事例 売却済み

年間40万PVのブログを6日で買収。550記事を100記事に絞り、2ヶ月で訪問者120%

会社員が副業として年間40万PVのブログとYouTubeチャンネルを買収。買い申し込みから成約まで6日。譲受後は550記事を100記事に絞ってリライトし、カテゴリを3分割。引き継ぎ2ヶ月で訪問者数が120%に伸びた。

執筆: Small Start 編集部(公開情報の要約+独自分析)

年間40万PVのブログを6日で買収。550記事を100記事に絞り、2ヶ月で訪問者120%

「6日で成約」という見出しだけを見ると、勢いで買った話に見える。だが取材記事を読むと順序が逆であることがわかる。買い手はTRANBIの無料会員として案件を眺めている段階で、自分が買ってよい事業の条件を六つに固定していた。条件を先に決めていたから、条件に合う案件が現れたときに迷う理由がなかった——それがこの6日間の正体である。

TRANBIが2021年10月に公開したインタビューに登場するのは、ヘイ株式会社(STORESプラットフォームを展開)でカスタマーサクセス部門の責任者を務める寺門諒太さん、当時32歳。本業のかたわら三つの副業を回す会社員が、「プログラミング学習・起業志望者向けブログ」と「YouTubeチャンネル」を買い、譲受から2ヶ月で訪問者数を120%に伸ばした記録を分解する。

買収から2ヶ月までの経過

局面内容
前提本業は会社員(平日9時間)。副業はスタートアップ5〜6社への経営コンサルティング
案件探索TRANBIの無料会員として案件を精査。「これだ」と思える案件に出会った段階で有料会員へ移行し買い申し込み
交渉買い申し込みから成約まで6日間
対象年間400,000PVのIT・起業志望者向けブログ。掲載記事550本。別途YouTubeチャンネルも買収
価格記事に金額の記載なし。値下げ交渉は持ちかけたが、提示金額どおりで合意
引き継ぎ売り手が事業譲渡後1ヶ月のサポート期間を設定
譲受直後550記事すべてに目を通し、方向性に合う約100記事に絞ってリライト
構造変更「ベンチャー転職」「起業」「プログラミング学習」の3カテゴリ構成に変更、アフィリエイト広告を導入
2ヶ月後訪問者数が120%に

稼働時間は1日1時間、週5〜10時間。まとめて時間を取りたいときは土日に寄せる、という配分である。

買った資産の性質

売り手はスタートアップ企業の経営者で、このブログを「本事業のための集客チャネル」として運営していた。事業転換により集客チャネルが不要になったことが売却の理由である。つまりこのブログは、アフィリエイトなどでの収益化をそもそも行っていなかった。

ここが評価上の難所になる。買い手自身が「現状の収益ベースでの評価は難しくて」と述べているとおり、収益実績のない資産をいくらで買うかという問題が残る。彼が取った方法は、交渉中にブログのアクセス解析ツールを見せてもらい、そこから「サイトの潜在的な収益を見積り、適正金額だと判断」するというものだった。しかもそのアクセス解析ツールは本業で使っているものと同じで、どのデータを見るべきかを把握していたため確認がスムーズに進んだという。

値下げについては、ライバルが売り手の提示金額をそのまま了承していたこと、そして「提示金額に納得いただけて、スピード感を持って進められる方にお譲りしたい」という売り手の言葉を聞いたことから、提示額どおりで進める判断をしている。

潮目はどこにあったか

数字が動いた瞬間は明確である。譲受後に550記事を100記事へ絞り込み、サイト構造を3カテゴリに変えたこと。これによって「訪問者が読みたい記事を探しやすくなった」結果、引き継いで2ヶ月で訪問者数が120%になっている。550本→100本という、記事数としては8割減の作業が、訪問者数の増加に転じたわけだ。

