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2人・約2か月・広告費ゼロで2000万本。「めっちゃカメレオン」の販売曲線と790円買い切りの損益

2026年6月10日発売のかくれんぼゲームが63日で2000万本。開発は2人・約2か月、広告費もサーバー費もゼロ。当初目標10万本の200倍に届いた販売曲線と、790円買い切りの手残りを公開情報から検証する。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

2人・約2か月・広告費ゼロで2000万本。「めっちゃカメレオン」の販売曲線と790円買い切りの損益

発売から63日で2000万本。開発者は2人、制作期間は約2か月、広告費もサーバー費もゼロ。2026年6月10日にSteamで発売された『めっちゃカメレオン』の数字は、インディーゲームの相場をいくつも外れている。ただしこの事例が記録に値するのは桁の大きさではない。売れた理由の相当部分が、発売前の設計として説明できてしまう点にある。開発者インタビューが複数出ているので、販売曲線と作り方を並べて、どこまでが再現可能な話なのかを分けていく。

2人でどこを分けていたか

体制はレモリオン(LEMORION)氏とはがねいろ(HAGANEIRO)氏の2人。電ファミニコゲーマーのインタビューによれば、レモリオン氏がグラフィック・企画・BGM・プレスリリースなどの文章、はがねいろ氏がシステム関連とエフェクトを担当している。GameWithのインタビューでは、レモリオン氏がUEFN(Unreal Editor for Fortnite)の公開初日から飛びついてゲーム制作を始めたこと、そこでの初ヒットが『氷鬼』だったことも語られている。

技術構成はUnreal Engine + EOS(Epic Online Services)。マッチングをEOSに寄せたことが、後述する「サーバー費ゼロ」の正体だ。オンライン対戦ゲームでありながら、同時接続が数十万人規模に膨らんでも運用コストが増えない構造になっている。

販売曲線 — 12日で700万本、63日で2000万本

時点経過販売本数
2026年6月10日発売
6月11日ごろ2日目50万本
6月13日ごろ4日目100万本
6月14日ごろ5日目200万本
6月16日ごろ7日目300万本
6月22日12日目700万本
6月26日16日目1000万本
7月5日25日目1500万本
8月12日63日目2000万本

初期の日数はITmedia NEWSの報道、6月26日以降は4Gamerと電ファミニコゲーマーが伝えたレモリオン氏のX投稿による。GameWithのインタビューで語られた当初の目標は10万本だったので、実績はその200倍に当たる。

累計販売本数の推移(発売からの日数)

0 500 1,000 1,500 2,000 発売 20日 40日 63日 700万 1000万 1500万 2000万本 万本
各時点の公表値(報道と開発者のX投稿)を結んだ折れ線。12日で700万本、16日で1000万本、63日で2000万本。伸びの主戦場は最初の2週間にある。

曲線の形も見ておきたい。700万本から1000万本までは4日、1000万本から1500万本までは9日、1500万本から2000万本までは38日かかっている。1日あたりの販売本数は6月下旬の約75万本から、7〜8月には約13万本へ、およそ6分の1に落ちている。爆発は2週間で終わり、その後は長い減衰に入った、というのが数字の読み方になる。

Steam最大同時接続は34万人を記録した(電ファミニコゲーマー、6月22日)。レビューは6月26日時点で2万8000件・好評率83%、8月12日時点のストアページでは累計73,402件「非常に好評」、直近30日は16,888件で88%が好評となっている。

「バズった」のではなく、バズる導線が置かれていた

広告費ゼロで世界に届いた経路は、インタビューを読むかぎり運任せではない。

まずテストプレイの設計だ。Game*Sparkのインタビューでレモリオン氏は、テストに各国のプレイヤーを混ぜ、SNS投稿を自由にしたと述べている。結果としてX・TikTok・Instagram・YouTubeで大量に拡散し、「リリース前の認知が大きかった」。ウィッシュリストは発売日時点で60万、6月末のインタビュー時点では約200万に積み上がっていた。発売初日に50万本近くが動く土台は、発売前に作られていたことになる。

トレーラーにも仕掛けがある。電ファミニコゲーマーで本人が「トレーラーで丸まって肉に擬態する映像を入れることでそういったSNS映えする隠れ方を誘発したつもりです」と説明している。何を撮ってほしいかを先に見せる、という考え方だ。これは本人の自己評価だが、テスターのSNS投稿の解禁からこの擬態映像まで仕込みが一方向に揃っている以上、本記事も同じ結論を取る。

ゲームシステム側も同じ方向を向いている。着想元はテレビで紹介されていたボディペイントアーティストだが、鬼役に銃を持たせたのは仕様の複雑さを減らすためであり、同時にSNS映えを狙ったものだとWikipediaの記述にもある。動画で15秒見れば何のゲームか分かる。実況・切り抜きとの相性は、ジャンル選定の段階で決まっていた。

地域構成もこの読みを補強する。電ファミニコゲーマーによれば購入者は米国が最多、次いで中国で、日本は5〜10%程度。ストアページの日本語レビューは687件で、累計7万件超に対して1%に届かない。国内メディアが「日本発の快挙」として扱う一方、実態としては最初から海外市場の商品だった。

790円買い切りで、いくら残るのか

価格は日本で790円(税抜718円)、米国で5.99ドル。ここから手残りを推し量ってみる。

プレジデントオンラインの記事は、1500万本時点の売上総額を約6000万ドルとする推計を紹介している。これを割り戻すと1本あたり約4ドル。定価5.99ドルの約67%にとどまるのは、地域別価格(中国・トルコ・ロシアなどは大幅に安い)、返金、各国の税が効いているためだ。

