違う。

時系列で見るFloga

時期出来事数字
2012年シード調達したスタートアップが失敗
2016年ごろ広告・グロース担当としてテック業界に復帰
2020年ヨガカードデッキPlayPauseBeをKickstarterで発売初月20万ドル超
記事の約1年半前Flogaの構想を開始、リスボンで開発者を確保開発者1名
2025年5月アプリストア外でプレローンチ(ライフタイムディール)24時間で12万ドル超
2026年6月記事公開時点月商約1万ドル、アクティブ約4,000人

Mezzadra氏の経歴は一直線ではない。経済学を学び、企業勤めを経て、2012年に出資を受けたスタートアップで失敗し、その後はスキーインストラクターやファッションフォトグラファーとして働いている。テック業界に戻ったのは2016年ごろ、広告とグロース戦略の担当者としてだった。PlayPauseBeは、その傍らでパートナーと始めたサイドプロジェクトである。

画面から離れることを売っていたブランドが、画面の中に入る

Flogaはヨガ指導者と実践者の両方に向けたアプリで、技術構成はFlutter(iOS/Androidを単一コードベースで開発)、バックエンドはFirebase、課金はRevenueCat、動画配信はVimeo、プッシュ通知はOneSignalという、個人開発でも珍しくない組み合わせだ。ローンチ時のFirebase費用は月25ドル程度だったという。

だがこのプロダクトには、技術以前の問題が一つあった。PlayPauseBeは「スクリーンから離れる」ことを価値として売ってきたブランドである。そのブランドがアプリを出すのは、自己矛盾に見える。氏はこれを隠さず、なぜアプリを作るのかを事前に説明し、位置づけを明示することで処理した。ごまかせば既存顧客との信頼を失う類の矛盾だったからだ。

もう一つの制約は、氏自身が開発者ではないことだった。どこまで作れば「十分」なのかを判断する基準を持たず、仕様を膨らませたくなる衝動と戦うことになる。結果として、Flogaは2種類のヨガスタイルだけを載せて公開されている。

決定打は、まだ存在しないものを売ると決めたことだった

軌道が変わった瞬間は特定できる。プロダクトを完成させてからアプリストアに出す、という順番を捨てた判断である。

前後の数字は極端だ。プレローンチ以前、Flogaの売上はゼロだった。プレローンチの24時間後、売上は12万ドル超になっている。この間にプロダクトが完成したわけではない。変わったのは売り方だけである。

その売り方は四つの要素でできている。完成を待たずに売り、アプリストアを通さず自社チャネルで売った。サブスクではなく買い切りのライフタイムディールにし、枠数と締切を区切って返金しないと明言した。氏の言葉では「沈黙ではなく、温かさに向かってローンチする(launch to warmth instead of silence)」となる。

なぜこの売り方で12万ドルが集まったのか

施策名だけを写しても再現しない。効いた構造は三つに分解できる。

一つ目は、送り先が「温かい」だけでなく「支払い済み」だったことだ。PlayPauseBeのKickstarterで20万ドル超を払った人々は、ヨガに関心があるだけでなく、このブランドに対して実際に財布を開いた実績がある。無料の見込み客リストと、購買履歴のあるリストは、同じ人数でも別物である。

二つ目は、アプリストアの外で売ったことの二重の効果だ。手数料15〜30%が引かれない、というのは分かりやすい方の効果にすぎない。より本質的なのは、ストアの外なら「まだ存在しないアプリ」を売れるという点である。審査を通過しないと並べられないストアでは、この順番自体が成立しない。

三つ目は、返金なし・枠数限定・締切という設計が、購入者の心理状態を「検討」から「決断」に切り替えたことだ。氏は返金ポリシーを置かないことで、迷いよりもコミットメントを引き出したと述べている。同時に、この前払いは開発側の仕様も決めた。「完成前から課金することは、明確さを強制する(charging from the start, even before the product is finished, forces clarity)」。2種類のヨガスタイルで公開できたのは、この強制力があったからだ。

なお、この一連の前段には検証面談がある。氏は顧客に対して、アプリの構想を明かさず、解決策へ誘導もせずに、抱えている問題だけを聞いた。「礼儀正しい励ましは気分がいいが、何も教えてくれない」というのが本人の総括である。

12万ドルは、その後1年分の売上と同じ額だった

ここからが数字の検証になる。月商1万ドルを12ヶ月積み上げると12万ドルになる。つまりプレローンチの1日で、その後およそ1年分に相当する金額を先に受け取っていたことになる。景気のいい数字に見えるが、裏を返せば、この12万ドルには翌月以降の再現性が一切ない。

さらに、ライフタイムディールは売上ではなく永久債務に近い。購入者は追加課金なしで使い続けるが、Vimeoの動画配信費もFirebaseの費用も、利用が続く限り発生する。ローンチ時に月25ドルだったインフラ費が、利用者の増加にともなって上がらない保証はない。

アクティブユーザー約4,000人に対して月商1万ドルという比率も直視しておきたい。単純に割ると1人あたり月2.5ドルである。サブスクの単価は開示されていないため断定はできないが、仮に月10ドル前後のプランだとすれば、継続課金しているのは1,000人前後で、残りはライフタイム購入者を中心とする非課金の継続利用者、という構図になる。これは推計であって開示された内訳ではないが、少なくとも「4,000人全員が毎月払っている」わけではないことは、月商の数字から確実に言える。

リスクはもう一つある。開発をリスボンの開発者1名に依存している点だ。非エンジニア創業者が仕様の完成度を判断できない状態で、この体制がどこまで拡張できるかは記事からは読み取れない。氏は将来像として「ヨガ界のApple」を掲げ、アプリ・物理プロダクト・指導者養成スクール・コミュニティを束ねる構想を語っているが、現時点の実績はアクティブ4,000人・月商1万ドルである。

持ち出せる部分と、持ち出せない部分

再現できるのは手順の方だ。解決策を見せずに問題だけを聞く検証面談、完成前に課金して仕様を固める順番、枠数と締切による決断の強制、機能を2つに絞る割り切り、そしてストア外決済で手数料を回避する設計。これらはヨガと無関係の領域でも移植できる。

再現できないのは、その手順が乗る土台である。Kickstarterで20万ドルを払った既存の購買者リストは、一日では作れない。広告とグロースを職業にしてきた10年分の勘も、ブランドの世界観も同様だ。「温かさに向かってローンチする」という助言が機能するのは、温かい相手がすでに存在する場合に限られる。存在しないなら、まず作るべきは物理プロダクトでもアプリでもなく、その相手である。

順序を逆にすれば、この事例は「アプリで当てた話」ではない。2020年のカードデッキで作った顧客基盤を、2025年に別の形式で再度換金した話として読むのが正確だろう。

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

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