ただし、その手前にもう一つの分岐がある。それは案件を選ぶ前に判断基準を紙に落としたことだ。買い手は過去に、マーケティング担当に就任した直後、限られた予算のなかで600万円を広告に投下してほとんど反応が得られなかった失敗を経験している。そこから「詳しくない領域について、すべて良く見えてしまう傾向があり、適切なジャッジができない」という自分の性質に気づいた。TRANBIから毎日届く案件通知を高いモチベーションで眺めれば「全部いいな」と思ってしまう、と本人も認めている。

そこで置いた基準が次の六つである。ネットサービスに限る/本業のスキルが生きるIT・転職領域/属人化していない/顧客のエンゲージメントが高い(滞在時間、閲覧記事本数)/広告に頼らずオーガニックでユーザーを獲得できている/売上・利益は条件に含めない。

6日で終わった理由を分解する

なにより、対象が従業員のいない個人規模の事業だったこと。本人が「従業員が働いている会社を買うわけじゃないため、財務状況や事業的なリスクや法務確認も最小限で済む」と述べているとおり、デューデリジェンスの分量そのものが小さい。スピードは交渉能力ではなく、対象の構造から来ている。

聞くべきことを事前に文章化していたことも速度を支えた。M&Aは初めてで進め方がわからなかったため、買い申し込みの段階で「聞きたいことをずらりと並べたリスト」を作り、交渉で順に潰していったという。交渉がまとまってからはGoogleスプレッドシートでTo do管理表を作り、売り手と共有しながらタスクを消している。

売り手が本業と近い業界のスタートアップ経営者だったため、会話のコストが低かったことも挙げられる。事業譲渡契約書の締結方法に戸惑い、サーバー移行に手間がかかったものの、大きなトラブルはなかったとしている。

そして四つ目に、収益実績を条件から外していたことが効いている。「今の売上はゼロに低くても特に気にしていません」と言える買い手にとって、収益ゼロのブログは検討対象になる。逆に言えば、この買い手にとっての価値は現在のキャッシュフローではなく、40万PVという流入と、そこに自分のスキルを当てて伸びしろを取れるかどうかだった。

割り引いて読むべき点

この事例で示されているのは訪問者数の変化までで、買収額も、買収後の収益額も公開されていない。「訪問者数120%」は収益120%ではない。アフィリエイト広告を貼ったのは譲受後であり、記事の時点では収益化はまだ検証段階にある。本人も、当初はブログをコンサルティング事業への集客チャネルにする構想だったが、導線整備に自分のリソースが足りないと判断し、「ブログ単体で稼げるようになること」を当面の理想に置き直したと述べている。

そもそもこのM&A自体が、本人の言葉では「検証」である。数百万円単位の案件を二つ買い、1〜2年かけて個人のM&Aが本当に成功するのかを確かめ、手応えがあれば数千万円単位に進む。という設計だ。成功事例として読むより、進行中の実験の初期報告として読むほうが正確だろう。

何が再現でき、何が再現できないか

再現しやすいのは手順の側である。判断基準を六つ程度に文章化してから案件を見る、買い申し込み前に質問リストを作る、譲受後に既存コンテンツを全数チェックして残す記事を決める。いずれも資本も人脈も要らない。550記事を読み切るのは地味だが誰にでもできる作業で、実際この事例で数字を動かしたのはその作業だった。

再現しにくいのは前提条件のほうだ。まず、本業の収入があるため「売上ゼロでも気にしない」と言えること。これは案件の選択肢を大きく広げるが、生活費を稼ぐ必要がある人には取れない立場である。次に、フレックスタイム制で平日日中に副業を差し込める勤務環境。さらに、売り手のアクセス解析ツールが本業で使い慣れたものと同じだったこと、売り手が同じ業界のスタートアップ経営者で話が早かったことは、狙って作れる条件ではない。専門記事を自分で書き、汎用記事はクラウドソーシングに外注できるだけの領域知識も、IT・転職領域という選定基準あってのものだ。

つまりこの6日間は、運の良さと準備の良さが半々で作られている。真似できるのは準備の側だけである。

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出典

本記事は上記の公開情報の要約と独自分析です。 詳細は必ず出典をご確認ください。

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