この単価を2000万本に当てはめると、売上総額はおよそ8000万ドル、1ドル150円換算で約120億円という桁になる。ただしこれは本サイトによる単純な外挿であり、プラットフォーム手数料も税も引く前の総額だ。2人の手元にいくら入るかは公開されていない。

それでも損益の形は見える。変動費がほぼ存在しない。EOSでサーバー費がかからず、広告費はゼロ、追加の人件費もない。制作は約2か月(前作から流用したマルチプレイシステムを含めた総開発期間は4〜5か月とGameWithは伝えている)。固定費が2人分の時間だけの事業に、数千万ドル規模の売上が乗っている構造だ。運営コストが売上に比例しないという点では、経費が年12,600ドルで年商300万ドルのPhotopeaと同じ側の損益に立っている。

分母にあるのは、7か月かけて外した前作

この事例を「2か月で2000万本」とだけ要約すると、いちばん重要な部分が抜ける。

本作の企画は、前作『LINK Penguins』が起点になっている。Game*Sparkのインタビューでレモリオン氏はこう語っている。7か月かけて開発し発売したが「想像より遊んでもらえませんでした」。せっかく作ったマルチプレイシステムがもったいないので、再利用して短期でもう1本作ろう、というのが『めっちゃカメレオン』の出発点だった。

つまり2か月という数字は、7か月分の失敗の上に乗っている。UEFNから始まり『ペンギンホテル』『氷鬼』『LINK Penguins』と作り続けた蓄積があり、その資産の使い回しとして本作がある。開発期間だけを切り取ると再現可能に見えるが、分母は7か月ではなく数年だ。2か月で当てたのではなく、数年かけて2か月で作れる体になっていた。同じ土俵で、13本のゲームを出して累計700円だった開発者の記録も本サイトには載っている。両方を並べて初めて、この2000万本の位置が分かる。

想定どおりにいかなかったこと

  • チーター。7月上旬に自動ペイントのチートが出回り、開発元は7月7日のバージョン2.5.1で連射チートや推薦の大量付与への対策を入れた。AUTOMATONによれば、プレイヤー側が赤い矢印を描いてチーターの位置を指し示す対抗戦がTikTokで話題になるという、この作品らしい収束の仕方をしている
  • 非公式グッズ。7月12日、開発者は「公式グッズは国内外問わず販売しておりません。ネット上で発売されているものは全て非公式品」と注意喚起せざるを得なかった。ヒットの速度に権利側の体制が追いつかない
  • 発売2週間前の作り直し。GameWithによれば、テストプレイで「マップを増やしたほうがいい」と指摘され、直前に3マップを追加している。初期マップ「かくれんぼの館」のモデル制作にも1か月かかっており、2か月という工期はかなり無理をした結果でもある

ピークは3週間、と本人が言う商売

6月末のインタビューでレモリオン氏は、プレイヤーに向けて「おそらく後3週間ぐらいがピークだと思いますので、人がたくさんいるうちに楽しんでください!」と書いている。ヒットの真っ最中に自分でピークアウトを宣言する開発者は珍しい。

そして実際、販売ペースは前述のとおり6分の1に落ちた。買い切り790円のマルチプレイゲームは、月額課金のようなストック収益を持たない。売上は新規購入者の数そのものであり、同時接続が減れば「人がいないから買わない」という逆回転も起きる。瞬間風速の大きさと持続性が別物であることは、公開1ヶ月で月間2億PVに達した直後に売却された質問箱(Peing)とも共通する構図だ。

運営側もそこは織り込み済みだ、と編集部は見ている。ほぼ毎日のアップデート、新マップ(シュガーランド・大阪・エジプト・バックルーム)、新キャラクター「キューブ」、HIKAKIN氏・『8番出口』・『Garten of Banban』とのコラボマップ。11月にはトイズキャビンと組んだカプセルトイ「わっかチャーム」全7種(1回300円)も控える。ソフト単体の販売から、IPとしての収益源を増やす方向に手を打っている段階だ。次回作は『ペンギンホテル3』が予定されている。

何が持ち帰れて、何が持ち帰れないか

再現できるのは、「動画で見て面白いか」を企画の判定基準に置くという一点に尽きる。SNS映えする隠れ方をトレーラーで例示する、鬼に銃を持たせて画面を分かりやすくする、テスターの撮影を解禁する。どれも、拡散を後工程の宣伝ではなく製品設計の一部として扱っている。広告費ゼロは、広告を使わなかったのではなく、広告を要らなくする形にゲームを寄せた結果に近い。

もう一つは、運用コストが売上に連動しない構成を先に選ぶこと。EOSの採用は地味だが、同接34万人でもサーバー費が増えないという事実が、この事業の利益率をほぼ決めている。小さいチームが当てたときに潰れないための保険として、これは規模を問わず効く。

一方で持ち帰れないものも明確だ。2000万本という結果は分布の極端な端にあり、平均的な期待値ではない。20言語に近い展開も、日本市場が5〜10%という前提込みで初めて成立している。そして買い切りである以上、この売上は継続収益ではなく一過性の山だ。この事例から「小さく作れば当たる」を導くのは誤読で、正確には**「小さく作り続けた人が、当たったときに全部取れる構成にしていた」**という話である。同じインディーゲームでも、自己資金270万円から6年かけて約9.7億円で売却されたStreets of Rogueのように、時間軸の長い当て方も並存している。

開発元は損益を公開していないため、利益額は本記事では扱っていない。

出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 「報道」は他メディアが取材・整理した記事で、数字はその報道時点のものです。 詳細は必ず出典をご確認ください。

この記事は、出典として「Small Start(small-start.com)」の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュース・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載できます(事前連絡は不要です)。 転載・引用について →

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